- 青酸カリは呼吸ができない
- 映画やテレビのドラマでは、毒を飲まされた人は喉を押さえて苦しがっている。
- なぜ喉なのか?
- 胃の中で毒が溶ければ、腹を押さえてもいいではないか?
- 神経をやられる毒なら、どこかがケイレンするか、頭痛で頭を押さえたりするのではないか?
- しかし、毒殺シーンではみな喉を押さえており、たいていの人はそれが当たり前のように思っている。喉が焼けるように熱いので、苦しがっているのだろうと思っているようだ。
- ところが、そうではない。
- たとえば、毒薬として有名は青酸カリは、呼吸酵素を壊すという作用をする。
- この酵素の働きは体の隅々に行って各細胞に酸素を与えると、筋肉の場合は伸び縮みをしてエネルギーを出すようになり、そこに排気ガスとして二酸化炭素が発生し、静脈に吸収されて肺に行き、そこから外へ吐き出されていく。つまり、呼吸というのはこの循環であり、そのために必要なのが呼吸酵素なのである。
- ところが、その酵素が壊されてしまうと、酸素と赤血球が合体しないだけでなく、二酸化炭素を吐き出すこともできなくなる。呼吸をしていないのと同じ状況だ。
- 肺では一生懸命に呼吸の動作をしているのだが、実際には酸素を取り込めていないし、二酸化炭素を吐き出していない。つまり、体の内部の呼吸、いわゆるガス交換のできない内窒息(首を絞められた場合は外窒息という)というかたちになってしまうのである。そのために、苦しくて喉を押さえてもがき苦しんでいるというわけだ。(中略)
- ところで、もし青酸カリを吸ったり飲んだりしたら、治療の施しようがない。できることといえば、大急ぎで血液を全部捨て、新しい血液を入れ替えるという全血交換をやらなければ助からない。ただ、たとえ助かったとしても、後遺症が残ってしまう
- (上野正彦著「ヒトはこんなことで死んでしまうのか」p104〜)
|