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重度の下痢
(薬剤による重度の下痢)





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下痢に用いる漢方薬  
大便    
急性下痢  
慢性下痢
  
下痢と便秘を繰り返す
 
乳幼児の下痢
食中毒










重度の下痢
薬剤性の下痢

下痢とは通常よりも水分が多い便や、形のない便が、頻回に排出される状態をいいます。
下痢はさまざまな原因によって起こりますが、薬が原因となって起こる場合もあります。

薬による下痢は、服用後すぐに起こる急性的な下痢と、服用後1~2ケ月経過してから起こる慢性的な下痢がありますが、一般には薬を使用し始めて1~2週間以内に起こることが多いといえます。

さまざまな薬が予期しない下痢を起こすことがありますが、一時的なものがある一方で、放置すると重症化するものもあります。なかでも、抗がん剤、抗菌薬、免疫抑制薬や一部の消化器用薬は重度の下痢を引き起こすことがあるので、注意が必要です。

何らかの薬を服用していて、次のような症状が継続して起こる場合、または指示された「下痢止め」を服用しても症状が改善しない場合には、放置せずに、ただちに医師又は薬剤師に連絡して下さい。
  • ・便が泥状か、完全に水のようになっている
  • ・便意切迫またはしぶり腹がある
  • ・さしこむような激しい腹痛がある
  • ・トイレから離れられないほど頻回に下痢をする
  • ・便に粘液状のものが混じっている
  • ・便に血液が混じっている
など







薬剤による重度の下痢とは?
薬剤性の下痢とは、
治療のために用いた薬によって腸の粘膜が炎症を起こす、粘膜に傷がつく、腸管の動きが激しくなる、腸内細菌のバランスを著しく変化させることなどが原因になって引き起こされる下痢を言います。

下痢は、異常に水分の多い便や、形のない便が頻度を増して排出される状態を言います。
  • 下痢の持続期間が2週間以内なら急性、
  • 2~4週間なら持続性、
  • 4週間を超える場合は慢性と定義されます。

急性下痢症の90%以上は感染症が原因ですが、感染症でない場合の原因のうち最も多いのは薬の副作用によるものです。

一方、慢性下痢症の原因のほとんどは非感染性であり、さまざまな原因の中には薬が誘引になっている場合があります。

原因になる医薬品はたくさんありますが、重度の下痢を起こす代表的なものとして
などがあります。

薬の種類にもよりますが、一般に投与開始後1~2週間以内に多くは発症します。

しかし、抗がん剤では、投与中あるいは直後から24時間以内に発症する早発性の下痢と、投与開始後数日から10日くらい経ってから起こる遅発性の下痢があります。また、複数の抗がん剤の組み合わせ方によっては、重度の下痢が起こりやすくなる場合があります。
高齢者、腎機能や肝機能障害者、体が弱っている時などにはこれらの副作用が起こりやすいので注意が必要です。


早期発見と早期対応のポイント

重篤な下痢を惹起する薬物としては、抗がん剤、抗菌薬、免疫抑制薬、一部の代謝拮抗剤、一部の消化器用薬などがあげられる。
一般に、抗がん剤や免疫抑制薬などは原疾患の病状が重篤であったり、治療により免疫力の低下がみられたり、高齢者であったりするなど、全身状態が必ずしも良好とは言えない場合が多く、下痢による循環動態や電解質の異常をきっかけとして全身状態の悪化を引き起こすことも少なくない。
また、化学療法や造血幹細胞移植を要するような状態では複数の抗がん剤や放射線治療を併用することも多く、それぞれのレジメン毎の特性をよく知り、重篤な下痢を早期に予知・予防するなどの方策が重要である。

抗がん剤による治療に関して、American Society of ClinicalOncology(ASCO)の制定した「がん治療に関連する下痢の治療に関するガイドライン」1)の推奨ステートメントでは、イリノテカン/フルオロウラシル/ロイコボリン(IFL)レジメンあるいは、その他の強力な抗がん剤治療を行う場合、特に第1クールでの患者の詳細なモニターが重要と記載している。
高齢者では少なくとも1週間ごとに消化器毒性(症状や検査データ)をチェックすることが推奨される。
また、過去にがん治療に関連する下痢を経験した患者には、経口抗菌薬の使用等より積極的な対応が必要である。さらに、IFL 治療で下痢が発生した場合には、24 時間以上下痢などの症状が消失したことを確認するまで、抗がん剤の投与は中止するよう推奨している






副作用の好発時期
薬物の種類によるが、一般に投与開始後1~2 週間以内に発症する場合が多いが、抗がん剤などでは数クール経過後に起こることもある。
薬物と投与法による特徴を知っておくことが重要である。

抗がん剤では、投与早期に発症するタイプがあり、この中にも投与中あるいは投与直後に発症する早発型ものと、24 時間以後から発生する遅発型がある。遅発する例には、投与後時間をおいて(1~2 週間以上たってから)発症するタイプもある。また、抗がん剤の投与プロトコールにより(休薬期間をおいて投与する場合)1クール目から発症しやすい薬剤と数クール目から発症しやすいタイプとがある。フルオロウラシルとイリノテカンの組み合わせにおいて高頻度に発現することが知られており、特にフルオロウラシル/ロイコボリンの大量静注を行うレジメンでは重篤な下痢が起こりやすいことが報告されている。
また、このような治療に放射線照射を組み合わせた場合にはさらなる注意が必要である。葉酸系のホリナートでは1 クール目、レボホリナートでは4~6 クール目に多いが、投与する薬剤の組み合わせにより変わる。メルファランやボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブなどでも重篤な下痢の報告があり、通常2 週間から1 ヵ月以内の発症が多い。投与中や直後に発症する早発型の代表としては、イリノテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤がある。また、プラチナ系では、投与開始後7~14 日目に、フルオロウラシル系では注射薬で1 ヵ月以内、経口薬で2 ヵ月以上経過してからの発症が多い。
一方、抗菌薬、ラクツロースなどでは数日以内の発症が多い。また、ジギタリス製剤やコルヒチンなどでは中毒症状として発症し、長期にわたり症状が続くこともある。






副作用の概要
(1)自覚症状
下痢(便中の水分量の増加)で始まるが、同時に便回数も増加する。重症となると裏急後重(しぶり腹)の状態となり、トイレから離れられなくなる。粘液便になることも多く、時には血液の混入を認めることもある。脱水症状を呈すると口渇、強い倦怠感・脱力感などが起こる。また、電解質異常により手足のしびれ感などを合併することもある。

(2)他覚症状
下痢に伴う、脱水により皮膚緊張の低下・乾燥がみられ、重症になると血圧低下・頻脈などが起こる。通常腸雑音は亢進気味になる。感染を合併した場合は発熱を認める。また、骨髄抑制などでは出血傾向などを合併することもある。

(3)臨床検査
下痢に特徴的な臨床検査所見はない。重篤な下痢への進展を回避するためには、脱水に伴う電解質や腎機能の変化に注意する。また、炎症反応や白血球数にも注意を要するが、合併した感染や抗がん剤による骨髄抑制の影響なども受けるため総合的な判断が必要である。

(4)画像検査所見
下痢に特徴的な画像所見はない。感染性腸炎(菌交代現象によるものを含む)では起因菌により潰瘍やびらん・発赤などの所見が認められるが、抗がん剤などにより惹起された粘膜障害がある場合では鑑別は容易ではない

(5)病理検査所見
下痢に特徴的な病理所見はないが、感染性腸炎の鑑別(偽膜性腸炎などの菌交代現象を含む)や、粘膜障害の程度を推定する際に補助資料となる。
移植後では、移植片対宿主病(GVHD)との鑑別に重要である。

(6)発生機序
抗がん剤に由来する下痢については、①コリン作動性による下痢と②腸管粘膜障害に基づく下痢がある。①は投与後早期に起こるが、②は数日以降に起こることが多く、薬物の直接作用や白血球減少に伴う免疫抑制による腸内フローラの変化や腸管感染症によるものと考えられている。
抗菌薬による下痢は、大部分が腸内細菌フローラの変化や菌交代現象によるものである。投与後数日で発症することが多い。プロトンポンプインヒビター(PPI)など一部の薬剤では、顕微鏡的腸炎(collagenous colitisやlymphocytic colitis など)を介しての下痢が起こりうる。免疫抑制薬などでは、免疫抑制による腸管感染・腸内フローラの変化のほか、GVHDによる腸粘膜障害や血栓性微小血管障害(TMA;免疫抑制薬そのものによる腸粘膜の毛細血管障害)が考えられる。
コルヒチンでは、乳糖分解酵素の活性低下により小腸の機能が低下し、可逆的な吸収不全の状態になり、下痢をはじめとする腹部症状が出現すると考えられている。また、Na-K,ATPase 活性低下による吸収抑制に加え、C-GMP およびCa を介する水・電解質の分泌亢進も関与している。ミソプロストール(PGE1)による下痢は、小腸に作用し、蠕動運動の亢進や水分吸収阻害によると考えられている


(7)医薬品ごとの特徴
フルオロウラシル注射薬では約70%の症例が本剤投与開始から1 ヵ月以内に発症している。投与初期から下痢が発現した場合には重篤化する恐れがあるため特に注意を要する。フルオロウラシル経口薬では2 ヵ月以上経過してから発症した例が半数を占めている。一般的にフルオロウラシルによる下痢は、持続点滴投与よりも急速静注による1 回大量毎週投与を繰り返した場合に急激で激しい症状をきたす傾向がある。
イリノテカン投与による下痢に関しては、前述の如く、早発性、遅発性の2 つの機序が考えられている。
シスプラチンによる下痢は7〜14日に発現することが多いとされている。
葉酸系のホリナートカルシウムでは、ホリナート・テガフール・ウラシル療法の投与開始初期、特に1クール目に発現する頻度が最も高いことが知られている。レボホリナートでは、レボホリナート・フルオロウラシル療法において投与回数に依存して発現頻度が高くなり、4〜6 回目に最も高くなることが知られている。
ゲフィチニブでは、76%の患者で最初の治療サイクルで下痢が発症していた。
ミコフェノール酸モフェチルでは、投与1~2週後に起こることが多い。
本剤は腎移植時などに用いられることが多く、サイトメガロウィルス(CMV)感染症やGVHD との鑑別が重要である。この鑑別にはC7-HRP などのウィルス抗原の検索や内視鏡による病理組織学的検索が有用である。
シロドシンでは、胃・小腸に存在するα1A 受容体を遮断することによる運動亢進による下痢と考えられている。本剤は高齢者に投与されることが多いため注意が必要である。
コルヒチンでは、急性期の治療時に急性中毒症状として、コレラ様の下痢を発症することがある。通常投与量で発生する下痢は減量およびラクターゼの投与が効果的とされている。
ミソプロストールでは投与後1 週間以内の発症が70%以上と言われており、そのうち40%は経過と共に自然軽快している。




判別が必要な疾患と判別法
(1)判別が必要な疾患
感染性腸炎が最も重要である。
  • 感染性腸炎には、細菌性(病原大腸菌やカンピロバクターなど)とウィルス性(ノロウィルスなど)がある。
  • また、抗菌薬投与後の症例などでは、偽膜性腸炎や出血性大腸炎
が問題となる。

その他に虚血性腸炎・炎症性腸疾患・顕微鏡的腸炎(collagenous colitisやlymphocytic colitis など)やアミロイドーシスなどが鑑別上問題となる。また、検査所見で異常がない場合には、過敏性腸症候群との判別が問題となる。


(2)判別方法
臨床経過(合併する症状や流行状況、抗菌薬の服用状況など)は、感染性腸炎の鑑別に重要である。疑われる場合には、培養などの微生物学的検査を行う。CMV 感染を疑う場合には、アンチゲネミアや内視鏡下生検組織での病理組織学的所見(核内封入体の証明)やPCR が有用である。また、血便や粘液便を伴う場合には、内視鏡検査を行い炎症性腸疾患との鑑別を行う。顕微鏡的腸炎やアミロイドーシスの鑑別には生検による病理学的検査が必要となる。




治療方法
(1)治療の原則
下痢において、脱水による循環障害や電解質異常、アシドーシスなどにより緊急対応が必要か否かの判断である。次に、原因となる薬物に応じて、下痢以外の副作用の発現の有無を確認する。
治療にあたっての原則は、原因薬物の把握と中止、適切な補液などによる循環動態の安定、電解質異常の補正などを優先する。同時に起こりやすい他の副作用(例えば抗がん剤などでは造血障害など)に関して状態を把握し、適切な対応を行う。消化管の上皮細胞障害を伴うような症例では、下痢の長期化が予想されるため、経管栄養などを必要に応じて選択する。
循環動態や電解質異常を伴わない程度の下痢(あるいはコントロールされた後)ではロペラミドなどの止瀉薬により対症的な治療が行われるが、菌交代現象などの感染の関与が考えられるケースでは止瀉薬の投与は慎重に行う方が良い。
ASCO のガイドラインの推奨ステートメント1)としては、グレード1,2 の下痢で他の症状がない単純型の症例では保存的治療が選択される。
しかしながらグレード 3 以上の下痢あるいは中等度以上のけいれん・グレード2 以上の嘔吐・活力低下・発熱・敗血症・白血球減少・血便・脱水などの症状を伴うケースは合併症例として、より綿密な観察と治療を要する。


(2)予防法
ペメトレキセドナトリウムなどの葉酸に関連した代謝拮抗剤では、前投薬としてビタミンB12、葉酸の投与により下痢を含めた副作用発現率が軽減されることが報告されているメルファランを前処置として用いた造血幹細胞移植の施行に際しては、腹部への追加照射を避ける、抗菌薬の長期投与を避ける等の注意が必要である。
また、最近高用量のプロバイオティクス投与による腸内の細菌叢などの環境の改善が有用という報告もある






典型的症例
【ゲフィチニブ】
50 歳代、女性
非小細胞肺癌に対してシスプラチン、塩酸ゲムシタビンを併用して、ゲフィチニブ250mg/日の投与を開始した。5 日目より中等度の嘔気、嘔吐が出現した、14 日目には嘔気、嘔吐が強くなり、さらに水様性下痢が出現した。補液とロペラミド(2mg/日 7 日間)による治療を開始し20 日目には下痢は回復した。


【ホリナート・テガフール・ウラシル療法】
60 歳代、男性
直腸癌術後の局所再発と肺・肝転移に対し、ホリナート・テガフール・ウラシル療法(ホリナート:75mg/日、テガフール・ウラシル:500mg/日を開始した。1クール目にグレード2 の水様性下痢が出現した。さらに治療を続けたところ2クール目にはグレード3 の水様性下痢が発現、脱水傾向も出現したため、休薬および補液、臭化ブチルスコポラミン、塩酸ロペラミド等による治療を行い、数日で下痢は回復した。3 クール目以降はテガフール・ウラシルを400mg に減量にすることにより、治療継続が可能であった。





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関連情報
下痢」「急性下痢」「慢性下痢」「乳幼児の下痢







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