肺梗塞(はいこうそく) 会員登録
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肺梗塞

原因
1.下肢静脈の血栓がある(産後・術後)
2.骨盤静脈に血栓がある(産後・術後)
3.心臓内血栓:心臓衰弱時、僧帽弁疾患
4.脂肪塞栓:骨折後など
症状 1.呼吸困難
2.胸痛・・(側胸部)
3.タン・・(血性のタン。突然の血痰から褐色タン)。
4.セキ
検査 ・発症状況の把握
・胸部X線
・心臓超音波検査
・肺血流シンチ
・肺動脈造影
・胸部CT
・O2サチュレーションモニター
・Dダイマー
合併症 胸膜炎、
肺炎、
肺壊疽
ガン
切除、
10日後
すごくラッキーですよ。早く発見されましたから」1999年4月、大阪府の主婦Kさん(58)は、夫のKさん(当時58)の検査結果について医師からこう説明され、胸をなで下ろした。
便の色が黒っぽいのが気になり、胃の内視鏡検査を受けた。2年前に患った胃潰瘍の再発かと思ったが、胃ではなく、十二指腸にガンが見つかった。「早期の発見」という判断で、本人にも告知された。
翌月、手術が行われ、医師は「手術は成功です。ガンは取り切れました」と説明した。
手術後の回復は順調だった。点滴などのチューブがはずれた9日後には、「早く仕事に戻りたい。明日から歩く練習や」と笑顔でVサインを作って見せるはしゃぎぶり。
賀代子さんも「もう大丈夫」と、確信を深めた。
その翌日の早朝、ベッドから下り、病棟でソロリソロリ歩く練習を始めた。手術後初めて口にした朝食も。「こんなにおいしいとは思わんかった」と、残さず食べた。
異変は朝食後、再び歩こうとした時に起きた。
「ウーン、おかしい」と、ベッド脇の椅子に座り込んでうずくまる。
気分が悪いのかと賀代子さんが洗面器を差し出すと、「そんなんと違う。胸や」といって胸を押さえた。ナースコールで看護婦を呼んだ。
「とにかく苦しい。座薬を入れて」。
Kさんが訴えると、看護婦は薬を取りに行った。賀代子さんが胸や背中をさすっても、楽になる様子はない。
薬を持ってきた看護婦は血圧計を取りに走った。
その間にも、Kさんはみるみる脂汗を浮かべ、うめき声をあげる。「頭の中が真っ白になる!」と叫び、顔をゆがめた。
「ただごとではない」と感じた賀代子さんは、長男を呼ぶため院内の公衆電話に走った。
病室に駆け戻ると、夫はベッドに横たえられていた。今まであれほど苦しんだのに、目を閉じて身じろぎ一つしない。唇が少し紫色になっている。医師が「川村さん!」と大声で呼びかけても、返事はなかった。
「このまま死ぬんやないか」
賀代子さんは背筋が冷たくなった。蘇生措置をしても、約4時間後、死亡が宣告された。
死因は、「肺塞栓症」。
医師は、胸部のX線写真を示しながら、血液が固まって出来る血栓が肺動脈に詰まり、肺が酸素を取り込めなくなった、と説明した。
「手術は成功だったはずやのに、あんなに元気だった人が、何でこんなことに・・・・」賀代子さんは呆然とするばかりだった。
「手術後の肺塞栓症が増えている。命に関わる手術の合併症だが、欧米では常識とされる予防などの対策が、国内ではほとんど行われていない。「手術後の患者は危険な状態に置かれている」と警告する専門家もいる。
なぜ夫は死ななくてはならなかったのだろう。Kさん(58)は、Kさんを5月に無くした後、弁護士に相談した。
Kさんは、十二指腸ガンの手術を受けた10日後、病院でベッドから下りて歩こうとした時、急に苦しみ出した。数分で呼吸・心拍ともに止まり、手当のかいもなかった。
手術後の経過は順調だっただけに、割り切れなさが残った。死因の肺塞栓症は足などの静脈に出来た血栓(血の塊)が、肺に運ばれ肺の動脈が詰まる疾患。肺が酸素を取り込めなくなり、命に関わる。手術後に起きることが多きのは、手術中や手術後、安静にしている間に血栓が出来、体を動かした時などに肺動脈に運ばれるからだ。
だが、賀代子さんは「そんなことが起きるなんて、一言も聞いていません。ガンで亡くなるならともなく、こんな訳の分からないことで命を落とすとは・・・・・・・」と訴える。
相談を受けた弁護士は、「裁判を起こすのは難しいが、納得できない気持ちは当然です」と、病院に説明を求める手紙を書き、賀代子さんは執刀医と面談することになった。
家庭医学書で調べたところ、肺塞栓症は、肥満の人や、長時間ベッドで寝たままの人に起きやすいと、あった。Kさんは慎重153cm、体重70kgで、かなり太めの体形だった。
「予測できなかったんですか?」
賀代子さんが尋ねると、下手欄の執刀医は「多くの手術をしているが、このような経験は初めて」と説明した
肺塞栓症は欧米に多く、手術中や手術後、足のマッサージ機や薬剤で血栓を防ぐ措置が広く行われている。「米国では予防措置をせずに発症して死亡した場合、医師は賠償責任を問われる場合がある」と三重大第一内科教授の中野赳さんは言う。
これに比べ、日本では予防策を取っている医療機関は極めて少ない。Kさんも、そうした措置は受けていなかった。
医療側の認識も希薄だ。Kさんが苦しみだした時、手術後初めての食事の直後だったこともあってか、駆けつけた看護婦は、「食べ過ぎかもしれませんね」「血圧をはかりましょう」などと言い、肺塞栓症を疑った対処をした様子はなかった。
賀代子さんは、「看護婦が早く気づいていたら、助かったのではないか」と疑問をぶつけた。「それでも助からなかったと思います」と医師は答えた。
予防には、手術後なるべき早く歩行訓練をするなど早期リハビリが大切、という専門家もいる。だがKさんは、点滴チューブが取れて初めて歩行練習するまでの10日間、ほとんど体を動かしていなかった。
賀代子さんは「こんなことが起きると説明があれば、もっと早く体を動かすことも出来た」と、あきらめきれない。
執刀医は「普段患者に肺塞栓症の説明はしていないし、特には予防もしていない。これはどの病院でも同じだと思う」としながらも、「今後、血栓予防のマッサージなど対策を考えないといけない」と話している。通常、肺塞栓症の予防はしていないし、事前には患者にも説明していない。どの病院も事情は同じだと思う」
十二指腸ガンの手術後、肺塞栓症を起こし急死した大阪府Kさん(当時61)のケースについて、主治医は、こう述べた。
日本ではこの疾患が少ないとされ、医療関係者の間でも関心が低かったからだ、しかし、最近、我が国でも多発していることが分かってきた。
肺塞栓症は、足の静脈に出来た血の塊(血栓)が、肺に運ばれ肺動脈が詰まり、酸素を取り込めなくなる。手術後に起きることが多いのは、次のような理由による。
エコノミークラス症候群
足の静脈の血液は、筋肉の働きで心臓に戻るが、手術中や手術後の安静時はこの動きが止まって血液が流れにくくなり、血栓が出来やすい。飛行機内で長時間ジッと座っているだけでも起きる人もあり、座席の狭い「エコノミークラス症候群」とも呼ばれる。
腹腔鏡手術
 腹部を大きく切らずに行う腹腔鏡手術では、空気を注入して腹部を膨らませるが、この操作も静脈を圧迫して血流が悪くなり、血栓が出来やすいと言う指摘もある
肥満の人や、
高齢者らに多く発症する。
ガン患者も血液が固まりやすくなっているため、比較的多いという。
岩井武尚・東京医科歯科大第一外科教授は「肺塞栓症は増えている。食生活の洋風化による肥満の増加、急速な高齢化、腹腔鏡手術の普及などが原因」と指摘する。
米国では、年に数万人が肺塞栓症で死亡すると推定されている。
厚生省の人口動態統計でも、86年から10年間で、この疾患による死亡は2.9倍に増えた。岩井教授は「現在、突然死の中でも最も問題なのが肺塞栓症ではないか」と話す。
発症すると、呼吸困難・胸痛などの症状が表れる。米国の研究では、発症後の死亡率が、正しく診断・治療した場合に8%、これに対し、診断がつかない場合は32%と、4倍にのぼった。日本でも肺塞栓症と気づかず、適切な治療がなされていないことは少なくないと見られる。
予防には、手術中に弾力性のあるストッキングをはいたり、機械で足をマッサージすることが有効とされる。また、肥満など危険の高い患者には、あらかじめ血液を固まりにくくする薬剤を使用する。
世界保健機構(WHO)も予防の指針を指しており、欧米では普及している。だが、日本では予防を実施している病院は極めて少ない。血液凝固を防ぐ薬剤の保険適用が認められていないといった事情もある。
空の長旅 関西空港で1998年、70歳代の女性が欧州旅行を終え、旅客機から降りたとたん、呼吸困難になり意識を失った。空港の対岸にある大阪府立救命救急センターに運ばれて検査したところ、肺の血管に血の塊が詰まった肺塞栓症とわかり入院。約1ヶ月後に退院した。
長い間、狭い座席に座っていると、脚の静脈に血液が滞り、小さな血の塊が出来ることがある。水分が不足すると、より血が固まりやすい。太っている人、脱水状態にある人、ピルの服用者は危険性が高い。
同センターの横田順一朗所長によると、この女性は約10時間の飛行中、エコノミークラスに座りっぱなしだった。トイレをガマンするため、お茶なども飲まなかったという。
旅客機の狭い座席に長時間座っていると急に呼吸困難になる症状は『エコノミークラス症候群』と呼ばれる。これは、欧米で報告されているが、日本ではまだ少ない。横田さんは「長い時間、飛行機に乗るときは、十分に水分を摂るほか、ときどき立ったり歩いたりしましょう」と忠告している
足の
骨折
千葉県の会社員Aさんは95年8月、海水浴場で転倒、右足に激痛が走った。検査で足首の骨折と分かったが、帰宅した後も痛みが引かず、翌日、入院した。
患部を固定し、足先から引っ張る牽引治療を受けた。ベッドで寝たまま過ごし、5日目に固定具がはずれた。
ところが、翌日午後に見舞った母親(52)は、酸素マスクをつけた息子の姿に驚いた。その日の早朝にトイレで突然、呼吸困難になったという。胸苦しく、脂汗が噴き出した。
「のどまでしか息が吸えない、これで僕は終わりかと思った」と正広さん。幸代さんと話す時も、酸素マスクをはずさず苦しそうだった。
「そんな大変なことが起きたのに、病院はなぜ私に連絡しないのか」。幸代さんは不審を抱き、医師に原因を尋ねたが、「心電図・X線とも異常がありません。何が原因と言われても・・・・・」と、要領を得ない。
容体が急変したのはその2日後。病室でのうなり声に気づいた看護婦が駆けつけると、正広さんは既に意識がなかった。呼吸・心拍が止まり、まもなく死亡。25歳の若さだった
「足の骨折で入院したのに、なぜ死ななくてはいけないの?」
幸代さんは、病院の責任を明らかにするために提訴した。
原告側は「死因は肺塞栓症で肺が機能しなくなったため。亡くなる2日前の呼吸困難発作は、その前兆だったのに、血中の酸素濃度を調べるなど必要な検査をせず、見落とした。適切に診断していれば救命できた」としている。
肺塞栓症は、血栓が肺動脈に詰まって酸素を取り込めなくなる。正広さんは身長171cm体重115kgの体格。肥満体型の人は発症しやすい。
一方、病院側は「骨折治療中に肺塞栓症が起きることは少ない。死因は心不全で、過失はない」と反論する。
だが、骨折治療中に肺塞栓症で死亡したケースの報告は、いくつかある。例えば交通事故で足を骨折した中部地方の男性(当時21歳)は、足を牽引する治療後、リハビリ中に心臓が停止、急死した。
これを医学雑誌で発表した医師は「骨折で足の血管の壁が傷ついて血栓ができ、肺塞栓症を起こしたと考えられる。骨折といえども突然死につながる」と指摘。「骨折後の呼吸困難が起きたら、肺塞栓症を念頭に診療する必要がある」と話す。
だが、正広さんが亡くなる2日前、呼吸困難に陥った際、担当医が肺塞栓症を疑った形跡はない。カルテの記載も「早朝より呼吸苦。心電図異常なし。過呼吸(症候群)か」となっている。この過呼吸症候群は、主に精神的な下人で起きる呼吸困難の症状を言う。
正広さんの死因などについては判決を待たなくてはならないが、呼吸困難の際の診療が適切だったとは言い難い。
被告側の院長は「骨折、肥満などがあれば、肺塞栓を疑うのが基本だが、正広さんの骨折は軽症だった事情があった」としつつ、「診療には反省すべき点もある」と語る
手術後 手術の後、順調に回復しているように見える患者を襲い、突然死をもたらす肺塞栓症。足などの静脈に出来た血栓が肺に運ばれ、肺動脈が詰まって起きる。欧米に比べて対策が遅れていた日本でも、予防などに力を入れる医療機関が少しずつ増えている。
手術中に血栓が起きるのは、足の筋肉の動きが止まって血流が悪くなるためだ。川崎市立川崎病院は、手術の際、弾力のある包帯を足に巻いたり、空気の圧縮によって足をマッサージする機械を使い、血栓が出来ないよう工夫している。
対策は、『肥満体形』や『腹腔鏡手術』など、発症の危険性の高い患者。
腹腔鏡手術では、腹部に炭酸ガスを注入して膨らませるため、静脈を圧迫して血流が滞り、血栓が出来やすいと言われるからだ。
それでも血栓が出来てしまった場合に、肺に血栓が運ばれるのを防ぐため、傘の骨のような形をしたフィルターを腹部の静脈に入れる処置も、必要に応じて行う
外科医長の掛札敏祐さんは「肺塞栓症は死亡率が高く、最も警戒すべき合併症の1つ。予防はとても重要」と話す。
東京医科歯科大は、こうした予防措置に加え、発症した場合を想定した治療の手順を定めている。呼吸や心拍が止まったら、直ちに心臓マッサージ・酸素吸入といった蘇生措置を行うと共に、血栓溶解剤を注射。機能を失った肺に代わる「人工肺」を装着する。
『経皮的心肺補助装置』と呼ばれ、足の付け根の動脈と静脈に管を入れ、動脈から取った血液に酸素を補給、静脈に戻す。実際にこの装置で救命できたケースもあった。
国立がんセンター中央病院は、手術直後の患者を一括してケアする「術後管理病棟」を設置した。一般の病棟より医師、看護婦を増やし、不測に事態に備える。手術後、初めて歩いたりする時に発症しやすいため,看護婦がついて歩行訓練する。肺塞栓症を起こしながら、迅速な手当で事なきを得た患者もあった。
この病気を研究する専門医のグループも作られた。94年に内科・外科・放射線科・病理科の医師らでスタートした「肺塞栓症研究会」(代表世話人=杉本恒明・関東中央病院長)。
現在は全国60余りの医療機関の医師が参加、毎年、診断や治療などの研究発表会を開き、診療のれえべるアップを図る。共同研究で新しい治療法の確立を目指す一方、一般の医師への啓発も重視している。
欧米では、血栓の予防薬が広く使われているが、日本ではまだ保険で認められていない。国内でも1999年春、血栓予防薬の臨床試験が始まり、注目される。
研究会の世話人を務める三重大第一内科教授の中野赳さんは「肺塞栓症は日本でも増えているが、予防などに取り組む医療機関は非常に少ない。医療関係者や患者は、この疾患について理解を深めることが大切」と訴えている
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