遺伝子

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遺伝子/gene 1個の細胞に含まれる遺伝情報全体をゲノム(genome)という。
遺伝子(gene)は染色体の構成要素。
1個のタンパク質の情報を持つDNAの一区画。
その本体はデオキシリボ核酸(DNA)。
真核生物の遺伝子はエキソンとイントロンが交互に並んだ構造をしている。
(エキソン)・・・・転写されてmRNAになり、タンパク質の情報を含む部分。
(イントロン)・・・転写されるがその後で[RNAスプライシング]によって除かれてmRNAにならない部分。
ゲノム (genome)
ある生物が持つトータルな遺伝情報のこと。
ヒトゲノムには3000Mbの遺伝情報が含まれる。
ヒトゲノムには約23000個の遺伝子が含まれる。
遺伝子が占める領域はゲノム全体の1/4、エキソンに該当する領域はゲノム全体の1/100である。
生物のゲノム(全遺伝情報)の解読
  • 1998年  線虫       米英のグループ
  • 2000年  シロイヌナズナ 日米欧のグループ
  • 2003年  ヒト        日米欧など6ヶ国
  • 2004年  イネ        日米欧など10ヶ国
  • 2005年  チンパンジー  米欧のグループ
  • 2007年  メダカ       国立遺伝学研究所など
  • 2010年  カエル      日米のグループ
発現 遺伝情報からRNAやタンパク質という機能を持った遺伝子産物ができるプロセスのことを遺伝子発現(gene expression)という。
[転写]→[RNAプロセシング]→[翻訳]→[翻訳後修飾]と進む。
転写 (transcription)
DNAを鋳型とし、DNA鎖の向かいに相補的なヌクレオチドがつながっていくことによってRNAが合成される。
RNAポリメラーゼが働く。
真核生物のRNAポリメラーゼには以下の3種類がある。
  1. RNAポリメラーゼT・・・r RNAの転写に関わる。
  2. RNAポリメラーゼU・・・mRNAの転写に関わる
  3. RNAポリメラーゼV・・・tRNAの転写に関わる。
基本転写因子(basal transcription factor)=転写基本因子
真核生物では、転写を開始する際にRNAポリメラーゼ以外にいくつかのタンパク質が転写の開始点に集合する。これらを転写基本因子といい、以下のものから構成される。
  1. TBP(TATA結合タンパク質)
  2. TFUA
  3. TFUB
  4. TFUD
  5. TFUE
  6. TFUF
  7. TFUH
翻訳 以下のものが翻訳にかかわる
(tRNA)transfer RNA
  転移RNAともいう。
  翻訳に際して塩基の並びをアミノ酸の並びに変換するアダプター分子。
  以下のものがある
  1. アミノ酸と結合する部分(アクセプターアーム)
  2. mRNAに結合する部分(アンチコドン)
(リボソーム)ribosome
  翻訳の場を提供する装置。
  2つのサブユニットが合わさって鏡餅のような形をしている。
  3つの部位(A,P,E)がある。
アミノ酸を運んできたtRNAは、A部位→P部位→E部位と移動しながらペプチドにアミノ酸を付加する。
翻訳後修飾 (posttranslational modification)
翻訳によってできたポリペプチド鎖に種々の加工を施すこと。
以下のものがある。
  • ペプチド鎖の切断
  • S-S結合による架橋
  • 糖鎖の付加
  • リン酸化
  • アセチル化
  • 脂質の付加
遺伝情報 遺伝情報は4つの文字(A,T,G,C)で、タンパク質に翻訳するときには3文字(トリプレットコドン)が一組になって、アミノ酸の種類を指定する。AAA=リシン。AGG=アルギニンというふうに、三塩基が一組に連なるトリプレット(三連符)を担っている。
64種類の組み合わせ(4×4×4)で、遺伝暗号表ができあがっている。
この遺伝暗号表は周易の64卦が六爻からなるのに符号する。
「両儀」が塩基のプリン型とピリミジン型を表し。「四象」が4種のヌクレオチドを表すとすれば。「一卦」が1コドン(codon:遺伝暗号の単位)に対応し、一対一対応の関係が成立する。
解析 遺伝子解析手法には2種類あり、
・遺伝子の数の違いを調べる:「CNV」
・遺伝子を構成する塩基配列の違いを調べる:「SNP
検査 DNA抽出不用
2011年、産業技術総合研究所と東京大学、東京農工大学は特定の遺伝子をすばやく検出できるセンサーを共同開発した。
細胞からDNAを抽出する作業が不用になり、遺伝子疾患などの検査を手軽にできる。
検査時に細胞のDNAを傷つけないので、iPS細胞(新型万能細胞)など再生医療に使う細胞の品質評価にも使える。
産総研のベイオメディカル研究部門の中村史グループ長らは、物質表面を原子レベルで観察する原子力間顕微鏡の先端部を改良。直径0.2マイクロb、長さ10マイクロbのシリコン針に、DNAの輪がついた微小なセンサーを作った。
輪の先端には蛍光色素と、色素の働きを抑えるクエンチャーという物質をつけた。
このセンサーをヒトのガン細胞に差し込み実験したところ、細胞内のメッセンジャーRNA(mRNA)=伝令リボ核酸に反応し、明るく光った。
センサーのDNAがmRNAと結合し変形、蛍光色素とクエンチャーが離れ、色素が光るのを確認した。

シーケンサー(塩基配列解読装置)
  • ゲノムデーター解析
    • 2011年、日立製作所と国立遺伝学研究所は、大量のヒトゲノム(全遺伝情報)の塩基配列データを安価に高速処理する新しいシステムを開発した。
      ツイッター(ミニブログ)などで使われている処理ソフトを使うことで、従来比1/5のコストで処理できる。
      開発したのは、大量のデータを多数のコンピューターを並列にして分散処理するソフト「Hadoop」(ハドゥープ)を利用したシステム。
      日立製作所の安価な業務用サーバー10台をつないでハドゥープがうまく作動するようにした。
  • 15分でOK?
    1. 2012年1月、ヒトゲノム(全遺伝情報)解読も、ついに1000ドルで可能になった。米イルミナ社と米ライフテクノロジーズ社が発売した。
    2. 2012年2/17、英オックスフォード・ナノポア・テクノロジーズ(ONP社)が、従来の測定原理と全く異なる「ナノポアシーケンサー」(第4世代)によるDNA解読データを年内に発売すると発表。第4世代のシーケンサーの特徴は、蛍光検出でなく、DNAや核酸塩基がナノスケールの穴を通過する際の電流変化を計測して、DNAを解読する。このため、無標識でDNAの合成反応も一切なくてもゲノムを解読できる。しかも、面倒でコピーミスが生じる原因だったポリメラーゼ連鎖反応によるDNAの増幅という前処理も不要になった。新シーケンサーと解析部位が1ノード(nodo)を構成する。20ノードを使えば、60分でヒトゲノムを解読できる。1ノード当たりのナノポア数を8000個にすれば、わずか15分で解読できるようになる。

ヒト遺伝子 (約30000個)
「人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の概要を分析していた日米欧など国際共同チームと米国のセレラ・ジェノミクス社は2/11日、人間の構造や機能のせけ異常方の核となる部分は約1.5%に過ぎず、生命活動の基本となる遺伝子の数も、定説の10万個ではなく約3万個が有力などとする多彩な新発見を発表した。
人間の遺伝子数がハエ(ショウジョウバエ)の2倍あまりの少なさだったことに、研究者たちは「少ない遺伝子が複雑な生命活動を支える仕組みを解明することが課題」と指摘している。
体質や性格などの個人差に関する1人ひとりの微妙な遺伝情報の違い「SNP(一塩基多型)」がある場所は、国際チームが140万カ所、セレラ社が210万カ所と推定。この数や人種ごとの遺伝情報の比較から同社は、人種が違っても差は0.01%とした。
データは、他の生物の遺伝子とも比較、74%がほぼ共通と判明し、進化の過程で多くの遺伝子を受け継いだことを裏付けた。
◇遺伝子の総数:約30000個
◇遺伝子の主要部分:全遺伝情報の約1.5%。
◇全遺伝子の機能の約40〜60%を推定。
◇全遺伝子の74%は、他の生物と類似。
◇遺伝子223個は、感染した細菌に由来。
◇遺伝情報の45%は同じ文字(塩基)列の繰り返し。
◇解読した遺伝情報の文字(塩基)数は、全約31億個のうち、27億2000万個〜26億5000万個。
「3万個前後だとすれば、体の仕組みが簡単なショウジョウバエ(約13000個)の2倍強に過ぎない。体内では、この数の遺伝子で、10万種以上ある酵素やホルモンなどのタンパク質を作り分けていると考えられる。作り分けのメカニズムを解明することが、病気の原因などを突き止め医薬品開発を進める上で新たな課題になる。」
22000種類確認
ヒトゲノムを解読した日米など6カ国の国際研究チームは3万〜4万と予測されている人間の遺伝子のうち、約22000種類を確認し、2004年10/21のネイチャーに発表した。最終的な遺伝子の数は多くても3万前後になるとみられ、ネズミやハエなどと大差がないと見られる。
遺伝子数 ゲノムの大きさ(塩基対)
ヒト 26000 30億
マウス 26000 26億
クサフグ 21000 4億
メダカ 21000 8億
カエル 21000 17億
線虫 14000 1億
ジョウジョウバエ 14000 1億8000万
酵母 6000 1500万
大腸菌 4000 464万
イネ 32000 3億8000万
トウモロコシ 32000 23億
日本人 のゲノムを初めて解読
2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センターの角田達彦チームリーダーらが「次世代シークエンサー」を使って日本人ゲノムの快速に成功した。
次世代シークエンサーは、DNAを細かく断片化し、大量の断片を同時に読み取り高速で解析できる。
日本人男性1人の血液から採取したDNAを約5ヶ月で解読した。
塩基が個人によって異なる場所(SNP)を313万カ所見つけ、国際プロジェクトで解読されたヒトゲノムにはない約300万個の塩基対を新たに発見した。
成果は10/24にネイチャー・ジェネティクス(電子版)に発表
螺旋構造 目に見えない遺伝子がダイナミックに動く様子をとらえることに、原田慶恵・東京都臨床医学総合研究所室長が成功した。遺伝情報の本体で二重螺旋構造をしているDNA(デオキシリボ核酸)は情報を読み出す時に、螺旋構造に沿ってグルグル回りながら動いていくことが分かった。遺伝子の異常で起きるガンなどの病気解明につながると期待されている。
微小な生物の動きを捕らえる研究を始めたのは大阪大学に入った1985年頃。筋肉研究で世界的に有名な柳田俊雄教授のもとに飛び込んだ。「何でも肉眼で見てみたい」という欲求が、困難といわれた遺伝子の動きをとらえる技術の開発につながった
後天的
遺伝学
(エピジェネティクス)
=遺伝子に化学物質がくっついてその機能が変わることを研究する。
最も注目されているのが、ガン関連遺伝子。遺伝子そのものの情報が同じでも、化学物質が遺伝子にくっつくか否かでガンにかかるリスクが変わる。
ピロリ菌
国立がんセンターと和歌山大学は、胃ガン患者や胃ガンの原因とされるピロリ菌に感染した人などの胃の組織を調べた。胃ガン患者では「LOX」や「FLNc」など9種類のガン抑制遺伝子のメチル基がくっついて、働かなくなっていることが明らかになった。
ピロリ菌に感染していない人では、遺伝子にメチル基がくっついている人はゼロだった。これに対し、感染者では20%の人の遺伝子にメチル基がくっついていた。ピロリ菌を除去した人ではメチル基がくっついている割合は10%程度まで低下していた。
「DNAにはピロリ菌が胃の細胞の遺伝子に与えた傷跡が残されている」と国立がんセンター研究所発ガン研究部の牛島俊和部長は語る。
神経牙細胞腫
小児ガンの一種神経牙細胞腫の患者には、皮膚などにガンが広がっていても、抗ガン治療で治る者と、手術で取り除いても亡くなる患者がいる。その違いがメチル基にあった。遺伝子にメチル基がつくか着かないかでリスクが20倍高くなる。
修復 切れたDNAどう修復
「生体内で遺伝や細胞の複製などの情報を担うDNAが切れたとき、どんなふうに修復されるか?
その機構を解明する上でカギとなる新たな物質が、池田日出男・東京大医科学研究所教授(分子生物学)らのグループによる酵母菌を使った実験で見つかった。
 DNAの2本鎖が放射線などによって切断されると、どんな生物でも事故修復機能が働いて元の戻そうとする。酵母菌の場合、2本鎖が同じ部分で切断されたときには、[Ku]と呼ばれるタンパク質が中心になって働き、さらに別の3種類のタンパク質が関与することがすでに知られている。
 池田教授らはこれ以外にも関与物質があるのではないか?と考え、[Ku]と結合する物質を探した。その結果、[Sir]と呼ばれるタンパク質が結合していることが分かった。[Sir]はタンパクの合成に関わるDNAの転写を抑える働きをすることは知られていたが、これまで修復と関係づけられることはなかった。
  Sirを作る能力のない酵母菌を作り、切れたDNAの修復能力を調べた結果、正常な酵母菌の1/30に低下していた、ガンマ線照射後の生存率も大幅に下がった。Sirが修復に不可欠であることが裏付けられた。
ほ乳類にもSirに似た物質があると考えられており、ヒトのDNA修復の 解明にも役立ちそうだ
欠陥遺伝子を修復
「ある種の植物には親から受け継いだ欠陥のある遺伝子を自然に修復する能力が備わってていることを、米パーデュー大の研究グループが突き止めた。2005年3/24付けのネイチャーに掲載。
19世紀のオーストリアの植物学者メンデルが基礎を築いた遺伝学によれば、生物は親から子へと遺伝子を受け渡すことで形や性質を伝える。しかし、米パーデュー大のグループはオランンダガラシなどの仲間を研究中に、親の代に突然変異で生じた欠陥遺伝子が子の細胞内で祖父の代と同じ正常な遺伝子に戻っているケースを見つけた。遺伝学の常識を覆す発見
遺伝子の変異を人工酵素で修復
2010年、東京大学先端科学技術研究センターの小宮山真教授らはDNAの狙った部分を切断できる人工酵素を使って、病気の原因となる遺伝子の変異を修復する技術を開発した。
人間をはじめ多くの生物の細胞には一対の相同なDNAがあり、片方が切断されても、もう一方を“鋳型”にして切断されたDNAを修復できる。小宮山教授らは開発済みの自由にDNAを切断できる人工酵素を使って、遺伝子変異を修復した。この人工酵素は20前後の塩基配列を見分けて働くため、狙った1カ所を精度良く切断できる
メンデル 優性の法則
2010年、奈良先端科学技術大学院大学の高山誠司教授と樽谷芳明研究員らは、アブラナ科の植物を使い、優性の遺伝子の形質だけが現れる「メンデルの優性の法則」が起こる仕組みをみつけた。
優性側の遺伝子のそばで低分子のRNAが作られ、これが劣性の遺伝子を「メチル化」という作用で働きを抑え込んでいた。
成果は8/19のネイチャーに掲載。
生物は両親からそれぞれ遺伝子を受け継ぐが、子供には一方の形質だけ現れる場合が多い。この「優性の法則」は、劣性側遺伝子が本来の機能を失って起こることは知られていたが、ほかに仕組みがあるかは分かっていなかった。
2つの顔 突然変異でガンを引き起こすような遺伝子が、正常な状態でもガンに深く関与していることを、日米の研究グループがマウス実験で突き止めた。
ガンの種類によって悪化に関わったり、逆に悪化・転移を抑えたりする。
京都大学医学研究科の高橋智聡・特任助教授と米ハーバード大学との共同成果。
2005.1219ネイチャージャネティクスに掲載。
この遺伝子は「N-ras」。突然変異を起こすと異常なタンパク質をつくり、膵臓や消化器などにガンを引き起こす原因となることが知られ、『プロトがん遺伝子』と呼ばれる。ただ、正常状態での作用は不明だった。
遺伝子改変技術を使い、N-ras遺伝子を働かないようにしたマウスと、ガンンを抑制する「Rb」遺伝子が機能しないマウスをそれぞれ作製した。この2匹のマウスを交配し、様々なパターンで実験した。
実験の結果、Rb遺伝子が働かない環境下では、N-ras遺伝子は正常な状態でも脳下垂体ガンを悪化させる働きがあることが判明。
また、甲状腺ガンでは逆に、N-ras遺伝子が正常な状態のままでガンの悪化や転移を抑える働きをしているという
CNV 【コピー数多型】
東京大学などの国際チームは、約25000種類あるとされる人の遺伝子のうち、約3000種類は保有数に個人差があることを突き止めた。2006年11/23のネイチャーに掲載。
人間の体の設計図であるDNA(デオキシリボ核酸)は細胞内にある。DNAはひも状の物質で、個人の体質の情報を記録してある遺伝子はDNAのところどころにある。
遺伝子は通常、1種類につき、両親からそれぞれ受け継いで2個あると考えられてきたが、人によっては1個しか見つからなかったり、3個以上見つかったりすることがある。『コピー数多型』(CNV)と呼ぶ個人差で、遺伝子を構成する塩基配列の個人差(一塩基多型)とは別の個人差として注目されていた。
生物の回路図 遺伝子とタンパク質
2009年、ソニーコンピューターサイエンス研究所や理化学研究所、慶應義塾大学などは、生物の体内で働く遺伝子やタンパク質の関係を一目で分かる図を作成した。
ネイチャー・バイオテクノジー(電子版)に掲載。
作製したのは、遺伝子やタンパク質の相互作用や働きを、矢印や記号を使って表示する。電子工学分野で使う電子回路図に相当するもの。
生物の分野ではこれまで決まった表記方法が無く、化学者が共通して使う国際標準としての利用を見込む。
計算式で示すことも可能で、タンパク質の働きや分子の動きなどを高精度に解析したりシミュレーションできる
インプリティング を制御する塩基配列
2010年、国立成育医療研究センター研究所の緒方勤部長らは、父母のいずれか一方から受け継いだ場合にだけ働く「インプリティング」現象を制御する塩基配列を見つけた。
人の第14染色体上で2カ所発見した。このうち1つは胎児期の臓器の正常な形成に不可欠のものだった。
遺伝子のインプリティング異常で起こる病気の確定診断、体外受精などの生体補助医療、iPS細胞の安全性評価などに役立つ。
人の遺伝子は通常、父親と母親から1つずつ受け継がれ、どちらの親由来でも同じように働く。ただ例外的に、父由来のみの時や母由来のみの場合に働く遺伝子があり「インプリティング遺伝子」と呼ばれる。異常があれば病気や成長障害に直結する。
研究グループは人の第14染色体上に、これらの遺伝子のインプリティングを制御する「インプリティングセンター」にあたる塩基配列を2カ所発見した。[IG-DMR][MEG3-DMR]と呼ばれる部分。このうち受精後に確立されるセンターであるMEG3-DMRは、臓器の正常な形成に必須の役割を果たしていた。
シーケンス 塩基配列
1990年に始まった「国際ヒトゲノム解読計画」では、約30億個の塩基を解読するのに30億jの資金と13年の歳月がかかった。
2010年3月、米女優のグレン・クロースさんが自分のゲノムを解読したと公表した。この作業は8日間と5万jですんだ。
林崎良英・理研オミックス基盤研究領域長は「速度の向上は1年で50倍のペース。1人1000ドルが目標もまもなく達成される」という。
ガンの多くは、塩基配列の一部が正常な配列と違うときに発症する。
蛍光標識をつけた塩基を1つずつ検出する「1分子シーケンス」という技術がまもなく実用化になる。
食事などの生活習慣で遺伝子の働き方がどう変わるかというエピジェネティクス(後生的修飾)は期待される分野。
遺伝子 プログラミング機構
2011年、九州大学生体防御医学研究所と国立遺伝学研究所などは、哺乳動物の赤ちゃんが成長するときに欠かせない遺伝子が、生殖細胞の段階でプログラミングされる仕組みを発見した。
生殖細胞にだけ存在する小さなRNAの一種が遺伝子のDNAの一部に働くことを実験で確認した、
マウスの精子の元となる精原細胞の中から、約100万個の小さなRNAを取りだし、次世代シーケンサーで配列を解読した。その結果、piRNAという小さなRNAのひとつが、精原細胞の中に数百個あることが分かった。
piRNAの配列が、赤ちゃんの成長に不可欠なRasgrf1という遺伝子のDNA配列の一部にそっくりであることを突き止めた。


チンパンジー ヒトとチンパンジー
「ヒトとチンパンジーは、全遺伝情報(ゲノム)の98.7%が共通と、遺伝的には極めて近縁だが、での遺伝子の働き方は全く違っていることを、ドイツ・マックスプランク研究所などの国際研究グループが突き止め、12日付けの米科学誌サイエンスに発表した。
肝臓や白血球での遺伝子の働きには、脳ほどの差は見られなかった。
高度な知的活動をはじめとする「ヒトらしさ」の秘密を解明する手がかりとして、注目されそうだ。
グループは解剖などで得られたヒトの脳・肝臓・白血球を使って、約18000個の遺伝子について実際に働いているかどうかを調べ、結果をチンパンジーやアカゲザルと比較した。
その結果、ヒトとチンパンジーは、肝臓と白血球では遺伝子の働き方が似ていたが、では全く違っていた。
一方、チンパンジーとアカゲザルの脳は、働いている遺伝子のパターンが似ていた。
違い
ヒトとチンパンジーではゲノムの差は1%だが、体内で働いている遺伝子では約8割が異なるとする研究を理化学研究所を中心とする国際チームがまとめ2004年5/27付けのネイチャーに発表した
ゲノム(全遺伝情報)を構成している塩基という分子の配列を比べると、その差は1%しかないが、遺伝子としての機能には大きな違いがあった。
塩基を文字にたとえると、ヒトとチンパンジーのゲノムはともに約30億文字が書き込まれた本にあたる。ひとかたまりの文章は遺伝子1個にあたる。
研究チームは、人間の21番染色体と、チンパンジーでこれに相当する22番染色体を分析したところ、塩基の配列で文字が異なる部分は1.44%だった。しかし、231個の遺伝子を比較したところ約8割はタンパク質を作る働きなどが異なることがわかった。
ほとんど同じように見える文章でも1文字の違いで別のタンパク質を作ることがある。
榊桂之・利権ゲノム科学総合研究センター長は「ゴリラやオランウータンなどとも比較し、進化の謎に迫りたい」と語る
哺乳類 遺伝子マップ
2010年米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のチームは、ヒトを含む哺乳類の遺伝子を比較し、相互作用を分析した遺伝子マップを作成した。
700万以上の相互作用ネットワークがあることが分かった。
コイサン族 2010年2/18、nature
アフリカは人類発祥の地とされている。
アメリカ・ペンシルバニア大学のシュスター博士らは、アフリカの先住民で狩猟採集民族で、カラハリ砂漠に古くから住む「コイサン族」1人と、アフリカ南部に住む農耕牧畜民族「バントゥー族」1人の全遺伝情報(ゲノム)を初めて解読した。
遺伝子変異 環境適応と関係なく変異する
2010年、大阪大学の四方哲也教授や東邦大学の岸本利彦准教授らは、大腸菌が生存の難しい高温下でも盛んに増殖しながら、環境適応と関係なく遺伝子に変異を起こすことを見つけた。実験では大腸菌を37℃で培養。
増殖速度が一定になると温度を上げ、また一定になると上げる方法で523日、7560世代培養して変異などを調べた。
最後に回収した大腸菌は45.9℃というもともとは生きられない環境なのに盛んに増殖した。遺伝子が変異を起こす速度も10倍以上に速まった。
このとき、環境適応と関係する遺伝子の変異の比率は特別高くなかった。
従来の中立説に従えば、増殖が盛んな時には変異はあまり起こさないとされていた。四方教授は「盛んに増殖するときにも中立説が適用することが分かった。厳しい環境でも生物は自ら変異を増やして進化を加速している」と説明する。
遺伝子の変異は生存のために環境変化に適応が必要かどうかに関係なく起きるとするのが「中立説」。中立説は遺伝学者の木村資生氏が提唱した。


ガン ガンを抑制する遺伝子
東大医科学研究所の中村祐輔教授、古川洋一助手らのグループは、肝臓がんの発生を抑える役目の遺伝子を発見するとともにこの遺伝子を治療に使うと、肝ガンや大腸ガンにも効果があることを突き止めた。研究成果は2000年3/1日発行の米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」に発表した。
中村教授らは、肝ガン患者から提供を受けたガン細胞100例と、実験用によく使われている肝ガンの培養細胞6例を分析した。その結果、計9例のガン細胞で『AXIN』(アキシン)という遺伝子が異常を起こしていることを突き止めた。また、アキシンに本来、ガンを抑制する働きがあり、これが異常になるとガンが発生しやすくなることも確かめた。
一方、正常なアキシン遺伝子をガン細胞に入れたところ、肝ガンの細胞だけでなく、大腸ガンの細胞増殖も、最大で1/20まで抑える効果があることが分かった。大腸ガンでは通常、アキシンは正常だが、大腸ガンに関与する他の2種類の遺伝子に異常があるというケースが多い。それでもアキシンが効くのは「(ガン抑制の働きがある)アキシンの量が増えたためではないか」と古川助手は見ている。
中村教授は「アキシンなど3種類の遺伝子のうち、いずれかに以上のあるガンは、大腸ガンで80〜90%、肝ガンで25%に上っている。アキシンはこれらのガンの遺伝子治療に広範囲に使えると考えられる」という
ガン抑制遺伝子 内容
p53遺伝子 アポトーシスの誘導。
細胞増殖を調節。
遺伝子の修復
Rb遺伝子 細胞増殖の調節。
ほかの遺伝子のスイッチを調節
APC遺伝子 大腸ガンを起こす組織構造の変化抑制
VHL遺伝子 細胞同士の接着
P16遺伝子 細胞増殖の調節

がん増殖遺伝子を発見
「2003年7月、米イリノイ大学シカゴ校のグループは人間の設計図であるヒトゲノム(ヒトの全遺伝情報)の解読データを手がかりに、ガン細胞の増殖に関わる57個の遺伝子を発見した。
57個の遺伝子のうち1つは神経系の細胞の発生に関わる遺伝子で、これまでガン細胞との関係が知られていなかった。実験でこの遺伝子が作るタンパク質の働きを妨げたところ、正常細胞に影響が無いまま乳ガンや大腸ガンの成長が止まったという
ガン細胞を弱める遺伝子
「2002年、米イリノイ大学のグループは、カゼのウイルスで見つかる遺伝子(E1A)にガン細胞を弱める働きがあることを確かめた。ガン細胞に組み込むと免疫機構から逃れる働きが弱まり死滅しやすくなるという。
人間やマウスなど4種類の生物のガン細胞で実験した。ガン細胞にE1Aを組み込んだところ、いずれの場合も細胞の生死を制御するタンパク質に作用したという。薬剤投与や放射線療法などに対して、ガン細胞が耐性を持ってしまう問題があったが、その有効な対策になりそうだ
遺伝子120個
肺や胃・大腸など、人間の様々なガン細胞を網羅的に調べたところ、約120個の遺伝子の変異が細胞のガン化やガンの進行に直接関わっていた。
ガンの主犯は120個の遺伝子の変異であることを明らかにしたのは英ウエルカム・トラスト・サンガー研究所を中心とする研究チーム。成果は2007年3/8付けのネイチャーに発表
「KRAS」
ガン遺伝子「KRAS」に変異を持つガン細胞は増殖性が高い。米ダナ。ファーバーがん研究所のバービィ博士らは、RNA干渉という、短い2本鎖RNAで遺伝子の機能を抑制する手法で、KRASに変異があるガン細胞で細胞死を引き起こすことができる遺伝子を探し出した。KRASに変異があるガン細胞で「TBK1」という遺伝子の機能を抑制したときに細胞死が起きた。2009年11/5ネイチャー
リスク 病気のリスクを予測する検査で利用可能な遺伝子
アルツハイマー病 ApoE
高血圧 AGT
骨粗鬆症 VDR
肥満 β3AR
家族性乳ガン BRCA1
家族性大腸ガン APC
変異体 2010年、長いDNAを糸巻きのように巻き取り、遺伝子の働きを抑えるタンパク質群のうち、1種類の変異体の立体構造を、早稲田大学と大阪大学のチームが解明した。
成果は米科学アカデミー紀要(電子版)に発表
通常の体細胞では、膨大な遺伝子の一部しか働く必要が無いため、長いDNAは多数の糸巻きが連なったような形をしている。
糸巻きの芯にあたる部分は4種類のタンパク質で構成されるが、このうち1種類の「H3」が「H3T」に変異していると、糸巻きがほどけ、遺伝子が働きやすくなる。
精巣にはH3Tが多く、精子では体細胞に比べてこの糸巻きの数が少ないことが近年分かった。減数分裂などに対応するためとみられ、精子が正常に機能するためには、H3Tの量が適切に制御される必要がある。
ガン細胞にもH3Tが多く、糸巻きがほどけてしまっているため、本来抑えられているはずの遺伝子が働き、細胞が無秩序に増殖している可能性がある。

トランスポゾン
  • トランスポゾンとは?
    • ゲノムの中を動き回ることができる遺伝子。
      かっては、遺伝子は染色体上の一定の場所に固定していると考えられてきたが、トウモロコシでトランスポゾンが見つかってから研究が進み、微生物から植物、ハエ、ヒトまで多くの生物に存在することが分かった。
    • 主にDNA型のトラスポゾンとRNA型のレトロトランスポゾンがあり、いずれも遺伝子の機能に影響を及ぼし、種の分化や多様性に重要な働きをしている。
      1. 2010年の東レ科学技術賞を岡田典弘・東京工業大学教授が受賞。
        • 岡田教授は、生物の遺伝子内を自在に移動するレトロポゾンの進化の仕組みを調べた。
      2. トランスポゾンは2種類に大別される
        1. トランスポゾン
          • ゲノム上を動き回る
        2. レトロトランスポゾン
          • 複製しながら動く
    • ヒトも魚も遺伝子は約3万個でほぼ同じだが、どうしてヒトと魚は異なるのか?
      • それは働く遺伝子の組み合わせが違うからだ。その違いにトランスポゾンが深く関わっている


遺伝子診断
  • 遺伝子検査
    • ガンを引き起こす遺伝子が相次いで特定され、ガンになるリスクを予測する遺伝子診断を実施する病院も増えてきた。ただ、安易に診断を受けると誤解するケースも少なくないという。京都大学医学部付属病院遺伝子診療部の藤田潤部長に聞いた。
    • ○ガンの遺伝子診断にはどのようなものがあるのでしょうか?
      がんの原因になる遺伝子はたくさん見つかっていますが、ガンが発症するかどうかを正確に判定する検査は、ほとんど無いのが現状です。このような予測に最も役立つと考えられているのは「APC」という家族性大腸ガンの原因遺伝子です。日本人に多い肺ガンや胃ガンは、候補になる遺伝子は見つかっていますが、実際の診断にじゃまだ使えません。乳ガンの原因遺伝子の1つにBRCA1というのがありますが、この遺伝子に変異があっても3人に2人は実際には乳ガンにならないと言われています
      • 遺伝子検査の
        有用性が確立された疾患
        検査すべき遺伝子
        家族性大腸腺腫症(大腸ガン) APC
        多発性内分泌腫瘍症2A型 RET
        網膜芽細胞種 RB1
    • ○家族性大腸ガンの発症前診断は、どの程度の確率でガンになるリスクを予測できるのですか?
      APC遺伝子に変異が見つかった人が、60歳で大腸ガンになる確率は90%以上です。ただ、現在の検査法では3割程度は見つけることが出来ません。検査で遺伝子に変異が見つからなかったとしても安心するのは危険です。
      ○遺伝子診断はどのように行っているのですか?
      20歳以上の人が一般的です。子供の場合、本人が受けたいか受けたくないか判断できるまで、検査しないのが原則です。遺伝子を検査することで早期発見につながるなどのメリットがはっきりしていれば、検査を考えますが、親のインフォームドコンセント(説明を受けた上での同意)が必要です。
      • 診療上、遺伝子検査が
        ある程度有効な疾患
        検査すべき遺伝子
        遺伝性非腺腫性大腸ガン MSH2。MLH1。PMS1。PMS2
        遺伝性乳ガン・卵巣ガン BRCA1。BRCA2
        遺伝性黒色腫 CDKN/P16。CDK4。
    • ○遺伝子を利用したガンの発症前診断の問題点は?
      検査で陽性になっても必ずガンになるわけでは無いのですが、必ずガンになると思い込んでしまう人がいます。結婚や就職、子供をつくるか否かといった問題で、自らに制限を加えたり、周囲の人から差別を受けたりする可能性があります。また、陰性の人は、サイバーズギルトといって自分だけが助かったという罪悪感を持つことがあります。検査結果が陰性でも、食生活などに気を付けなければ、他の人と同じようにガンになる可能性はあるのに、自分は大腸ガンにならないと思い込む人もいます。京大では心理的な問題にも対処するため、最初から臨床心理士と一緒に、診療に望んでいます。
      癌が発症する可能性が高いことが分かっても、現時点では予防法が無いことも問題です
      • 変異があると分かっても
        有用性が不明確な疾患
        検査すべき遺伝子
        末梢血管拡張性運動失調症 ATM
        ゴーリン症候群 PTC
  • 遺伝子治療に副作用の恐れ?
    • 米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究グループは、遺伝子治療に使われるベクター(遺伝子の運び役)のうち「アデノウイルス・ベクター」が動脈硬化などの副作用をもたらす恐れのあることを動物実験によって見つけた。このベクターは循環器の治療に有望とされているが、ウサギを使った実験で血管に障害を引き起こすことを確かめた。
      研究グループは、ウサギの動脈にアデノウイルスを注射し、経過を観察し た結果、動脈硬化と血管の炎症が起きたという
  • ゲノム解析・・・・5人分 50万円
    • 2009年、バイオベンチャーのジナリスはクラウドコンピューティングを利用してゲノムの受託分析を始める。
  • 2型糖尿病
    • 発症に関連すると見られる遺伝子は。約20種類が見つかっている。仮にこうした遺伝子の大半を検査できるとしても、糖尿病になるかどうかは食生活や運動の有無といった環境要因の影響の方が大きい。米国の研究チームは約2000人を対象に、遺伝子検査をした場合としなかった場合とで、糖尿病リスクの予測精度に差がないことを突き止め、2008年米医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に発表。

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