家庭内暴力
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目標喪失 長男(28)の家庭内暴力に耐えかねた父親(54)が相談にきた。長男は大卒後会社勤めとしたものの、仕事がうまくいかず、上司や同僚との人間関係のトラブルもあって退職、そのまま家に4年間も居る。
「上司はバカだ」「親や社会が悪い」などと当たり散らし、テレビや家具を壊し、家族に乱暴するのだった。思いあまった両親は近くの相談所を訪ねたが「いつかきっと分かる時が来るから、堪え忍んでください」と言われるだけだった。
しかし、暴力は一向に収まらず、父親は母親と娘を別居させ、はれ物に触れるような気持で、息子のご機嫌をとりながら、毎日のように暴力を受けている。30年前に起きた開成高校事件以降、3年前の金属バット事件のような家庭内暴力は今も続いている。
現代は「アメ(母性原理)」の時代である。何事も豊富に与えられ、家族や周囲の人達に温かく受容され、安心して生活できることが最高の幸せであろう。しかし、ルソーは《エミール(教育について)》で「子供を不幸にする一番確実な方法はなにか?。それはいつでも何でも手に入れられるようにしれやることだ」と述べている。
少子化の中で、一方的に愛情を独占し、アメばかり与えられている子供に自立心が育たないのは当然である。その依存(甘え)が受け入れられないと、相手を攻撃する。「依存と攻撃」という両価的情動を示す。かえって愛情飢餓感に陥り、愛を惜しみなく奪い、他罰的となり、決して自己反省しないのである。
昔は「ムチ(父性原理)」の時代だった。課題達成のため、常に尻をたたかれ、刻苦勉励することが推奨されていたのである。今はムチは無くなってしまった。父権の喪失である。社会のルールを守り、困難に立ち向かって刻苦勉励するなど、どんでもないことになってしまった。
今の若者は飽食して、生きる目標(モデル、自己原理)そのものを見失ってしまったようだ。何を求め、どう行動したらいいのか分からず、自分探しの旅に出かけている若者をよく見かける。何かの「モデル」を見いだすと、人間はどんな困難にも耐え忍んで邁進する者だ。自己実現に向かって旅立っていく時、人間は光り輝くのである