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医薬品による甲状腺機能低下症



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薬剤による甲状腺機能低下症
医薬品による甲状腺機能低下症
  • 血液中の甲状腺ホルモン濃度が低くなり、身体の新陳代謝(エネルギー代謝)が悪くなり、体を動かしたり考えたりすることが鈍くなる甲状腺機能低下症が、ヨード含有医薬品、リチウム製剤、インターフェロン製剤などの医薬品によって引き起こされる場合もあります。また、甲状腺ホルモン製剤服用中に他のお薬を服用することでおこる場合もあります。

何らかのお薬を服用していて、次のような症状が見られた場合には、放置せずに医師・薬剤師に連絡してください。
  • 「前頸部の腫れ」、
  • 「元気がない」、
  • 「疲れやすい」、
  • 「まぶた(眼瞼)が腫れぼったい」、
  • 「寒がり」、
  • 「体重増加」、
  • 「動作がおそい」、
  • 「いつも眠たい」、
  • 「物覚えが悪い」、
  • 「便秘」、
  • 「かすれ声」
  • ※ 医薬品によっては、
  • 甲状腺ホルモンの過剰な症状
    1. 脈が速い、
    2. 心臓がドキドキする、
    3. 体重減少、
    4. 手のふるえ、
    5. 汗をかき易い
    などに引き続いて、甲状腺機能低下症が起こる場合があります





甲状腺機能低下症とは
身体の新陳代謝(エネルギー代謝)を活発にする甲状腺ホルモンの血中濃度が低下した場合におきます。

原因としては、
  1. 甲状腺からの甲状腺ホルモンの産生と分泌(放出)が低下した場合、
  2. 下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑制された場合、
  3. 甲状腺ホルモンの代謝(分解)が促進された場合、

また甲状腺ホルモン製剤を服用中の患者さんでは、一緒に服用する薬剤によりホルモン補充の必要量が増加する場合などにより甲状腺機能低下症になることがあります。

また特殊な場合として、破壊性甲状腺炎(甲状腺ホルモンをつくる甲状腺濾胞細胞の破壊が起き、蓄えられていた甲状腺ホルモンが血中に多量に漏れ出し、一過性の甲状腺ホルモン過剰症状に引き続き、甲状腺ホルモンが充分に産生されるまで、一時的に甲状腺ホルモンの不足状態が起きる)により、甲状腺機能低下症が現れることがあります。





5種類
甲状腺機能低下症は、血中甲状腺ホルモン濃度の低下による身体(細胞)のエネルギー代謝低下に基づく臨床所見(臨床症状・検査所見)を伴うが、種々の医薬品により甲状腺機能低下症が惹起されることがある1-4)。

これらの医薬品が甲状腺機能低下症を惹起するメカニズムには、以下の5種類がある。


@甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制するもの:
  1. 抗甲状腺剤の過量投与はもちろん、ヨード剤、ヨード含有薬剤(アミオダロン、造影剤、含嗽剤など)、リチウム剤などによる場合
  2. インターフェロン製剤などの投与や副腎皮質ステロイドホルモン薬の減量・離脱に際して、自己免疫的機序を介して作用する場合

A甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)の分泌を抑制する薬剤

B甲状腺ホルモンの代謝を促進する薬剤

C甲状腺ホルモン製剤服用中の患者で甲状腺ホルモン結合蛋白(thyroxine binding globulin:TBG)を増加させる薬剤

D甲状腺ホルモン製剤服用中の患者で甲状腺ホルモンの吸収を阻害する薬剤などにより甲状腺ホルモン補充量を増加する必要がある場合などがある(別表)。

  • 薬剤誘発性の甲状腺機能低下症が重篤副作用の中に入っている理由は、必ずしも重篤になり生命に危険を及ぼすからではなく、比較的頻度が高く存在し、見逃されている場合があるからである。
    従って、以下に示すように副作用として比較的高頻度に甲状腺機能異常を誘発する医薬品を用いる場合には、投薬前と以降の定期的なホルモン検査や注意深い臨床症状の観察が必要である。





早期発見と早期対応のポイント
臨床症状としては、
  1. 甲状腺腫、
  2. 無気力、
  3. 易疲労感、
  4. 眼瞼浮腫、
  5. 寒がり、
  6. 体重増加、
  7. 動作緩慢、
  8. 嗜眠、
  9. 記憶力低下、
  10. 便秘、
  11. 嗄声
などの症状が現れる 。


小児においては、
  1. 学業成績の不振や
  2. 身長の伸びの鈍化
など、また女性においては月経過多などが認められることがある。


血液生化学検査で
  • コレステロール値や
  • クレアチンキナーゼ活性(creatine kinase:CK)
  • の増加が認められる場合がある。

※ 医薬品によっては、破壊性甲状腺炎を引き起こし、甲状腺ホルモンの過剰症状(頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加など)などに引き続いて、機能低下症症状が認められる場合がある。




  • (1)副作用の好発時期
    • 薬剤によって異なる。リファンピシンなどのように比較的早期に出現する場合とスニチニブなどのように長期に服用すればするほど副作用の出現頻度が高くなるものがある。

    (2)患者側・投薬上のリスク因子
    • 過去に甲状腺疾患の既往歴のある人、抗甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase:TPO)抗体陽性[またはマイクロゾームテスト(MCPA)陽性]あるいは抗サイログロブリン(thyroglobulin:Tg)抗体陽性[またはサイロイドテスト(TGPA)陽性]の人、血縁者に甲状腺疾患がある人などは、副作用が出現し易いと考えられている。ヨード剤、ヨード含有薬剤の場合には、諸外国のヨード摂取不足地域に比較して、ヨード摂取量の多い我が国では甲状腺機能亢進症よりも、甲状腺機能低下症が発症し易いとされている。
      ヨード剤、ヨード含有薬剤(アミオダロン、造影剤、含嗽剤など)、リチウム剤、インターフェロン製剤などは、比較的高頻度に副作用としての甲状腺機能異常が発生する。また、服用量が多いほどあるいは服用期間が長いほど発生しやすいといわれている薬剤もある。甲状腺ホルモンの代謝や甲状腺ホルモンのTBG との結合に影響する薬剤、あるいは外因性甲状腺ホルモンの吸収を阻害する医薬品などは、甲状腺ホルモン補充中の人では影響を受けることがある。従って、定期的な甲状腺機能検査が必要である。

    (3)患者もしくは家族が早期に認識し得る症状
    • 甲状腺腫(前頸部の腫れ)、無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声など、また女性の場合には、月経過多が認められることがある。小児においては、学業成績の不振や身長の伸びの鈍化などが認められることがある。多くは非特異的な症状である。

    (4)医療関係者が早期に認識し得る症状
    • 甲状腺腫、動作緩慢、体重増加、眼瞼浮腫、嗄声、皮膚は乾燥、耐寒能低下、徐脈、心電図では低電位、血液生化学所見で総コレステロールやCK値の上昇、また女性の場合には、月経過多などが認められることがある。

    (5)早期発見に必要な検査と実施時期
    • 原発性甲状腺機能低下症:血中TSH 濃度の増加が最も鋭敏で信頼度の高い検査所見である。ごく軽度の甲状腺機能低下症では、TSH のみが増加して、甲状腺ホルモン(遊離サイロキシン(FT4)またはサイロキシン(T4)や遊離トリヨードサイロニン(FT3)またはトリヨードサイロニン(T3))は正常である(潜在性甲状腺機能低下症)。更に甲状腺機能低下症が顕性化してくると、血中甲状腺ホルモンが低下し、TSH はさらに増加する。
      中枢性甲状腺機能低下症:下垂体からのTSH 分泌を抑制する医薬品による場合には、FT4(T4)、FT3(T3)の低下、TSH の低下と臨床症状・所見により判断する。
      甲状腺低下症を比較的よくきたしうる薬剤(ヨード剤、アミオダロン、インターフェロン製剤など)を投与する場合は、投与前に抗甲状腺自己抗体である抗サイログロブリン(Tg)抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体や、TSH、FT4、FT3 を測定しておくことが望ましい。その後は、数ヶ月に一度程度定期的に、あるいは疑わしい症状・所見がみられた時に測定する


副作用の概要
甲状腺機能低下症は下記の2種に大別される。

@中枢性甲状腺機能低下症(central hypothyroidism)は、
  • 薬剤が視床下部・下垂体に作用して、TSH の分泌を抑制する場合に起こる。

A原発性甲状腺機能低下症(primary hypothyroidism) は、
  • 薬剤が直接あるいは免疫系を介して甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制する場合に起きる。



甲状腺に橋本病などの異常が存在する場合には、機能低下症が起こり易い。
また、甲状腺機能低下症でサイロキシンを補充中の患者では、甲状腺ホルモンの代謝を促進する薬剤、甲状腺ホルモン結合蛋白(TBG)を増加させる薬剤、あるいはサイロキシンの吸収を阻害する薬剤などの投与によりサイロキシン補充量の不足が起こり、機能低下症が起こることがある。



臨床症状としては、
    • 無気力、
    • 易疲労感、
    • 眼瞼浮腫、
    • 耐寒能低下、
    • 体重増加、
    • 動作緩慢、
    • 嗜眠、
    • 記憶力低下、
    • 便秘、
    • 嗄声
    など、
  • また女性では、月経過多などが認められる場合がある。
  • 小児では、学業成績の低下、身長の伸びの停滞などが認められることがある。
  • しかしながら、甲状腺機能低下症が軽度の場合には、検査によって初めて異常と診断されることが多い。
  • 原発性甲状腺機能低下症の場合には、血中甲状腺ホルモンの低下とTSH の上昇により診断されるが、中枢性甲状腺機能低下症の場合には、甲状腺ホルモンの低下とTSH の低下により診断される。

(1) 自覚症状
  • 無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、耐寒能低下、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声などが認められる。
  • 女性では月経過多、また小児では学業成績の低下、身長の伸びの停滞などがみられることがある。
  • これらの症状の多くは非特異的症状であるので、必ずしも甲状腺機能低下症に限らない。
    • ※医薬品によっては、破壊性甲状腺炎を引き起こし、甲状腺ホルモンの中毒(過剰)症状(頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加など)などに引き続いて、機能低下症症状が認められる場合がある。

(2)他覚所見
  • 甲状腺腫、
  • 体重増加、
  • 徐脈、
  • 嗄声
  • 浮腫(non-pitting edema)、
  • 粘液水腫反射《腱反射弛緩相の遅延反応》、
  • 心肥大などがあるが、軽度の場合は無症状の場合もある。

(3)臨床検査所見
  • ○原発性甲状腺機能低下症:
    • 血中TSH 濃度の増加が最も鋭敏で信頼度の高い検査所見である。ごく軽度の甲状腺機能低下症では、TSH のみが増加して甲状腺ホルモン濃度は正常である(潜在性甲状腺機能低下症)。更に甲状腺機能低下症が顕性化してくると、FT4 やFT3 の血中濃度が低下し、TSH はさらに上昇する。甲状腺ホルモン結合蛋白(TBG)に影響を与える薬剤を服用している場合には、総T4 の値は影響を受けやすい。抗TPO 抗体、抗Tg 抗体、必要な場合にはTSH 受容体抗体(TSH receptor antibody:TRAb)あるいは甲状腺刺激阻害型抗体(thyroid stimulation blocking antibody:TSBAb、保険未収載))測定なども参考にする。
  • ○中枢性(下垂体性)甲状腺機能低下症:
    • 下垂体からのTSH 分泌を抑制する医薬品による場合には、FT4,FT3 の低下、TSH の低下と臨床症状・所見により判断する。
  • ※その他一般検査として、甲状腺機能低下症では血清総コレステロールやCK の増加、心電図では徐脈・低電位などが認められる。胸部X線検査で、心拡大が認められることがある。



発生機序
血中甲状腺ホルモン濃度が低下することで甲状腺機能低下症が発症する。
その機序には、甲状腺におけるホルモン合成・分泌の低下による原発性甲状腺機能低下症と脳下垂体からのTSH の分泌低下による中枢性甲状腺機能低下症がある。
原発性は、投与薬剤によって直接あるいは何らかの免疫学的機序の変動がおこり、その結果、甲状腺ホルモンの合成・分泌の低下が起こる。中枢性は、投与薬剤により下垂体のTSH 産生・分泌の低下がおこり、二次的に甲状腺機能低下症がおこる。また、橋本病などにより甲状腺ホルモン産生予備能があまりない場合や甲状腺ホルモン補充中の患者においては、甲状腺ホルモンの代謝や輸送蛋白(TBG)の変動あるいは腸管からの甲状腺ホルモン吸収を阻害する薬剤により、ホルモン合成・分泌不足により機能低下症が起こる場合がある。



副作用の判別基準(判別方法)
  • 薬剤服用中に血中甲状腺ホルモンが低下した場合、医薬品による甲状腺機能低下症の可能性がある。しかしながら、多くの重篤な疾患(悪性腫瘍、心不全、腎不全など)に投与された場合には、原疾患によるいわゆるnonthyroidal illness(非甲状腺疾患による低T3 症候)による甲状腺機能の変化か否か鑑別が困難な場合もある。
  • 従って、できれば甲状腺機能低下症を誘発することが知られている医薬品を使用する場合には、投与前に甲状腺機能(TSH、FT4、FT3、抗TgAb、抗TPOAb)を検査しておくことが望ましい。原疾患、服薬歴と甲状腺機能の関係など、経過・臨床所見によって鑑別することが重要である。
判別が必要な疾患と判別方法
  • 血中甲状腺ホルモン低下をきたす疾患を判別する必要がある。
  • 原疾患による甲状腺機能の変化によるnonthyroidal illness(非甲状腺疾患による低T3 症候群)との判別が最も難しく、かつ治療の上でも重要である

(1)原発性甲状腺機能低下症
  • 一般に、血中TSH 増加、FT4、FT3 低下があれば、原発性甲状腺機能低下症と診断する。薬剤誘発性の原発性甲状腺機能低下症の鑑別は、発症と服薬歴との関係など、経過によって診断するしかない。問診で、食品(昆布、ワカメ、ヒジキなどの海藻類)やヨード含有含嗽薬の常用などがある場合には、中止させて再検査することも必要である。
(2)中枢性甲状腺機能低下症
  • 血中FT4、FT3 低下、TSH 低下があれば、中枢性(下垂体性)甲状腺機能低下症と診断する。薬剤誘発性の中枢性甲状腺機能低下症の鑑別は、発症と服薬歴との関係など、経過によって診断するしかない。
(3)無痛性甲状腺炎の甲状腺機能低下症期
  • 無痛性甲状腺炎は慢性甲状腺炎や寛解中バセドウ病を基礎に発症する。
    一過性の破壊性甲状腺中毒症期(血中TSH 低下、FT4、FT3 増加)に引き続き、一過性の甲状腺機能低下症期(血中TSH 増加、FT4、FT3 低下)を経て正常化することが多い。無痛性甲状腺炎の誘因として、出産後、クッシング症候群術後などが挙げられるが、不明の症例も多い。自然発症の無痛性甲状腺炎か、薬剤の副作用による破壊性甲状腺炎かの鑑別には、服薬歴などの詳細な問診と経過観察が重要である。
(4)Nonthyroidal illness
(非甲状腺疾患における低T3 症候群)
  • 入院するような疾患を持つ患者においては、いわゆるnonthyroidalillness(非甲状腺疾患における低T3 症候群)の検査所見(T3 低下、T4 正常、TSH 正常)が認められ、より重篤な、たとえばICU に入院するような患者においては、T3 低値 のみならずT4 低値やTSH 低値を伴うことも多く、中枢性(下垂体性)甲状腺機能低下症との鑑別が困難である。Nonthyroidalillness(非甲状腺疾患における低T3 症候群)の患者においては、reverseT3(rT3:現在測定不能)の値が一般には高いが、腎不全患者や後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)患者の一部においては高くないと報告されている。また、nonthyroidal illness(非甲状腺疾患における低T3 症候群)の回復期や腎不全では〜20μU/mL 程度までのTSHの上昇が認められる場合があり、原発性甲状腺機能低下症との鑑別が必要となることもあり、慎重な臨床所見の観察と薬歴の検討が望まれる。





全般的な治療方針と治療法
  • 原因薬剤を中止するかどうかは個々の症例で異なる。薬剤による治療効果と、中止による悪影響を慎重に勘案して決定する(「薬剤毎の特徴」を参照)。インターフェロン、アミオダロンなどによるものは、原疾患治療を優先してこれらの薬剤を中止しないことが多い。原疾患による甲状腺機能の変化(nonthyroidal illness:非甲状腺疾患における低T3 症候群)も考慮に入れて、原発性甲状腺機能低下症を示す場合には、明確な基準は無いがTSH が10〜20μU/mL を超えるようであれば、慎重にレボチロキシンナトリウム(サイロキシン:l-T4)補充を考慮する。TSH は正常範囲(上限くらい)を目標としてレボチロキシンナトリウムを補充する。高齢者や心臓疾患などがある患者では、さらに少量(12.5μg/日程度)より慎重に投与する。レボチロキシンナトリウムの吸収を阻害する薬剤を服用する場合には、服薬間隔を空ける。中枢性甲状腺機能低下症を示す場合には、本当に甲状腺機能低下症の臨床所見があるか否か、また投与した医薬品による甲状腺機能低下症か否か、慎重に検討してレボチロキシンナトリウムを補充する。原因薬剤投与を中止あるいは終了した場合には、一般的には甲状腺機能が回復することが多いが、永続性の場合もある。
    破壊性甲状腺炎に引き続く甲状腺機能低下症期では、一般的に経過観察を優先する。甲状腺機能の回復がなく永続的と思われる場合には、レボチロキシンナトリウムを補充する。





医薬品ごとの特徴
A. 甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制するもの
1) 抗甲状腺薬(プロピルチオウラシル(PTU)、チアマゾール(MMI))
  • 【発生機序・頻度など】ホルモン合成抑制が薬理機作なのでホルモン低下
    は作用そのものだが、病勢に応じた適量×適切な期間を超えて投与される
    と、甲状腺機能低下症となる(参考図1)。またバセドウ病治療開始初期には、
    甲状腺ホルモン測定値が正常値、あるいは高値でも、甲状腺機能低下症の
    症状(むくむ、手足がつる、CK 上昇)が出現することがある。
  • 【治療】
    (1)抗甲状腺薬を減量してホルモン値を正常に復させる、
    (2)一時的にレボチロキシンナトリウムを併用補充する、などが勧められる(参考図2)。
    なお、甲状腺機能低下症発症予防のために、バセドウ病治療ガイドライン(日本甲状腺学会 南江堂)によると、軽症バセドウ病患者ではチアマゾールの添付文書記載(30mg/日)より少量(15mg/日)より開始し、検査値を見ながら用量調節することが推奨されている
胎児・新生児に対する抗甲状腺剤の影響
  • 妊婦に対する抗甲状腺薬使用の児への影響:
    PTU、MMI はともに胎盤を通過する。妊娠を計画している人、妊娠初期(〜8 週)の甲状腺機能亢進症の治療には、MMI よりもPTU の使用が推奨されている12)。妊娠中の抗甲状腺薬の過量投与によって、児に甲状腺機能低下症や甲状腺腫が起こることが報告されている。妊娠中は母体の甲状腺機能を頻回に検査して、甲状腺機能を正常(特に妊娠後半にはFT4 値を非妊娠時の基準の上限前後を下回らないよう)に調節する。分娩直前の超音波検査は、胎児甲状腺腫による気管の圧迫のチェックに有用である。新生児の甲状腺機能低下症は、通常一過性である。
  • 授乳婦に対する抗甲状腺薬使用の児への影響:
    PTU,MMI を服用した場合には、乳汁中に移行するが、MMI の移行率のほうが高い(乳汁中濃度/血漿中濃度≒1)。授乳婦における抗甲状腺薬はPTU が第一選択薬であるが、MMI10mg/日以下の内服であれば、乳児の甲状腺機能に影響することはほとんどない
  • 妊婦・授乳婦甲状腺機能低下症に対するサイロキシン治療の児への影響:
    妊娠、授乳中の母体へのサイロキシンの補充は、胎児、新生児への影響は無いと考えられている。母体の甲状腺ホルモンが不足していると間接的に(胎盤の発育が悪くなるために)胎児に影響し得る。妊娠中はTBG の増加により甲状腺ホルモンの必要量が増すために、頻回に母体の甲状腺機能をチェックして補充量を調節する。妊娠中は、潜在性甲状腺機能低下症であっても、サイロキシンを補充して正常機能に維持する




2) ヨードあるいはヨード含有医薬品:
  • ヨードは甲状腺ホルモンの重要な原料だが、もともとヨード充足地域である我が国(主な食品のヨード(ヨウ素)含量と日本人におけるヨウ素の食事摂取基準:表1、2)ではヨード摂取でホルモン過剰となることはほとんどない。
  • 【発生機序・頻度など】
    ヨードを急速かつ過剰に摂取すると甲状腺ホルモン分泌の抑制(Wolff-Chaikoff 効果)が起こる。正常者では一過性かつ軽度のホルモン濃度低下のみ(2〜3 週間で正常化(escape)する)で臨床的に問題にはならないが、基礎に橋本病・放射性ヨード治療経験などを持つ者では、甲状腺機能低下症になることがある14)。この現象を利用してバセドウ病の治療に意図的に大量無機ヨードが使用される場合もあるほどだが、一般には、ヨード含有薬は甲状腺疾患とは関係しない疾患領域で使用されているので注意が必要である。特にヨード含有造影剤やヨード含有うがい薬(イソジンガーグルRなど。1mL 中ヨード7mg 含有)は頻度も高く要注意である15)。またOTC 医薬品(市販薬)(のどぬーるスプレーR 1mL 中ヨード5mg 含有など)や、健康食品であるヨード添加卵や海藻類(特に昆布、根昆布、とろろ昆布など)に含まれているヨードでもしばしば甲状腺機能異常が見られる。アミオダロンについては別項で詳述する。

    【治療】
    ヨード過剰摂取をやめるのが最善であるが、これが不可避の場合や機能低下の症状が強い場合は、一時的にレボチロキシンナトリウムを併用する。






3) アミオダロン
  • 内服で頻拍性不整脈の治療と予防に用いられる薬剤であるが、副作用の問題などから難治性・致死性不整脈に限って使用されることが多い。
  • 【発生機序・頻度など】
    ヨードを多く含有する為(本剤一錠(100mg)中にヨード(37mg))、甲状腺の面では、ホルモン過剰(中毒症の項参照)と機能低下の両極の障害が起こる(参考図3)。
    甲状腺機能低下症(参考図のA、B)として問題になるのは、Bのパターンが主だが、Aも破壊性変化による中毒症状後に一時機能低下になる。日本ではアミオダロン長期服用者2 割程度に甲状腺機能低下症が発症するが、基礎に慢性甲状腺炎(橋本病)を持つ人や女性は特になり易いと言われている。

    【治療】
    他の甲状腺機能低下症の治療に準じ、サイロキシンの補充が行われるが、通常の補充量よりも2 倍程度の大量を要するとされる。なお、アミオダロン自体が致死性・難治性不整脈に使われること、休止してもすぐに甲状腺への影響がなくなるわけではないこと等より、継続使用されるのが通常である。




4)炭酸リチウム
  • 躁病・双極性障害の治療に用いられる薬剤だが内分泌系への副作用も種々知られている
  • 【発生機序・頻度など】
    リチウムが甲状腺に取り込まれホルモン分泌過程を阻害するのがその機序で、甲状腺機能低下症も約10%の患者で見られる。
    甲状腺専門家の間では難治性甲状腺機能亢進症・甲状腺手術前・アイソトープ治療後に治療(甲状腺ホルモン低下)の目的で、意図的に使用される場合もあるほどである。またアミオダロンにも多少似て、その他の甲状腺機能障害も起こすことがある。

    【治療】
    原病に鑑みてリチウムの継続が必要な場合が多いので、これは継続しながらレボチロキシンナトリウムを併用投与する事が多い。





5) インターフェロン製剤(IFN)
  • 臨床上使用されているIFN にはα、β、γの3 種類があり、多くのサブタイプが存在する。生体内でIFN は種々の細胞と相互に作用しネットワークを形成している。IFN の作用としては、抗ウイルス作用をはじめMHC classUやnatural killer cell の活性化などさまざまな作用がある。人体においてIFN はウイルス感染後速やかに分泌され12 時間くらいでピークになり約2 週間で消失する。これに対してB 型肝炎、C 型肝炎などの治療にはある
    特定のインターフェロン製剤が長期間大量投与されている。IFN 投与の人体における影響というのは、元来生理的物質である一つのサブタイプのIFNを、長期間大量投与した場合に人体にどのような変化が起こるのかという問題である。
  • 【発生機序・頻度など】
    [1] IFN の甲状腺抗体への影響
    • 抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)は自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、バセドウ病)のマーカーとして知られている。
      同じ抗体の検査であるサイロイドテスト(TGPA)、マイクロゾームテスト(MCPA)はTgAb、TPOAb に比べて感度が低く、スクリーニングに用いるには不適切である。TgAb、TPOAb で検討された慢性ウイルス肝炎における10 のプロスペクティブスタディでメタアナリシスを行ったところ、IFNα製剤投与によりTgAb、TPOAb が10.3% (1220 例中126 例)の患者で陽性化し、また、治療前から陽性の患者ではその値が上昇した。
    [2] 甲状腺機能低下症の発症頻度、時期、及び予後
    • 甲状腺機能低下症は52 例(4.3%)、潜在性甲状腺機能低下症は19 例(1.6%)に認められ、その発症時期は、INF 治療開始後12 から48 週間後であった。予後はINF 治療終了後27 例(38%)で回復しなかった。
    [3] 甲状腺機能異常のメカニズム
    • IFN は、in vitro においてTSH で刺激された甲状腺内のヨードの取り込みとサイロキシンの分泌を抑制し30)、また、in vivo ではヨードの有機化を抑制する22)。これ以外にTh1、Th2 細胞の比を変化させるという報告があるが、免疫に対する詳しいメカニズムは不明である。
    [4] 甲状腺機能異常の予知とIFN 治療中の経過観察
    • 甲状腺機能低下症の症状は、軽症の場合はほとんど無症状であり、また、中等度以上の機能低下症でもその症状、および患者が機能低下症に気がつくか否かは個人差が大きい。TgAb、TPOAb が陽性患者ではIFN の作用を受けやすい、また、TgAb、TPOAb が陰性の患者でもIFN 治療後陽性化することがあるので、IFN 治療前に全例、甲状腺機能検査とTgAb, TPOAb を測定することが望ましい。治療開始後は1〜2 ヶ月に1 度は甲状腺機能検査を行うことが望ましい。
    【治療】
    INF 治療を中止する必要はない。甲状腺機能低下症に対してはレボチロキシンナトリウム投与で対処するが、将来中止可能の場合が多いことを念頭に置くべきである






6)その他のサイトカイン
  • インターロイキン(IL-2)治療により約20%の患者において、無痛性甲状腺炎が起こり得る32)。顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)投与によっても自己免疫性甲状腺機能低下症が発症した報告がある


7)エチオナミド、パラアミノサリチル酸(PAS)
  • は、ともにヨード有機化を、一部ヨード取り込みを阻害することによって機能低下症を来たし得る


8) アミノグルテチミド
  • ステロイドホルモン合成の諸ステップやアロマターゼを阻害する薬剤で、ごく限られた領域(前立腺がん、乳がん、クッシング症候群、糖尿病神経障害等)で使用されることもあるが我が国では未発売である。
  • 【発生機序・頻度など】
    詳しい機序は不明である。転移を伴う前立腺がんの治療として用いられたアミノグルテチミドにより31%に血中TSH の上昇がみられ、約7%に臨床的に明らかな甲状腺機能低下症を認めたという報告がある。
    【治療】
    本剤投与の必要性と本症の発症を天秤にかけて決定する。本剤休止と甲状腺ホルモン補充の二つの方法がありうる。
9) サリドマイド
  • 妊婦服用時の短肢症等の催奇形性から社会的に大問題となり発売中止となった過去を持つ薬剤だが、悪性腫瘍の一部(多発性骨髄腫等)に有効であることが判明し、最近再び承認され、ごく専門施設に限って使用が再開されている。
  • 【発生機序・頻度など】
    鎮静作用、好中球減少、便秘、発疹、末梢神経障害などが高度に起こることが知られているが、甲状腺機能異常も起きることが報告されている38,39)。詳しい機序は不明である。
    【治療】
    本剤投与の必要性と本症の発症を天秤にかけた場合、本剤を継続したままレボチロキシンナトリウムを併用することが妥当と思われる。
10) スニチニブリンゴ酸塩
  • 消化管間質腫瘍および腎細胞癌治療薬でチロシンキナーゼ阻害薬である。
  • 【発生機序・頻度など】
    服用患者の62%にTSH 異常値が認められ、内訳は36%に持続する原発性甲状腺機能低下症、17%に一過性の軽度のTSH 増加、10%に単独のTSH 抑制が認められた。甲状腺機能低下症になる前に、40%の患者がTSH の抑制を認めているので、(破壊性)甲状腺炎が起こっているという説もある。副作用としての甲状腺機能低下症が起こる詳しい機序は不明である40-42)。最近、ピロピルチオウラシルの約20%程度のTPO 活性阻害作用を有すると報告された。

    【治療】
    本剤投与を中止できる場合は中止するが、中止できない場合には本剤を継続したままレボチロキシンナトリウムを併用する。





B. TSH の分泌を抑制する薬剤
  • 副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン当量で20mg/日以上)、高用量のドブタミン、ドパミン(1μg/kg/分以上)、オクトレオチド(100μg/日以上)は、TSH の分泌を抑制する。
    一般的には、TSH の範囲は0.08〜0.4μU/mL 程度となり、機能低下症までには陥らない。
1)ドパミン塩酸塩
  • ドパミンは約50%のヒトにおいてTSH の分泌を抑制する。ドパミン受容体拮抗剤であるメトクロプラミドあるいはドンペリドンの投与は原発性甲状腺機能低下症のTSH を増加させる。甲状腺ホルモンが正常に存在すればTSH 上昇が抑制されるが、甲状腺機能低下症ではこの抑制が効かないために増加反応を認める。ICU に入院中の重篤な患者においてドパミンあるいは副腎皮質ステロイド薬が投与されていた場合にTSH が抑制された中枢性甲状腺機能低下症がみられ、持続的な場合には予後が悪かったという報告がある。
    *先天性原発性甲状腺機能低下症患児にドパミンが使用されTSH 抑制が起きたために、新生児スクリーニングで偽陰性となった例が報告されている。
2)ドブタミン塩酸塩
  • ドブタミンの急性投与によりTSH の分泌が抑制された報告がある
3)副腎皮質ステロイド薬
  • 大量の副腎皮質ステロイド薬はTSH の分泌を抑制する。しかし長期にわたって大量の副腎皮質ステロイド薬が投与されても甲状腺機能低下症にはならない。その理由としてT4、T3 の低下によるTSH 上昇がグルココルチコイドによるTSH 分泌抑制よりも強力であるためと考えられている
4)酢酸オクトレオチド
  • ソマトスタチン誘導体であるオクトレオチドも下垂体からのTSH 分泌を抑制する。長期に亘って投与しても甲状腺機能低下症を生じないのは、甲状腺ホルモンの分泌低下によりTSH 分泌の増加がもたらされてその効果が打ち消されるためと考えられている43)。但し、先端巨大症患者では、4%程度にレボチロキシンナトリウム補充が必要な機能低下症が起こり得るとされている(海外添付文書による)。
5)ベキサロテン(bexarotene:我が国未承認)
  • 抗腫瘍効果を目的として経口的に使用されるレチノイドX 受容体の選択的リガンドであるbexarotane は、TSH 産生を抑制して中枢性甲状腺機能低下症を引き起こす。その頻度は服用中の患者のおよそ30〜50%に起こる53)。
    また、汎レチノイド受容体(RAR+RXR)アゴニストである9?cis-レチノイン酸でも、中枢性の甲状腺機能低下症が起こり得る
6) オキサカルバマゼピン(oxacarbamazepine:我が国未承認)
  • カルマゼピン(後述)より、肝臓における薬物代謝酵素の誘導が少ないとされているが、視床下部・下垂体系に作用してTSH 分泌を抑制し、血中のT4 の減少と正常域の TSH 値を示す。この結果、中枢性の甲状腺機能低下症をきたした症例報告もあるので、TSH が正常でも甲状腺機能低下症の臨床所見に注意する必要がある
  • 【治療上の注意と治療法】
    中枢性甲状腺機能低下症を示すので、nonthyroidal illness(非甲状腺疾患による低T3 症候群)との鑑別が必要となる。原疾患による甲状腺ホルモンの変化に対し、一般的にはサイロキシンを補充しない。 薬剤による甲状腺機能低下症が強く疑われる場合には、これら薬剤を中止する。本剤の中止不可能な場合で、補充が必要と判断した場合においては慎重にサイロキシンを投与する。





C. 甲状腺ホルモンの代謝を促進するもの
  • これらの薬剤は甲状腺ホルモン(T4、T3)の代謝を促進する。橋本病などにより甲状腺ホルモン産生予備能があまりない場合やサイロキシン補充中の患者においては、これらの薬剤を投与した場合には、甲状腺機能低下症が発症することがあり、サイロキシン補充やサイロキシン補充量の増量調節が必要となる場合がある。
1) フェノバルビタール、リファンピシン
  • フェノバルビタール、リファンピシンは、肝臓における薬物代謝酵素系(cytochrome p450 complex(CYP3A など))を誘導して、T4、T3 のクリアランスを促進する。正常者では、negative feed back 機構を介してTSH増加による甲状腺ホルモン合成・分泌が高まり代償され正常化する。しかし、甲状腺に機能障害(橋本病、潜在性あるいは顕性甲状腺機能低下症など)があると、甲状腺ホルモンの合成・分泌能の低下のため、代償できずに機能低下症が顕在化(TSH が上昇)する。リファンピシン投与では、橋本病25 例中3 例で、2 週間以内に起こったと報告されている
2) フェニトイン、カルバマゼピン
  • 肝臓における薬物代謝酵素系を誘導するとともに、結合蛋白と甲状腺ホルモンの結合を阻害するため、血中総T4 は40%程度減少、総T3 はそれより軽度減少。遊離ホルモン(FT4)は多くのキットでは、artifact として低く測定されるが、血中TSH の値は正常域にとどまる2,61,62)。機能低下症か否かはTSH の値で判断する。
【治療上の注意と治療法】
  • 起因薬剤を中止する。中止できない場合はサイロキシンを補充する。






D. 甲状腺ホルモンの結合蛋白に関するもの
1) エストロゲン、フルオロウラシル
  • エストロゲンや選択的エストロゲン受容体モジュレーター(selectiveestrogen receptor modulator (SERM):ラロキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン(我が国未承認)など)、フルオロウラシルなどは、thyroxine binding globulin (TBG)のシアル化促進による半減期の延長により血中TBG が増加し、総T4 は増加する。総T3 に対する影響は軽微である。またエストロゲンは肝臓におけるTBG の合成を促進するという報告もある

  • 【治療】
    サイロキシン補充中の患者で、エストロゲンを服用している場合には、その補充必要量が30〜50%増加するとされ、SERM では一般にその影響は軽度とされている。起因薬剤が中止できない場合は、サイロキシンの補充あるいは補充量を調節する






E. 腸管からの甲状腺ホルモン(サイロキシン:レボチロキシンナトリウム)の吸収を阻害する薬剤
  • レボチロキシンナトリウムが以下の薬剤と一緒に投与されると、腸管での吸収が阻害され甲状腺機能低下症が顕在化する可能性が考えられる。
1) コレスチラミン・コレスチミド(陰イオン交換樹脂)
  • レボチロキシンナトリウムが投与されている場合、腸管での吸収を阻害する可能性が考えられる75,76)。In vitro では50mg のコレスチラミンが3mgのレボチロキシンナトリウムを吸着する能力があるとされる。ラット腸を用いた実験でもコレスチラミンがないと73.9%通過するレボチロキシンナトリウムがコレスチラミン存在下では2.3%しか通過しなかったと報告されている。両薬剤を投与する場合には少なくとも6時間以上の間隔を空けるのが望ましいとされる。甲状腺機能低下症に高脂血症を合併した場合には後者の治療薬としてHMG-CoA 還元酵素阻害剤(スタチン系薬)などを使用したほうが望ましい。特殊なケースとして、術後甲状腺機能低下症に対して外因性に投与されたレボチロキシンナトリウムにより甲状腺中毒症状を呈した症例にコレスチラミンが投与されて、血中甲状腺ホルモン値が低下した報告がある77)。我が国では使用されていないが、コレスチポール(colestipol)もレボチロキシンナトリウムの吸収を阻害する可能性がある。甲状腺疾患のない高脂血症患者での検討では一部で血清T3 の低下がみられたが一過性で程度も軽度であった。
2) 水酸化アルミニウム
  • 水酸化アルミニウムは多くの制酸剤の成分として用いられており、様々な薬剤と相互作用することが知られている79)。水酸化アルミニウムはレボチロキシンナトリウムを非特異的に吸着することでその吸収を妨げると考えられている。In vitro の研究で水酸化アルミニウムはレボチロキシンナトリウムを濃度依存性に吸着する。水酸化アルミニウムをレボチロキシンナトリウムとともに投与すると2週間後には血清TSH の増加がみられ、4週後にはさらに増加する80)。水酸化アルミニウムを含む制酸剤が投与されている場合にはTSH をモニターし、TSH が上昇した場合にはレボチロキシンナトリウムの投与量の調整もしくは水酸化アルミニウムの中止が必要となる
3) 炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、ポリカルボフィルカルシウム
  • カルシウム製剤は骨粗鬆症の治療などに用いられるが、レボチロキシンナトリウムと一緒に投与されるとレボチロキシンナトリウムを吸着することでその吸収を妨げると考えられている。
  • 4時間空けて投与すればこの阻害は避けられるとされる。
4)硫酸鉄、スクラルファート、活性炭(クレメジン等)、塩酸セベラマー、ポラプレジンク
  • 硫酸鉄は鉄イオンがレボチロキシンナトリウムと複合体を形成することで、その吸収を妨げると考えられている。両薬剤を同時に投与すると、TSH 上昇と一部症例でfree T4 index の低下と臨床的な症状スコアの悪化がみられた。鉄剤と甲状腺剤は広く使用されている薬剤でしばしば併用して用いられることが多いので注意を要する。複合体を作るのを避けるには2剤の投与間隔を2時間以上空ける必要がある。
    スクラルファートは胃・十二指腸潰瘍の治療薬として用いられ、最近では市販のOTC にも配合されているが、レボチロキシンナトリウムをスクラルファート投与2時間半に服用させるとTSH の上昇がみられたとの報告がある84)。In vitro の実験でもスクラルファートはレボチロキシンナトリウムを強く結合することが明らかにされている。
    動物実験では活性炭もサイロキシン吸収を抑える作用があることが報告されている85)。炭酸カルシウムがレボチロキシンナトリウムの吸収を妨げることから、同じ様に燐酸を結合する作用により透析患者で使用されている塩酸セベラマーもレボチロキシンナトリウムの吸収を抑える可能性がある。レボチロキシンナトリウム内服中の透析患者を調べたところ炭酸カルシウムと塩酸セベラマーを内服していた患者は酢酸カルシウム内服中の患者よりTSH が高かったと報告されている。我が国でも平成17年度に1例副作用報告がなされている。ポラプレジンクはレボチロキシンナトリウムと併用されるとキレートを形成し、その吸収を低下させる可能性がある
5) オメプラゾール
  • オメプラゾールの投与による胃酸分泌の低下により、甲状腺機能低下症患者におけるレボチロキシンナトリウムの補充量の増加が必要であったという報告がある。従って、他の類薬でも同様の影響が考えられる。
6)ラロキシフェン
  • ラロキシフェンがレボチロキシンナトリウムと同時に投与されるとその吸収を妨げる可能性があるが、その機序は不明である
7)シプロフロキサシン
  • サイロキシン補充療法中の甲状腺機能低下症の2例にニューキノロン系抗菌薬であるシプロフロキサシンが経口投与された際、甲状腺機能低下症が増悪してTSH の上昇、FT4 値の低下、臨床症状の悪化をみたという報告がある90)。シプロフロキサシンがレボチロキシンナトリウムの吸収を妨げたと考えられるがその機序は不明である。
【治療上の注意と治療法】
  • これらのレボチロキシンナトリウムの吸収を阻害する薬剤を服用する場合には、少なくとも数時間以上の間隔をあけて、両剤を服用する。他剤との服用間隔をあける意味で、レボチロキシンナトリウムの就寝前投与なども考慮すべきであろう







F. その他
1)Highly active antiretroviral therapy (HAART)療法
  • Human immunodeficiency virus(HIV)感染者においては、種々の内分泌異常が報告されている。甲状腺の異常に関しても、それがHIV 感染そのものによる異常か、全身性の疾患に罹患しているためのものかは、はっきりしない。食欲不振や体重減少を伴うHIV 感染患者においては、T3 あるいはFT3の低下が認められるが、rT3 が低く(この点がnonthyroidal illness とは異なるとされる)、またTBG は増加していることが多い。後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療としていくつかの異なった作用機序の抗ウイルス薬を組み合わせて行うHAART 療法(核酸系逆転写酵素阻害剤,非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤を数種類組み合わせるカクテル療法)においては、しばしば潜在性甲状腺機能低下症を伴う92,93)。また、HAART 療法により、免疫機能の改善にともない甲状腺自己抗体が陽性になることがあり、甲状腺機能異常(バセドウ病や機能低下症)が起こり易いと考えられている(免疫再構築症候群)94)。従って、定期的な甲状腺機能の測定が必要である。
2)性腺刺激ホルモン放出ホルモン誘導体(酢酸ゴセレリンなど)
  • ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)誘導体である酢酸ゴセレリンによる甲状腺機能低下症の副作用報告が平成16年度になされている。高用量GnRH 投与を持続するとGnRH 受容体の下向き調節が起こり、ゴナドトロピンの分泌低下によりエストロゲンとプロゲステロンの分泌が抑制される。ゴナドトロピンと性ホルモンの変動が自己免疫性甲状腺疾患発症を誘発すると考えられている。破壊性甲状腺炎により、一過性の甲状腺機能低下症が報告されている
3)経腸栄養剤
  • 長期的に経腸栄養剤のみで栄養されている重症疾患を有する小児において、ヨード欠乏により甲状腺機能低下症が惹起されたとの報告がある100,101,102)。経腸栄養剤のみの期間は8〜11 ヶ月100,101)で、いずれも甲状腺腫に気づかれ、その後の検査で甲状腺機能低下症が明らかとなっている(9歳、4歳、4歳のいずれも女児例)。1例は120μg/日のヨード補充、1例はレボチロキシンナトリウムの短期治療後の50μg/日のヨード補充、1例はレボチロキシンナトリウム治療後に育児用粉乳に変更され、甲状腺機能低下症が改善している。最近、後藤ら102)は、3年以上経腸栄養剤のみで栄養されている7例(2歳4か月から15 歳7ヶ月)で甲状腺機能を検査し、2例(13 歳女児、14 歳男児)にヨード欠乏症と甲状腺機能低下症を認めたと報告している。これら5症例で用いられた経腸栄養剤中のヨード濃度は、いずれも日本での同年齢のヨード摂取推奨量103)を満たすには不十分であった。経腸栄養についてのガイドライン)では、小児の栄養管理において「静脈栄養および経腸栄養施行時には、ビタミンおよび微量元素は必要量を投与する」と記載されているが、主要濃厚流動食等の中で医薬品11 品目中ヨード濃度の記載があるものは3品目であり(エレンタール、エレンタールP、ヘバンED)、それらでも同年齢のヨード摂取推奨量は満たさない。
    長期的に経腸栄養剤のみで栄養する場合は、ヨード摂取推奨量に相当するヨード補充を全例で行う必要があり、補充が不十分と考えられる場合は、少なくとも6ヶ月に1回は甲状腺機能検査が必要である。
4)メシル酸イマチニブ(imatinib)

【発生機序・頻度など】
甲状腺全摘を受けサイロキシン補充を行っている患者で、チロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブ投与により軽度の FT4、FT3 の低下と著しいTSH の上昇が認められ、補充量の増量が必要であったとの報告がなされた。詳しい機序は不明であるが、レボチロキシンナトリウムの吸収を阻害するのではなく、下垂体に対する甲状腺ホルモン作用を阻害する可能性があると報告されている。
【治療】
本剤投与を中止できる場合は中止するが、中止できない場合には本剤を継続したままレボチロキシンナトリウムを併用あるいは増量する









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