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甲状腺中毒症






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甲状腺腫」「

甲状腺機能亢進症
」「

バセドウ病





甲状腺中毒症     (厚生労働省
英語名:Thyrotoxicosis
同義語:甲状腺機能亢進症(Hyperthyroidism)、
     バセドウ病(Graves’disease)、
     破壊性甲状腺中毒症(Destructive thyrotoxicosis)、
     詐病性(作為的)甲状腺中毒症・甲状腺剤甲状腺中毒症(Factitiousthyrotoxicosis)


血中甲状腺ホルモンが高値となることで起きる「甲状腺中毒症」は、医薬品によって引き起こされる場合もあります。
何らかのお薬を服用していて、次のような症状がみられた場合には、放置せずに、ただちに医師・薬剤師に連絡して下さい。
  • 「動悸(胸がドキドキする)」、
  • 「頻脈(脈が速くなる)」、
  • 「手指のふるえ」、
  • 「食欲があるのに体重が減少する」、
  • 「汗が多い・暑がり」、
  • 「全身倦怠感(体がだるい)」
  • 「疲労感(疲れやすい)」、
  • 「神経質で気分がイライラする」、
  • 「微熱」
    • 医薬品によっては、上記の症状が自然に軽快した後に、甲状腺ホルモン不足の症状《元気がない、まぶたが腫れぼったい、寒がり、体重増加、動作がおそい、いつも眠たい、など》があらわれることがあります。このような時は、重篤副作用疾患別対応マニュアル「甲状腺機能低下症」を参照して下さい。
甲状腺中毒症とは?
甲状腺中毒症とは、
  • 血中甲状腺ホルモンが高値になることにより、甲状腺ホルモンの作用が過剰に出現した病態です。甲状腺ホルモンは、生体の様々な代謝反応(体を構成している物質の分解と合成)を活発にして、エネルギー産生を増やす作用があり、その作用は全身におよびます。
    軽度の場合は明らかな症状がないこともありますが、心・循環器系の異常として「動悸(胸がドキドキする)や頻脈(脈が速くなる)」がおこります。神経系では「手指のふるえ」や「神経質で気分がイライラする」などの症状があります。また「体重減少」がよくみられます。「食欲があるのに、体重が減少する」ことは甲状腺中毒症に特徴的な症状です。

    比較的高齢の男性では体重減少が初発症状のことがよくあります。「暑がり」、「発汗過多」があり、「全身倦怠感(体がだるい)、疲労感(疲れやすい)」、などの症状もみられます。

    その他、微熱、月経不順がみられたり、小児では学業低下をきたしたりすることもあります。

    甲状腺中毒症には、甲状腺での甲状腺ホルモン合成が亢進するタイプと、甲状腺濾胞細胞が破壊されて甲状腺ホルモンが血中に漏れ出すためにおこるタイプ、及び、甲状腺ホルモンの過剰服用によるものがあり、これらによってその後の対応が異なります。


甲状腺中毒症と甲状腺機能亢進症
  • 同義語のように用いられることもあるが、両者には若干の違いがある。内分泌や甲状腺の専門医でなくてもこの違いを理解した方が、本マニュアルに記載する副作用の病態と治療が解りやすいと考えられるので、両者の違いを最初に述べる。


甲状腺中毒症
  • 血中甲状腺ホルモン濃度が上昇して、その為に、動悸など甲状腺ホルモン作用が過剰に出現した病態である。


一方、
狭義の甲状腺機能亢進症
  • 甲状腺での甲状腺ホルモンの合成と分泌が亢進した病態をいう。通常、甲状腺機能亢進症があって甲状腺中毒症がおこる(バセドウ病はこの代表的な疾患である)。しかし、例えば、甲状腺薬を大量に服用した場合を考えると、甲状腺ホルモン濃度が高いために甲状腺中毒症がおこるが、甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone: TSH)は抑制され、その結果、甲状腺自体の機能は抑制されている。また、破壊性甲状腺中毒症では、甲状腺濾胞の障害によって甲状腺ホルモンが血中に漏出して甲状腺中毒症となる。真の意味での(狭義の)甲状腺の機能亢進はない。
    即ち、甲状腺中毒症には、バセドウ病のような甲状腺機能亢進症を伴うものと、甲状腺ホルモン過剰服用のように、甲状腺機能亢進症を伴わないものがある。
    本マニュアルでは、薬剤によって血中甲状腺ホルモンが上昇して甲状腺中毒症をおこす病態について記載する。これらには狭義の甲状腺機能亢進症を伴うバセドウ病タイプと、甲状腺機能亢進症を伴わない場合(破壊性甲状腺中毒症タイプと甲状腺ホルモン過剰服用の場合)がある。バセドウ病タイプであればチアマゾールなどの抗甲状腺薬による治療が必要になるが、そうでなければ抗甲状腺薬は無効である





早期発見と早期対応のポイント
(1)副作用の好発時期
発症時期は薬剤によって異なる。投与開始数週間後に発症することや数年後に発症することがある。
一般的には、破壊性甲状腺中毒症タイプのものは投与開始後数ヶ月(2〜4 ヶ月程度)以内に発症することが多く、バセドウ病タイプのものは数ヶ月以降に発症することが多い。しかし、破壊性甲状腺中毒症タイプであっても投与開始後2〜3 年以上経過してから発症することもある。
(2)患者側のリスク因子
多くは、基礎疾患として慢性甲状腺炎や寛解中バセドウ病などの自己免疫性甲状腺疾患を有している患者に発症する。甲状腺疾患の家族例のある患者にも発症しやすい。しかし、甲状腺自体には特に病変は認められない患者に発症することもある。
(3)患者もしくは家族などが早期に認識しうる症状
最もしばしばみられるものは循環器症状で、動悸、頻脈や息切れを訴える。また、手指のふるえが生じる。体重は減少する。特に、比較的高齢の男性患者では体重減少で気がつかれることが多い。暑がりとなり、発汗過多をきたす。神経質で気分がイライラして、気が短くなったり、落ち着きがなくなったりする。全身倦怠感や疲労感、筋力低下を訴える。消化器症状として、食欲の亢進、軟便、下痢がみられる。小児では学業が低下して発見されることがある。その他、微熱、月経不順がみられることがある。
(4)医療関係者が早期に認識しうる所見・症状
安静時にも頻脈がみられる。不整脈をきたすこともあり、心房細動がみられることがある。発汗過多があり、皮膚は湿潤で暖かい。血圧は、一般に収縮期血圧が高く、拡張期血圧が下がって脈圧が大きくなる。
(5)早期発見に必要な検査と実施時期
血中TSH 濃度の低下が最も鋭敏で信頼度の高い検査所見である。ごく軽度の甲状腺中毒症では、TSH のみが低下して、甲状腺ホルモン濃度は正常である(潜在性甲状腺中毒症)。
更に甲状腺中毒症が顕性化してくると、サイロキシン(thyroxine: T4)や遊離型サイロキシン(free thyroxine: FT4)、及び、トリヨードサイロニン(triiodothyronie: T3)や遊離型トリヨードサイロニン(free triiodothyronie: FT3)の血中濃度が上昇する。
甲状腺中毒症を比較的よくきたしうる薬剤(インターフェロン製剤、アミオダロンなど)を投与する場合は、投与前に抗甲状腺自己抗体(抗サイログロブリン抗体anti-thyroglobulin antibody: TgAb と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体anti-thyroperoxidase antibody: TPOAb)や、TSH、FT4、FT3 を測定しておくことが望ましい。
特に、甲状腺基礎疾患のある患者にはあらかじめ甲状腺機能検査を施行しておく。その後は、定期的に数ヶ月に一度と、疑わしい症状・所見がみられた時に、適宜甲状腺機能検査を実施する。





副作用の概要
甲状腺中毒症は、血中甲状腺ホルモンが高値になることにより、甲状腺ホルモン作用が過剰に出現した病態である。薬剤によって、狭義の甲状腺機能亢進症が生じるバセドウ病タイプのものと、甲状腺濾胞細胞が破壊されて甲状腺ホルモンが血中に漏れ出すためにおこる破壊性甲状腺中毒症タイプのもの及び、甲状腺ホルモン過剰服用によるものがある(表1)
(表1.) 薬剤による甲状腺中毒症の発症機序による分類
  1. 甲状腺機能亢進症(狭義)を伴うもの(バセドウ病タイプ)
  2. 甲状腺機能亢進症(狭義)を伴わないもの
    • (1)甲状腺から甲状腺ホルモンが漏出するもの(破壊性甲状腺中毒症タイプ)
    • 甲状腺ホルモンを過剰に服用したもの
タイプによって臨床経過は異なり(図1)、治療方針も異なる。バセドウ病タイプでは甲状腺中毒症が継続するので抗甲状腺薬の投与が必要である。
それに対して、破壊性甲状腺中毒症タイプでは甲状腺中毒症は一過性であり、甲状腺機能は数ヶ月の経過で自然に回復する。甲状腺中毒症の強い場合はβブロッカーを投与するが、軽い場合などは経過観察のみでよいことが多い。破壊性甲状腺中毒症タイプの場合、甲状腺機能が正常となる前に一旦、甲状腺機能低下症の時期を経過することがある(図1のA’)。
(1)自覚症状
動悸や頻脈などの循環器症状を訴えることが多い。
また、手指のふるえが生じ、書字の際に気づかれることがある。
体重は減少する。食欲が亢進しているのに、体重が減少することは甲状腺中毒症に特徴的である。
全身倦怠感や疲労感、筋力低下を訴えることがある。
暑がりとなり、発汗過多をきたす。
神経質となり、気分がイライラして、気が短くなったり、落ち着きがなくなったりする。
消化器症状として、食欲の亢進、軟便、下痢がみられる。
その他、微熱、月経不順がみられることがある。
(2)他覚所見
安静時にも頻脈がみられる。不整脈をきたすこともあり、心房細動がみられることがある。手指の振戦は随意筋の細かいもので、規則正しい。
発汗があり、皮膚は湿潤で暖かい。
血圧は、一般に収縮期血圧が高く、拡張期血圧が下がって脈圧が大きくなる。
甲状腺腫は、副作用の発現機序によって、認められることと認められないことがある。バセドウ病タイプではびまん性の甲状腺腫大がみられる。一方、破壊性甲状腺中毒症タイプでは甲状腺腫大は認められないことがある。甲状腺ホルモン過剰服用によるものでは甲状腺腫はみられないことが多い。
(3)臨床検査値
甲状腺中毒症の診断には、血中TSH 濃度の低下が重要である。血中FT4やFT3 濃度は上昇する。血中T4 濃度やT3 濃度(単にT4、T3 といえば総濃度をさす)も、一般的にはFT4,FT3 値と平行して上昇する。しかし、サイロキシン結合グロブリン(thyroxine binding globulin: TBG)異常を伴う場合は、T4、T3 値は甲状腺機能を反映しないことがある。
TgAb とTPOAb は自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、バセドウ病)のマーカーとして知られている。赤血球沈降反応によるテスト(tanned red cellhemagglutination test: TGHA やmicrosome-coated red cellhemagglutination test: MCHA)よりも免疫学的測定法によるTgAb、TPOAb測定法の方が感度が高く、スクリーニングに用いるに適切である。
バセドウ病タイプの甲状腺中毒症では抗TSH受容体抗体(TSH receptorantibody: TRAb、TSH binding inhibitor immunoglobulins: TBII またはthyroid stimulating antibody: TSAb)が陽性となる。一方、破壊性甲状腺中毒症タイプや甲状腺ホルモン過剰服用例では抗TSH 受容体抗体は、通常、陰性である。
(4)画像検査所見
甲状腺エコーでは、バセドウ病タイプでは甲状腺のびまん性腫大を認める。破壊性甲状腺中毒症タイプでは甲状腺の腫大はないことがある。
123I(または99mTc)甲状腺シンチグラム・摂取率検査は、バセドウ病タイプか、破壊性甲状腺中毒症タイプや甲状腺ホルモン過剰服用かの鑑別に重要である。即ち、バセドウ病タイプでは甲状腺はびまん性に放射線の集積を認め、摂取率は高値となる。一方、破壊性甲状腺中毒症タイプや甲状腺ホルモン過剰服用では、甲状腺摂取率は著明な低値となり、シンチグラム像は描出不良となる。
(5)発生機序
血中甲状腺ホルモン濃度が上昇することで甲状腺中毒症が発症する。その機序には、前述のように、甲状腺機能亢進症を伴うバセドウ病タイプのものと、甲状腺機能亢進症を伴わないものがある。
バセドウ病タイプでは、投与薬剤によって何らかの免疫学的機序の変動がおこり、その結果、抗TSH 受容体抗体が産生される。この自己抗体が甲状腺濾胞細胞膜に存在するTSH 受容体と結合して、甲状腺細胞を刺激することによって甲状腺機能亢進症が発症する。
甲状腺機能亢進症を伴わない場合の1つは、破壊性甲状腺中毒症タイプであり、甲状腺濾胞細胞が破壊されて甲状腺ホルモンが血中に漏出することによって甲状腺中毒症が発症する。これには投与薬剤による免疫学的機序の変動が関与する場合(インターフェロン製剤、ゴナドトロピン誘導体などによるもの)と薬剤自体の甲状腺細胞障害作用(アミオダロンによるもの)がある。甲状腺機能亢進症(狭義)を伴わずに甲状腺中毒症となる、もう一つの場合は、単純に、甲状腺ホルモンを過剰に服用した場合である。





副作用の判別基準(判別方法)
  • 薬剤服用中に血中甲状腺ホルモン濃度が上昇した場合、医薬品の副作用
    による甲状腺中毒症の可能性がある。自然発症の甲状腺中毒症との鑑別に
    は、薬歴と甲状腺機能変化の関係など、経過によって判断することが重要
    である。







判別が必要な疾患と判別方法
  • 血中甲状腺ホルモン上昇をきたす疾患を判別する必要がある。図2に甲状腺中毒症をきたす主な疾患の鑑別診断フローチャートを示す。
 
  • 図2.主な甲状腺中毒症の鑑別診断フローチャート
    • ※1:抗TSH 受容体抗体が陽性でも稀に無痛性甲状腺炎などの場合がある。
      ※2:シンチ・摂取率の代わりに甲状腺超音波検査での血量流測定も参考となる。
甲状腺中毒症

(1)バセドウ病
  • 血中TSH が低値で、FT3 かFT4 が高値であれば、抗TSH 受容体抗体を測定するか、123I(または99mTc)甲状腺シンチグラム・摂取率検査を行う。抗TSH受容体抗体陽性、および/または 放射線摂取率高値があればバセドウ病と診断する。ただし、抗TSH 受容体抗体が陽性でも、稀に破壊性甲状腺中毒症のことがある。自然発症のバセドウ病か、薬剤誘発性のバセドウ病タイプ甲状腺中毒症かの鑑別は、発症と薬歴との関係など、経過によって診断するしかない。

(2)無痛性甲状腺炎
  • 慢性甲状腺炎や寛解中のバセドウ病を基礎に発症することが多い。一過性の破壊性甲状腺中毒症をきたす。誘因として、出産後、クッシング症候群術後などが挙げられるが、誘因不明の症例も多い。自然発症の無痛性甲状腺炎か、薬剤の副作用による破壊性甲状腺中毒症かの鑑別には、服薬歴などの詳細な問診が重要である。

(3)亜急性甲状腺炎
  • 甲状腺の自発痛と圧痛を伴う甲状腺中毒症を呈する。発熱をきたし、CRP陽性などの炎症所見がある。破壊性甲状腺中毒症の形をとり、中毒症は一過性である。

(5)プランマー病
  • 結節性甲状腺腫があり、その自律性の甲状腺ホルモン産生による甲状腺中毒症をきたす。シンチグラムで結節に一致して放射線の取り込みが認められる。

(6)ダイエット用健康食品などの服用
  • 日本で医薬品として認可されている漢方薬には、甲状腺ホルモンを含有したものはない。しかし、違法な健康食品、やせ薬などに甲状腺ホルモンを含有したものがある。甲状腺中毒症があれば、問診で、医薬品以外のいわゆる健康食品などについての内用状況も聞く事が重要である。





一般的治療方法
  • 原因薬剤を中止するかどうかは個々の症例で異なる。薬剤による治療効果と、中止による悪影響を慎重に勘案して決定する(「主な薬剤毎の特徴」を参照)。インターフェロン製剤、アミオダロン、抗HIV 薬によるものなどは、原疾患治療を優先してこれらの薬剤を中止しないことが多い。
    バセドウ病タイプの場合はチアマゾールなどの抗甲状腺剤を用いる。動悸、息切れなどの甲状腺中毒症状に対してはβブロッカーを投与する。手術療法や放射線内用療法については通常のバセドウ病に準じて選択する。
    破壊性甲状腺中毒症タイプの場合で、症状の無い時は特に治療の必要はない。甲状腺中毒症は一過性であって自然に軽快することを患者に説明して経過を観察する。通常、2,3ヶ月(長い場合6ヶ月程度)で甲状腺機能は正常に回復する。動悸、息切れが強い場合はβブロッカーを投与する。
    甲状腺ホルモンが非常に高値となった場合などには、慎重に副腎皮質ステロイド薬等の投与を考慮する(図3参照)。





(1)インターフェロン製剤(interferon: IFN)、リバビリン
  • 臨床上使用されているIFN 製剤にはα、β、γの3種類があり、多くのサブタイプが存在する。生体内でIFN は種々の細胞と相互に作用し、ネットワークを形成している。IFN の作用としては、抗ウイルス作用をはじめMHC classUやナチュラルキラー細胞(natural killer cell)の活性化などさまざまな作用がある。人体においてIFN はウイルス感染後速やかに分泌され12 時間くらいでピークになり約2 週間で消失する。これに対してB型肝炎、C 型肝炎などの治療には特定のIFN 製剤が長期間大量投与される。
    C型肝炎治療薬であるリバビリンはインターフェロンに併用して使用される。併用療法はインターフェロン単独療法にくらべて甲状腺機能異常が高頻度に起こるとの報告がある1)。リバビリン単独で使用されることはないのでリバビリン単独の甲状腺への影響は不明である。

@IFN の甲状腺抗体への影響
  • ウイルス性肝炎を対象とした欧米の症例を中心に行われた10 のプロスペクティブスタディー2-11)でメタアナリシスを行ったところ、IFN-α製剤投与によりTgAb、TPOAb が10.3% (1220 例中126 例)の患者で陽性化した。また、治療前から陽性の患者ではその値が上昇した。

A甲状腺中毒症の発症機序
  • 今まで報告されているIFN 製剤による甲状腺機能異常の機序は機能低下症のものであり、破壊性甲状腺中毒症やバセドウ病発症のメカニズムについては不明である。

B発症頻度、時期、及び予後
  • メタアナリシスによると、甲状腺中毒症は36 例(2.9%)に認められた。抗TSH レセプター抗体または123I 甲状腺摂取率から診断されたバセドウ病タイプは3 例(0.2%)、破壊性甲状腺中毒症タイプは12 例(1.0%)、タイプ不明の患者は21 例(1.7%)であった。発症時期は、タイプ診断が確実なものはIFN製剤開始後12 週以内で、タイプ診断不明のものは12 から72 週間後であった。予後は、記載されている24 例中4 例でIFN 製剤投与終了後も甲状腺中毒症が持続していた。

C甲状腺中毒症の予知とIFN 治療中の経過観察
  • 甲状腺中毒症は、軽症の場合はほとんど無症状であり、また、中等度以上の甲状腺中毒症でも患者が気づくか否かは個人差が大きい。TgAb、TPOAbが陽性患者ではIFN の作用を受けやすい。また、TgAb、TPOAb が陰性の患者でもIFN 治療後陽性化することがあるので、IFN 治療前に全例、甲状腺機能検査とTgAb, TPOAb を測定することが望ましい。治療開始後は1 から2 ヶ月に1 度は甲状腺機能検査を行うことが望ましい。

D治療
  • 通常、IFN 治療を中止する必要はない。バセドウ病タイプと診断された場合はチアマゾールなどの抗甲状腺剤を用いる。
  • 動悸、息切れに対してはβブロッカーを投与する。
  • 無痛性甲状腺炎タイプで動悸、息切れが強い場合はβブロッカーを投与する。
  • 破壊性甲状腺中毒症タイプでは甲状腺中毒症を経て機能低下症になることがあるが、ほとんどの症例では一過性で2〜3 ヶ月間で正常化する。






(2)アミオダロン
  • アミオダロンは心室性頻拍や肥大型心筋症に伴う心房細動など、生命に危険のある再発性不整脈に用いられる不整脈治療薬である。本剤一錠(100mg)中には大量のヨード(37mg)が含まれている。本剤により甲状腺中毒症を惹起することがある一方、ヨード誘発性の甲状腺機能低下症をきたすこともある(重篤副作用疾患別対応マニュアル「甲状腺機能低下症」を参照)。

@甲状腺中毒症の型と機序(表2)
  • バセドウ病タイプの甲状腺中毒症を
  • アミオダロン誘発性甲状腺中毒症
  • (amiodarone-induced thyrotoxicosis: AIT) I 型と称する。
    これは、バセドウ病や中毒性結節性甲状腺腫が潜在または併発しているものが、本剤を内服して、ヨード誘発性の甲状腺ホルモン産生過剰を起こしたものと考えられる。これに対して、破壊性甲状腺中毒症タイプをAIT II 型という。
    これは、甲状腺に基礎疾患のなかったものが、アミオダロンを内服中に急性あるいは亜急性に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンが大量に漏出してくるものである。AIT II 型の病因は不明であるが、アミオダロン自体に甲状腺細胞障害性があるためと推測されている。

A発症頻度、時期
  • ヨード摂取量の多い我が国では、中毒性の腺腫様甲状腺腫は稀なので、欧州と異なり、結節を伴ったAIT I 型は非常に稀である14)。しかし、我が国でもバセドウ病に合併したAIT I 型症例が散発的に報告されるようになってきている。
    これに対して、AIT II 型は本剤内服後2〜3 年ほど経過してから生じることが多い。我が国での発生率は10%程度と推測される

BAIT 発症の予知と病態
  • AIT I 型とII 型では、病態も治療法も大いに異なっている(表2)。
    また、AIT II 型では、甲状腺ホルモン過剰症が急性〜亜急性に起こるので、本剤内服中は、3 ヶ月に一回ほど、甲状腺機能(FT3, FT4, TSH)を定期的に測定していくことが望ましい。
    我が国では、アミオダロンは、重篤な不整脈のある患者にのみ処方されるので、βブロッカーなどと一緒に併用されていることが多い。また、アミオダロンには甲状腺ホルモン受容体に拮抗的に作用する性質もある。そのためか、AIT 患者では、通常のバセドウ病患者と比較して、甲状腺ホルモンが過剰な割には自覚症状に乏しく、甲状腺ホルモンに対して“鈍い”印象をうける。しかし、甲状腺中毒症が強くなると、動悸、頻脈、心房細動、心房粗動、心室頻拍が生じたり、埋め込み型除細動器(ICD)が作動したりして、循環器病的には非常に好ましくない状態となる15)ので、早急な対応が必要となる。

C治療
  • 本剤内服中にAIT を併発した後、多臓器不全(MOF)となって死亡した症例も報告されているので、AIT を生じた場合には、循環器専門医や甲状腺専門医に速やかに紹介した方がよい。
    バセドウ病タイプであるAIT I 型の場合には通常のバセドウ病のごとく治療する。ただし、抗甲状腺剤の効き目はやや悪い。なお、循環器専門医よりみて甲状腺機能を早急に正常化することが望ましい場合には、甲状腺の全摘または亜全摘術が勧められることもある。
    これに対して、破壊性甲状腺中毒症タイプであるAIT II 型は、抗甲状腺剤は全く無効である。軽度のAIT II 型で、ほとんど無症状の場合には、患者に病態をよく説明し、安心感を与えるのみで特に投薬を必要としない場合もある。しかし、甲状腺ホルモンが非常に高値となった場合や、不整脈が頻発するようになってきた場合には、早急に副腎皮質ステロイド薬を投与する(図3参照)。
    一般にプレドニゾロンを30mg/日(分3)で投与を開始する。イタリアでは0.5mg/kg/日で治療を開始している。まず2 週間ほど投与し、甲状腺ホルモンが正常化しつつあるのを確認しながら、2 週ごとに漸減していく。早く減量しすぎると、亜急性甲状腺炎のように再燃することがある(図3)。一般に、プレドニゾロンは、亜急性甲状腺炎の場合のようには著効せず、治療期間も亜急性甲状腺炎よりは2 倍ほど長めになるように漸減していくとよい。
    本剤を内服中の甲状腺ではヨード貯蔵量が2〜3 倍多い。したがって、甲状腺ホルモン過剰状態は、軽症例では無痛性甲状腺炎のように2 ヶ月ほどで自然に治まるが、重症例だと数ヶ月以上にも遷延することがある。特に甲状腺が大きいと長引きやすい。アミオダロンを10 年以上も内服しているとII 型AIT が再発してくることもあるが、甲状腺ホルモンの備蓄量が減少しているせいか、再発時は初回より軽症で済む傾向がある。
    一般に薬剤による副作用が生じた場合には、直ちに服薬を中止するのが原則であるが、AIT II 型を生じた場合には賛否両論がある。我が国ではアミオダロンは致死性のある不整脈患者に対して最後の切り札として処方されており、また中止しても血中半減期が2 ヶ月近くもあるので、出来るだけ中止せずにフォローしていくのが良いと思われる。しかし、肺線維症や肝機能障害などの重篤な副作用が生じてきた場合には直ちに中止せねばならない(重篤副作用疾患別対応マニュアル、「間質性肺炎」を参照)。
    また、甲状腺中毒症になるとワルファリンが効きやすくなっているので、ワルファリンを適宜減量することも重要である。








表2.アミオダロンによる甲状腺中毒症
甲状腺中毒症 AIT (T型) AIT (U型)
基礎疾患 腺腫様甲状腺腫
バセドウ病
なし
病態 甲状腺ホルモンの過剰な
産生・分泌
貯蔵された甲状腺ホルモンの過剰な漏出(破壊性甲状腺中毒症)
頻度 我が国ではまれ 10%程度
甲状腺123I 摂取率
(24 時間値)
3〜10%以上* 1-4%以下
T3またはFT3 正常上限〜高値 正常上限〜高値
T4またはFT4 高値 高値
TSH 低値 低値
抗TSH受容体抗体 陰性〜陽性** 通常陰性***
治療 軽度 抗甲状腺薬 経過観察
中等〜重篤 抗甲状腺薬**** 副腎皮質ステロイド薬
* 体内のヨード含量が多いので、微妙な値となることが多い。
** バセドウ病では陽性
*** 弱陽性のこともある。
**** 手術を勧めることもある。






(3)抗ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus: HIV)薬
@機序
  • HIV 感染症
  • (後天性免疫不全症候群acquired immunodeficiency syndrome:AIDS、エイズ)
  • の治療はいくつかの異なった作用機序の抗ウイルス薬を組み合わせて使う「強力な抗レトロウイルス療法(highly activeantiretroviral therapy: HAART)」がスタンダードとなっていて効果を挙げている。免疫力の回復に伴い免疫応答が誘導され、日和見感染の増悪や自己免疫疾患の発症を惹起することがあり、「免疫再構築症候群」と呼ぶ。
    その一つとしてバセドウ病タイプ甲状腺中毒症の発症が知られている。
    個々の薬剤単独の副作用ではないと考えられている。

A発症時期、頻度
  • 治療開始後半年から3 年後に発症する。頻度は不明である。

B治療
  • HIV 治療をやめる必要はなく、バセドウ病に対する通常の治療を行う。





(4)ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体
  • ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)の誘導体を投与すると、ゴナドトロピンが上昇し、それによってエストロジェンとプロゲステロンも上昇する。しかし、高用量のGnRH 投与を続けるとGnRH 受容体の下向き調節(down regulation)によってゴナドトロピン分泌が低下するので、エストロジェンとプロジェストロン分泌が抑制される。これを利用して、GnRH 誘導体は子宮内膜症、子宮筋腫、前立腺癌などの性ホルモン依存性疾患の治療に用いられている。

@甲状腺中毒症の発症機序
  • 一般に、エストロジェンの濃度が高いときは免疫抑制作用があるが、逆に低くなると免疫促進的に働く。そのため、GnRH 誘導体による、ゴナドトロピンと性ホルモンの変動が自己免疫性甲状腺疾患発症の引き金となる

A発症要因、時期
  • これまで報告されている甲状腺中毒症は、殆どが女性である。多くは、慢性甲状腺炎が基礎にあったり、バセドウ病寛解中の症例である。しかし、甲状腺疾患の素因のない患者に発症することもある。
    破壊性甲状腺中毒症タイプの甲状腺中毒症は投与開始後数ヶ月以内(2〜4 ヶ月)に発症する。一方、バセドウ病タイプは投与開始後数ヶ月後から1年程度してから発症している。これらは、出産後のホルモン変動で発症する、破壊性甲状腺中毒症が出産後早期(概ね1〜4 ヶ月以内)に起こり、出産後バセドウ病は概ね4ヶ月以降に発症することと類似している。

B治療
  • 可能であれば原因薬剤を中止する。破壊性甲状腺中毒症タイプの多くの例では経過観察のみで経過する。バセドウ病タイプの甲状腺中毒症は通常のバセドウ病の治療に準じて治療する






(5)甲状腺ホルモン製剤
  • 甲状腺機能低下症の治療薬である甲状腺ホルモン製剤を過剰に服用すると、当然のこととして甲状腺中毒症となる。この時、合成T4 製剤(商品名:チラーヂンS、レボチロキシンNa など)服用の場合は血中T4、FT4、T3、FT3 がいずれも上昇する。しかし、合成T3 製剤(商品名:チロナミンなど)やT3 含有製剤(動物由来の甲状腺乾燥製剤など。商品名:乾燥甲状腺)服用の場合は、T4 やFT4 は正常ないし低値であっても、T3 やFT3 が高値となって甲状腺中毒症がおこる場合があるので注意が必要である。
    また、甲状腺ホルモンを、知らずにあるいは他人に隠れて服用して甲状腺中毒症をきたす場合がある。作為的に大量の甲状腺ホルモンを服用することもある。
  • 詐病性(作為的)甲状腺中毒症、あるいは甲状腺剤甲状腺中毒症(factitious thyrotoxicosis)と呼ばれる。

@病態
  • 甲状腺ホルモンは主に小腸で吸収される。
  • 吸収率は、T4 は70〜80%、T3は95〜100%である。
  • 血中半減期は、T4 は約7 日、T3 は0.8〜1 日である。
    T3 は内服後2〜4 時間で血中濃度がピーク値をとる。25μg の服用で6〜8時間まで血中濃度は高値となる。一方、T4 を一度に大量(2 mg 程度)に内服した場合、血中T4 濃度が最大を示すのは2 日目頃となる34)。数mg の過剰T4 を一度に服用した時、T4 は正常の数倍まで上昇するのに対して、T3濃度ピーク値はそれ程高くならず、正常高値程度にとどまることが多い。
    通常の甲状腺中毒症では血中サイログロブリンが高値となるが、合成甲状腺ホルモン製剤を服用した場合は低値となるので鑑別に有用である。

A治療
  • 甲状腺ホルモン内服を中止させ、症状に応じてβブロッカーを用いる。
    服用が大量であってもT4 製剤の一度の内服であれば、前述のようにT3 はそれ程上昇しないので、通常、症状は軽く、甲状腺中毒症は自然に軽快する。しかし、非常に大量をかつ長期にわたって服用すると、意識障害をきたして重篤な状態となりうる。
  • このような場合は、胃洗浄を行うことがあり、甲状腺クリーゼとしてβブロッカーとともに副腎皮質ステロイド薬を投与する。また、補液、循環管理など集中治療が必要となる。

B違法な「健康食品」や「やせ薬」による甲状腺中毒症
  • 日本で認可されている漢方薬には甲状腺ホルモンを含有したものはない。
    しかし、違法あるいは外国からの個人輸入などによる、いわゆる「健康食品」あるいは「やせ薬」に甲状腺ホルモンが含まれているものがあるので注意が必要である。これらは承認を受けた医薬品ではないが、参考のために、甲状腺ホルモンが検出された製品の例を表3に示す(フェンフルラミンまたはその誘導体含有の有無も示した)。
    薬剤によるものではないが、アメリカ北西部で1980 年代に流行した甲状腺中毒症では、牛肉としてスーパーマーケットで販売されていたミンチ肉に,ウシ甲状腺が混在していることが発見された。
  • 甲状腺ホルモンは熱処理で破壊されないので,ハンバーガーに調理して食べた人が甲状腺中毒症を来した(ハンバーガー甲状腺中毒症)。
  • 日本でも、原因は特定できなかったが、外因性甲状腺ホルモン摂取によると考えられた甲状腺中毒症の集団発生が報告されている





典型的症例概要
(1)インターフェロン製剤による例:40 歳代、男性
  • 8ヶ月前からB 型慢性肝炎に対してインターフェロンα 600 万単位週2回の投与を開始された。
    投与開始約5ヶ月後から体重減少、動悸、全身倦怠感が出現した。その頃はAST 26 IU/L、ALT 39 IU/L と肝機能は落ち着いていた。しかし、その1月後(投与開始6ヶ月後)AST 36 IU/L、ALT 61 IU/L と増悪し、FT316.8pg/mL、FT4 4.93ng/dL、TSH <0.01μU/mL と甲状腺中毒症が発症した。
    123I 甲状腺摂取率3 時間値 17%よりバセドウ病と診断された。インターフェロン製剤は中止となり、チアマゾール30mg/日、アテノロール25mg/日の内服が開始された。チアマゾール投与6週間後には、FT3 2.7pg/mL、FT4 0.58ng/dL、TSH 0.14μU/mL まで甲状腺機能は改善したが、AST 87 IU/L、ALT 209 IU/L と肝機能が悪化し、チアマゾールの副作用が疑われてチアマゾールを中止された。
    その後、AST 95 IU/L、ALT 200 IU/L と改善なく、B 型慢性肝炎の増悪と診断され、甲状腺専門病院を紹介された。
    紹介時、FT3 5.7pg/mL、FT4 0.89ng/dL、TSH 0.03μU/mL、TRAb 47.0%であった。131I 甲状腺摂取率24 時間値 62%、推定甲状腺重量43.2g と中等大の甲状腺腫を認めた。バセドウ病に対して、外来にて131I 13.5mCi (35gray)の放射線内用療法が施行された。

(2)アミオダロンによる例
  • 30 歳代、男性(図3)
    疾患名:拡張型心筋症、持続型心室頻拍
    現病歴:2年半前から、心不全や不整脈が頻発するようになり、20 ヶ月前からアミオダロンの内服を開始した。
    1ヶ月前から、頻脈、動悸、体動時呼吸困難、嘔気、嘔吐が出現した。食事摂取も困難となり6 月当院循環器内科に入院した。甲状腺ホルモン中毒症があり、TRAb、TSAb ともに陰性であることより、AIT−II 型と診断された。
    アミオダロンは中止せず、プレドニゾロン30mg/日の投与を開始した。
    プレドニゾロン開始後、T3、T4 共に減少した。しかし、プレドニゾロンの漸減を急ぎすぎるとT3、T4 が再上昇する傾向も認められた。併用投与薬は、フロセミド(40mg)1T、スピロノラクトン(25mg)2T、カンデサルタン(4mg)1T、ワルファリン(1mg)1.5/2T 隔日、硝酸イソソルビド徐放剤テープ 1枚、塩化カリウム徐放剤であった。



悪性眼球突出症」「甲状腺腫」「甲状腺機能亢進症」「バセドウ病 」「心悸亢進「動悸「多汗」ふるえる







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