狂牛病(5の5)ドクトルアウンの気になる健康情報会員登録
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1996年3/20、世界中に驚くべきニュースが流れた。イギリス政府が、ウシの病気である狂牛病が人間に感染する可能性があると発表したのである。狂牛病はウシの脳の神経細胞が冒され、脳がスポンジ状になって死亡する奇病。全身が異常に震えたり、歩行困難になるのが特徴だ。
しかし、狂牛病というが、この病気は元来、ヒツジの病気だったのである。ヒツジのスクレイピーという神経疾患が狂牛病のような症状を呈することは以前から知られていた。この病死したヒツジの脳や骨を砕いたものがイギリスではウシの飼料に使われており、そこからウシに狂牛病が感染したと考えられる。
そしてやはり狂牛病によく似た症状を示すクロイツフェルト・ヤコブ病という人間の脳の病気がある。この2年間に、今までとは違う特徴を持った患者が現れた。これまでクロイツフェルト。ヤコブ病の平均発症年齢は65歳と高齢であったのに対して、今回の発症例では18歳〜41歳と、考えられないほど若いのである。また、発病してから死ぬまで、の期間が従来型では平均4ヶ月であったのに、新型では1年と長いこと、クロイツフェルト・ヤコブ病の患者特有の脳波の異常が見られないことなどが今までの発症例と明らかに違うのだ。そして、この新型の患者の職業に畜産関係者が多かったことから、ひょっとすると狂牛病かにかかったウシから感染したにでは?と言われていたのである。
ちょっと待った!
ヒツジのスクレイピーかが牛に感染して狂牛病になり、その狂牛病が人間に感染するかもしれないなら、ヒツジから人間に感染してもおかしくはない。いや、ブタはどうだろう?ニワトリは?
ウシの狂牛病がヒツジから感染したのならエイズがHIVによって発病するのと同じように、ヒツジからウシへと移る何らかの病原体があったはずである。このナゾの病原体は何か?
つきとめられた病原体の正体が、今回の狂牛病のパニックにさらに拍車をかけることになった。
その病原体はプリオンという。このプリオンはただのタンパク質なのである。一般的に病気をひき起こす病原体にはウイルスや細菌などがあげられるが、プリオンにはこれらと決定的に違う点がある。国立予防衛生研究所ウイルス第1部の田代眞人部長はこう説明する。
ウイルスや細菌は微生物であり、遺伝子を必ず持っています。感染すると宿主の細胞の中で、自らの遺伝子の情報に則って、遺伝子の複製と遺伝子の発現(タンパク質合成)を起こして、自分と同じ子孫を増やしながら増殖していき、それが宿主を発病に至らせる。これに対して、プリオンは遺伝子を持っていない。当然、遺伝子の複製も行われないし、タンパクを合成して増殖をすることもありません。「プリオンの感染」とは、われわれが一般的に考えている感染とは全く違うものなのです。正しくは“感染”という言葉に当てはまりません
遺伝子を持たずに“感染”し、発病したら最後、必ず患者を死に至らしめる。しかもその実体はナゾだらけ。
<1>どうしてプリオンで病気になるの?
単なるタンパク質のプリオンで、どうして病気なんかになるのか?実はプリオンには正常型と異型があり、正常型は誰もが体内に持っているが、この異常型がくせ者。九州大学医学部の立石潤教授が説明する。
「正常型のプリオンはαヘリックス構造という立体構造、異常型のプリオンはβシート構造という層状をしていますが、これ以外に違いは有りません。この正常型と異常型のアミノ酸配列は全く同じ。それなのに、異常型のプリオンが体内に蓄積されて発病を引き起こすのです」
異常型のプリオンは体内に入ると、接した正常型を異常型に変えてしまう。
「プリオンを作り出す遺伝子を持たないようにしたマウスに異常型のプリオンを注射しても発病しません。正常型のプリオンが体内にあることが病気になるための必須条件なのです。ウイルスは自分自身の遺伝子で自己複製するため、宿主の体内に同じウイルスがあらかじめ存在する必要がありません。
でも、プリオンはタンパク質。注射されて直接、血液に入るのならともかく、食事で感染するのであるなら、消化酵素で分解されて、無害なアミノ酸になってしまうんじゃないだろうか?
<2>どうして分解されずに吸収されるの?
困ったことに、異常型のプリオンは正常型より小さくコンパクトにまとまった構造のため、丈夫で熱にも強く、トリプシンやプロテアーゼなどの消化酵素でも分解されない。逆に言うと、アミノ酸のように小さくならないから消化吸収できないはずである。ところが、現実には体内に取り込まれている。
「消化、吸収と考えるからわからなくなるんです。異常型のプリオンは消化酵素では分解されにくいため、小腸の柔突起で異物と判断されて免疫が働きます。異物を排除する為の免疫機構のはずが、結果的に外から入って来た異常型のプリオンを体内に取り入れる働きをしてしまうのです」と、東北大学医学部の北本哲之教授は語る。
小腸にあるパイエル板という免疫器官で、分解されていないプリオンを破壊するために、体内に取り込んでしまうのだ。しかし、パイエル板は異常型のプリオンを破壊することが出来ずに、乗っ取られてしまう。そのため、プリオンはリンパ節・脾臓・胸腺などの免疫機構に関わりのある臓器に蓄積されやすい。そして、リンパ液の循環で脳に運ばれ、神経疾患が引き起こすことになる。
<3>どうして脳だけがおかされるのか?
このナゾを解き明かすカギは脳の神経細胞の特異性にある。
「脳の神経細胞は新しく作られることはない。いったん蓄積され始めると溜まっていくしかありません」(立石教授)
筋ジストロフィーやアルツハイマー病などの遺伝子の研究を行っている東京大学分子細胞生物研究所の石浦章一助教授も、「筋肉に空地が出来る病気で、異常部位を調べてみたところ、プリオンが蓄積していた、という例もあるにはあります。しかし、その場合、プリオンだけでなく、ほかにもいろいろな物質が関係しており、一口にプリオンが原因だと言えないのです」と語る。
<4>どうして潜伏期間が長くなるの?
プリオン病が不思議なのは発病に至るまでに非常に長い期間を要すること。
「連鎖的に正常型のプリオンが異常型になるとはいえ、細胞を破壊するほどの量に蓄積されるまでには相当時間がかかります。最低でも1年、長いものになると10年以上の潜伏期間になるんです」(立石教授)
「プリオンが神経細胞内に蓄積するとシナプスにダメージを与え、比較的早く発病する。でも、神経細胞以外に蓄積するものもある。これだと発病までに何十年も罹るんです」(北本教授)
<5>どうして脳がスポンジ状になるの?
狂牛病のウシ、スクレイピーのヒツジ、クロイツフェルト・ヤコブ病の患者の脳に共通した特徴は、いたるところに空腔ができてシポンジ状になり、しかも脳全体が萎縮している点である。このような特徴を示す脳の病気は他にはほとんど見られない。プリオン病特有の特徴なのだ。
「確かに、こんな症状を呈する脳の病気は、“プリオン病”以外にはほとんどありません。逆に言うと、この特徴があればまず“プリオン病”とみて間違いない」(石浦助教授)
異常型のプリオンが神経細胞に蓄積していくと、まず神経細胞の末端のシナプスが破壊される。プリオンが結合しただけでシナプスは正常な状態を維持できなくなるのだ。次ぎに、神経細胞そのものも死んでいく。死んだ後はその部分が脳組織の中で空腔になるため、病状が進んでいくとスポンジのように穴だらけになっていく。初期の段階では空腔になった部分にアストログリアという神経を支持する細胞が入るのだが、症状が進んで穴が大きくなると、アストログリアでは支えきれなくなり、脳が萎縮したようになる。
<6>プリオン病がいろいろあるのはなぜ?
“プリオン病”と呼ばれる病気はいくつかある。痴呆や睡眠障害と伴うものであるが、基本的な症状はすべて神経失調だ。種類の違いの原因はプリオンの構造の微妙な変化による。アミノ酸配列などがわずかに異なるため、症状の現れ方も違ってくるのである。
例えば、遺伝性の“プリオン病”であるゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病の患者の遺伝では、プリオンのアミノ酸配列を決定する102番目のコドンが異常であるとされている。そのため、通常とは異なるプリオンが作られてしまうのだ。今回話題になったクロイツフェルト・ヤコブ病もパプアニューギニアの高地民族、フォア族の間で蔓延していたクールーも遺伝性の致死性家族性不眠症も、それぞれアミノ酸配列の異なるプリオンによって引き起こされている。
<7>本当にウシから感染するの?
プリオン病の異種感染を生きた人間で検証することは出来ない。そこで、遺伝子操作を施したマウスで確かめる実験が行われている。
(1)正常型のマウスのプリオンを持っているマウスに、マウスの異常型プリオンを注射すると、→(発症する)。
(2)正常型のマウスのプリオンを持っていないマウスに、マウスの異常型プリオンを注射すると、→(発症せず)
(3)マウス型プリオンと人型プリオンを持っているマウスに、マウスの異常型プリオンを注射すると、→(発症する)
(4)マウス型プリオンと人型プリオンを持っているマウスに、人型の異常型プリオンを注射すると、→(発症せず)
(5)人型の異常プリオンだけを持っているマウスに、人型の異常型プリオンを注射すると、→(発症ずる)
以上の実験から、プリオン以外の何が別の物質が関わっているのではないかという仮説がクローズアップされるようになった
(Quark1996年7月号p113〜
人に
感染
正式名称は『ウシ海綿状脳症』。英国で1986年に発見された。92年の37000頭をピークに、これまで約16万頭が感染。英国以外でも、欧州を中心に約400万頭の感染が報告されている。
 人間の
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は、脳の病気で狂牛病と症状が似ている。「プリオン」というタンパク質が共通の病原物質とされるが、何が媒介するのかは不明。手足がしびれたり、記憶がなくなったりする症状が出た後、痴呆状態となり、発病すると2年以内に90%が死ぬ。年間に最高で約50人が死亡感染から発病までの潜伏期間は5〜15年
タンパクが
病原に変身
「体内にもともとあるプリオンタンパク質がプリオンに変身することが病気の引き金に成っている。牛の場合はこれが狂牛病であり、羊ではスクレイピー、人間では100万人に1人の割合で発生するクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)だ。








狂牛病の病原体とされる「プリオン」と、人間のクロツフェルト・ヤコブ病を引き起こすプリオンとが、遺伝的によく似た構造を持つことを英オックスフォード大学の研究グループが発見した。人間とウシの間には遺伝的な「種の壁」があり、病気の感染は起きにくいとされるが、この研究成果は狂牛病が種の壁を乗り越えて人間に感染し得ることを証明する有力な手掛かりになりそうだ。
この発見はオッックスフォード大学のデビット・クラッカワー博士らによるもので、25日発売の英科学雑誌「ネイチャー」に公表する
同博士らはウシと人間の双方について、病原プリオンの設計図といえる遺伝子をとらえ、両者の間に極めてよく似た構造があるのを突き止めた。このような類似構造が生じるのは、遺伝子が10000回突然変異を繰り返しても1回あるかないかという珍しさだと言う。
羊にも狂牛病とよく似た「スクレイピー」という病気があるが、羊の病原体遺伝子と人間の場合とは違いかなりの差があることが分かった
「異常プリオン」を
酵素で分解
●納豆菌の一種から発見。約40℃で1時間で分解。動物衛生研究所
●放線菌の一種から発見。37℃で30分間で分解。鹿児島大の研究班「BSE対策プロジェクト」
脳・腸
食べるのは
危険
94年から95年にかけて、英国で16歳〜39歳という若い人10人がCJDを発病したことが分かった。」
「狂牛病のウシの全部が危ない訳ではない。ネズミに食べさせて試してみると、危ないのは脳・脊髄・脾臓・リンパ節・腸などで、筋肉・心臓・牛乳などは安全とされている。しかし、英国は89年に脳などを人・家畜の食物とするのを禁止する前には、脳は「肉」として扱われていた。
ウシに感染して狂牛病を起こすのは細菌でもウイルスでもなくプリオンというタンパク質と見られている。これは熱・薬品に強く、ホルマリン漬けの脳標本でもネズミに食べさせれば発病する。料理の熱程度ではだめだ。医師など専門家は、タンパク変性剤や高温高圧の蒸気殺菌などで消毒している
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