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薬剤性すい炎



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膵炎

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薬剤性膵炎(急性膵炎)   (厚生労働省
英語名:Drug-induced pancreatitis/ Acute pancreatitis
  • 膵臓に炎症を起こす急性膵炎は、抗てんかん薬、免疫抑制薬、抗原虫薬(トリコモナス症治療薬)などでみられるので、何らかのお薬を服用していて、次のような症状がみられた場合には、放置せずに、ただちに医師・薬剤師に連絡してください。
    • 「急に胃のあたりがひどく痛む」、
    • 「吐き気」、
    • おう吐」がみられる。
    • お腹の痛みはのけぞると強くなり、かがむと弱くなる

急性膵炎とは?
  • 急性膵炎は、膵臓に炎症を起こす病気です。
  • お腹の上の部分に強い痛みを生じ、悪心おう吐を伴います
  • 抗てんかん薬、免疫抑制薬、抗原虫薬(トリコモナス症治療薬)などの医薬品の服用やアルコール過剰摂取などによって起こることもあります。
  • お腹の痛みはのけぞると強くなり、かがむと弱くなります。




早期発見と早期対応のポイント
(1)副作用の好発時期
  • 治療目的で投与された薬剤が原因で生じた膵炎は薬剤性膵炎(drug-induced pancreatitis)と呼ばれる。広義(薬物性膵障害)には自殺目的にて服用された薬剤および薬物、アルコール過飲による膵炎も含まれるが、後者はアルコール性膵炎として扱うのが一般的である。薬剤性膵炎は急性膵炎としての臨床像を呈し、慢性膵炎への移行は見られない。多くは軽症で予後は良好であるが、重症化し死亡する例もあり注意を要する。
    薬剤性膵炎の好発時期は膵炎の発症機序(後述)に関連し、個々の薬剤により様々である。
  • 一般に薬剤固有の毒性による膵炎は短時間(24 時間以内)に発症する。
  • しかし、薬剤の毒性による膵炎発症の臨床事例はほとんどない。
  • 薬剤毒性が直接の原因ではないが、投与後短期に膵炎を発症した事例のある薬剤として、コデイン、アセトアミノフェン、エリスロマイシンがある。
  • コデインによる膵炎はチャレンジテスト陽性で、投与1〜3 時間後に発症した3 症例が報告されている。他の2剤は臨床適応量以上の高用量が投与されており、膵炎との因果関係も不明である。
    一方、多くの薬剤性膵炎の発症機序として、薬物に対する患者側のアレルギー反応が想定されている。膵炎の発症は投与後1〜6 週で、30 日以内に発症することが多い。また、再投与の場合、短期間(1〜3 日)で発症することもアレルギー機序を示唆する。膵炎との関連が確実な薬剤として、アザチオプリン、メルカプトプリン(6-MP)、メサラジン(5-ASA)、メトロニダゾールなどがある。詳細は不明であるが、薬剤の代謝産物の蓄積と個体側の感受性が発症に関与する薬剤性膵炎があり、投与から発症まで数週間から数ヶ月、時には1年以上の期間を要する。再投与から発症まで期間も数週間から数ヶ月と長く、膵炎の原因検索に際し注意が必要である。
    比較的頻度が高い薬剤としてバルプロ酸ナトリウムがある。



(2)患者側のリスク因子
  • 薬剤性膵炎に男女差、好発年齢はみられない。スウェーデンのケースコントロールスタディにおいて薬剤性膵炎を発症しやすい患者側のリスクとして有意差があった項目は、消化器系疾患の既往(相対危険度:1.5、95%信頼区間:1.1-1.9)、炎症性腸疾患(同3.4、1.5-7.9)、喫煙(同1.7、1.2-2.1)、特に1日20本以上の喫煙(同4.0、2.2-7.5)、1週間に420 g 以上のアルコール摂取(同4.1、2.2-7.5)であった。
  • 一般に、多くの薬剤を重複投与されることの多い症例、すなわち、高齢者、担癌患者、難病患者では薬剤性膵炎の発症リスクが重積する可能性が高く、注意が必要である。
  • 例えば、5-ASA 製剤であるメサラジンは一般にスルファサラジンよりも副作用は低いと考えられているが、リウマチ患者や炎症性腸疾患では、膵炎を起こすリスクがスルファサラジンよりも7倍程度高くなる可能性が報告されている。また、免疫調整剤であるアザチオプリンや6−メルカプトプリンなどにより誘発される膵炎は、クローン病患者のほうが潰瘍性大腸炎患者よりも、発症リスクは高くなる報告がある。
    その他、固有の薬剤に関連した患者側のリスクとして、コデインによる膵炎症例はすべて胆石症のため胆嚢が摘出されていた。胆嚢摘出のために胆管内圧が上昇しやすく、コデインによる十二指腸乳頭括約筋収縮作用と連関して膵炎が発症すると考えられている。
  • 我が国で多いヘリコバクターピロリ感染患者にメトロニダゾールを用いた除菌を行うと膵炎発症リスクが高くなる報告もある6)。膵炎発症との因果関係は不明であるが、想定される膵炎発症機序より、高トリグリセリド血症素因のある症例ではエストロゲンにより、副甲状腺機能亢進症、担癌患者などの高カルシウム血症素因のある症例ではチアジド系利尿薬により膵炎が誘発される可能性がある。



(3)投薬上のリスク因子
  • アルコールやエチオニン(動物実験における膵炎惹起物質)など、薬物固有の毒性による膵炎では投与量が多く投与期間が長いほど発症しやすいが(用量依存性)、上記のごとく臨床的に因果関係の証明された薬剤はない。多くの薬剤性膵炎は薬剤に対する特異体質が原因であり、用量依存性はみられない。代謝産物の蓄積と過敏反応が原因とされるバルプロ酸ナトリウムの場合も用量依存性はなく、血中薬物濃度と膵炎発症との相関もみられない。
  • なお、バルプロ酸ナトリウムによる膵炎は同じ抗てんかん薬であるトピラマートの併用で増悪されるとの報告がある。
  • また、異なるHMG-CoA 還元酵素阻害薬で膵炎を反復した症例があり、同じクラスの薬剤に共通して感受性を示し膵炎を発症する可能性が指摘されている。



(4)患者もしくは家族等(医療関係者)が早期に認識しうる症状
  • 典型例では、薬剤投与開始後ないし一定期間後に、通常の急性膵炎と同様に上腹部に急性腹痛発作と圧痛を認める。痛みは背部に放散することが多い。
  • しかし、吐き気、嘔吐、軽度の腹痛などの一般的な薬剤性の消化管障害による自覚症状と類似して発症する例では、薬剤性膵炎の診断がつきにくい。
    また、通常のアレルギー反応でみられる発疹やリンパ節腫脹を伴うことはまれである



(5)早期発見に必要な検査と実施時期
  • 薬剤服用中に強い腹痛を認めた場合は、血中あるいは尿中の膵酵素(一般的にアミラーゼを測定することが多いが、膵特異性の高いリパーゼや膵型アミラーゼの測定が望ましい)を測定し、早期に診断する必要がある。その後、急性膵炎が疑われたら、腹部超音波検査(US)、CT あるいはMRI で膵に急性膵炎を示唆する所見があるか否かを調べる必要がある。
    化学療法などにおいて、薬剤性膵炎との関連性の強い薬剤を用いる時には、薬剤投与後から定期的に血中膵酵素をチェックする事により、薬剤性膵炎の早期発見と早期治療の開始が可能となり、治療の中断を回避できる可能性がある







副作用の概要
  • 薬剤による急性膵炎の症状、臨床経過は他の原因による急性膵炎と差異はない。一方、転帰に関しては薬剤中止により軽快しうる点が大きく異なる。多くは腹膜刺激症状を伴う上腹部痛を呈し、背部に放散することが多く、重症膵炎の報告例もある。機序については、すべてについて明らかになっているわけではない。再発予防のためには、同一薬だけでなく、類似構造をもつ薬剤の投与は避けることが重要である。
    薬剤性膵炎は他の成因の膵炎と同様の所見を呈し、詳細については、以下のとおりである。
<1>自覚症状
  • 上腹部の激痛発作で発症し、悪心嘔吐を伴うことが多い。
  • 痛みは、背部に放散することが多い。
  • 腹痛は背臥位で増強し、前屈位で軽減するが、鎮痛薬では一般に軽減しにくい。


<2>他覚症状
  • 上腹部に圧痛を認めることが多いが、炎症が腹腔内に波及すると圧痛範囲の増大と腹膜炎のときに見られる腹膜刺激症状(腹壁の緊張が高まり板のように堅くなる筋性防御や腹壁を圧迫して急に手を離すと腹痛が著しくなる反跳痛など)の出現がみられる。
  • 炎症の波及により腸運動が減弱すると、腹部膨満や鼓腸がみられ、腸雑音が減弱ないし消失する。
  • 発熱や黄疸を伴うこともある。
  • 重症化して多臓器障害を伴うと、
    • ショック(収縮期血圧80 mgHg 以下)、
    • 呼吸困難(人工呼吸器を必要とすることもある)、
    • 神経症状(中枢神経症状で意識障害を伴う)、
    • 出血傾向(消化管出血、腹腔内出血(Grey Turner 徴候:側腹部、Cullen 徴候:臍周囲))
    • 腎不全
    を呈することがある


<3>臨床検査値
  • 血中あるいは尿中の膵酵素の上昇を認める。
  • 最も普及され迅速に測定可能な血中アミラーゼを測定することが多いが、膵特異性の高いリパーゼや膵型アミラーゼの血中値の測定が望ましい。
    急性膵炎と診断されたら、速やかに重症度を判定する


<4>画像検査所見
  • 急性膵炎が疑われる場合には、まず胸・腹部単純エックス線撮影を行う。
  • 腹部単純エックス線では、イレウス像、左上腹部の局所的な小腸拡張像(sentinel loop sign)、十二指腸ループの拡張・ガス貯留像、右側結腸の限局性ガス貯留像(colon cut-off sign)、後腹膜ガス像などを認める。
  • 胸部単純エックス線所見としては、胸水貯留像、ARDS(acute respiratory distress syndrome)、肺炎像などがある。
    急性膵炎が疑われる場合の腹部検査としては、まずUS が施行される。膵腫大や膵周囲の炎症性変化を捉えることが可能であるが、腹痛や腸管内に貯留したガスにより情報が十分に得られないことがある。
    腹部CT は、消化管ガスや腹壁・腹腔内の脂肪組織の影響を受けることなく、客観的な局所画像を描出することが可能である。急性膵炎では、膵腫大、膵周囲の炎症性変化、液体貯留、膵実質のdensityの不均一化などを認める(図1)。膵壊死の有無やその範囲、炎症の膵外への拡がりは重症度および予後と関連するため、膵壊死およびその範囲の正確な評価には腹部造影CT 検査が有用である。
  • 膵腫大と膵周囲への炎症の波及を認める。膵実質は均一に造影されている。


<5>病理所見
  • 通常の急性膵炎と同様に、初期の膵病変は浮腫性膵炎と壊死性膵炎に分類される。
  • 浮腫性膵炎では膵の間質の浮腫が主体で出血や壊死を認めないが、壊死性膵炎では膵実質に出血壊死を認める。膵周囲には浸出液貯留を認める。数週間後には、膵液や壊死組織の融解物を含み線維性の壁で囲まれた膵仮性嚢胞や膿が貯留した膵膿瘍等が出現することがある。
  • 壊死膵に細菌感染を合併すると感染性膵壊死となり、敗血症の原因となる。







表1.急性膵炎の重症度判定基準
(厚生労働省平成19 年度改訂)
  • 予後因子
    1. BE ≦ -3mEq/Lまたはショック(収縮期血圧 < 80mmHg)
    2. PaO2 ≦ 60mmHg(room air)または呼吸不全(人工呼吸が必要)
    3. BUN ≧ 40mg/dl(またはCr ≧ 2.0mg/dl)または乏尿
      • (輸液後も一日尿量が400ml以下)
    4. LDH ≧ 基準値上限の2倍
    5. 血小板数 ≦ 10万/mm3
    6. Ca ≦ 7.5mg/dl
    7. CRP ≧ 15mg/dl
    8. SIRS診断基準における陽性項目数 ≧ 3
    9. 年齢 ≧ 70歳
  • SIRS診断基準項目
    • (1)体温>38℃あるいは<36℃
    • (2)脈拍>90回/分
    • (3)呼吸数>20回/分あるいはPaCO2<32torr
    • (4)白血球数>12,000/ mm3 か<4,000 / mm3または10%幼若球出現
予後因子は各1点とする。スコア2点以下は軽症、3点以上を重症とする。
また、造影CT Grade ≧ 2であれば、スコアにかかわらず重症とする。
(厚生労働省難治性膵疾患調査研究班)


重症度判定基準の予後因子に認められる血中BE の低下、PaO2 の低下、BUN やクレアチニンの上昇、LDH の上昇、血小板数の低下、総カルシウム値の低下、CRP の上昇、白血球数の上昇ないし低下に加えて、肝・胆道系酵素の上昇や総ビリルビン値の上昇を認めることがある。






発症機序
  • 発症機序には薬剤固有の毒性、投与された個体側の感受性が関与する(表2)。薬剤固有の毒性による膵炎では投与された個体間で発症に差はみられず、投与量が多い程ほど発症しやすい(用量依存性)。薬剤投与から膵炎発症までの期間は様々であるが、比較的短期間で発症することが多い。また、アルコールやエチオニンなど、実験動物で再現が可能である。
    一方、投与された個体側の特異体質が原因で生じる膵炎の多くはアレルギー機序によるもので、薬剤あるいはその代謝産物が高分子化合物と結合することで抗原性を獲得し免疫応答を惹起する。発症には個人差があり、用量非依存性である。投与から1 ヶ月以内に発症することが多い。一方、投与から比較的長時間を経て発症する薬剤性膵炎がある。発症に個人差があることより、薬剤の代謝産物に対する個体側の感受性が重要と考えられているが、病態は明らかではない。
    薬剤性膵炎の病態については不明な点が多く、上記のメカニズムや基礎疾患の病態が複雑に関連し発症すると考えられる。






医薬品ごとの特徴
  • 薬剤と膵炎との因果関係を示す4 つの要件をふまえ、3 つのカテゴリーに分類する(表3)
  • これまで、膵炎誘発の可能性のある100〜120 種類の薬剤が報告されている。このうち、表3 に示した4 つの要件をすべて満たす薬剤(definite association)は表4の19 種類であり、我が国で販売されているのは、そのうち17 種類である。膵炎報告例の多い薬剤、あるいは臨床的に重要な薬剤について以下に概説する。






表3 薬剤を膵炎の原因とする要件と分類
  • @当該薬剤の投与中に膵炎を発症
    A他に膵炎の原因がみられない
    B薬剤の中止で膵炎が軽快(dechallenge)
  • C薬剤の再投与で膵炎が再燃(rechallenge)
  1. 膵炎との関連が確実な薬剤(definite association):
    • 上記の4つの要件をすべて満たす場合。
  2. 膵炎との関連が疑われる薬剤(probable association):
    • 上記の
      @ - B の要件は満たすが、薬剤の再投与で膵炎が再燃(rechallenge)したエビデンスのない場合、あるいは複数の症例報告のある場合。
  3. 膵炎との関連が不確かな薬剤(possible association):
    • 薬剤と膵炎発症との因果関係についてのエビデンスが不充分で、コンセンサスの得られていない場合。




表4 膵炎に関連した薬剤(日本で発売中の薬剤のみ掲載)
薬効別 膵炎との関連が確実な薬剤
(definite association)
膵炎との関連が
疑われる薬剤
(probableassociation)
膵炎との関連が
不確かな薬剤
(possibleassociation)
精神神経用薬 バルプロ酸ナトリウム
(抗てんかん薬)
コデイン(麻薬性鎮咳薬)
カルバマゼピン
(抗てんかん薬)
エルゴタミン
(片頭痛薬)
消化器官用
サラゾスルファピリジン(SASP)
メサラジン(5-ASA)
シメチジン
(ヒスタミンH2 拮抗薬)
ラニチジン
(ヒスタミンH2 拮抗薬)
オメプラゾール(PPI)
オクトレオチド
(ソマトスタチンアナログ)
免疫抑制薬
/抗悪性腫
瘍薬
アザチオプリン
メルカプトプリン(6-MP)
L-アスパラギナーゼ
シクロスポリン
メシル酸イマチニブ
インフリキシマブ
タクロリムス(FK506)
シスプラチン
シタラビン(Ara-C)
ホルモン剤 エストロゲン 副腎皮質ステロイド薬
痛風治療薬
抗リウマチ

非ステロイ
ド性抗炎症
薬/鎮痛解
熱薬
スリンダク(NSAIDs) サリチル酸(NSAIDs) アセトアミノフェン
コルヒチン
金製剤
インドメタシン
(NSAIDs)
ケトプロフェン
(NSAIDs)
メフェナム酸
(NSAIDs)
ピロキシカム
(NSAIDs)
高脂血症治
療用薬
シンバスタチン
プラバスタチン
ベザフィブレート
(フィブラート系薬)
ロスバスタチン
アトルバスタチン
フルバスタチン
フェノフィブラート
(フィブラート系薬)
抗菌薬/抗
真菌薬/抗
原虫薬
メトロニダゾール
(抗トリコモナス薬)
テトラサイクリン
ペンタミジン
(抗カリニ肺炎薬)
アンピシリン
イソニアジド(INH)
(抗結核薬)
エリスロマイシン
ロキシスロマイシン
リファンピシン
(抗結核薬)
心血管系用
フロセミド(利尿薬)
サイアザイド系薬(利尿薬)
クロルタリドン(利尿薬)
エタクリン酸(利尿薬)
メチルドパ
アミオダロン
(抗不整脈薬)
エナラプリル
(ACE 阻害薬)
リシノプリル
(ACE 阻害薬)
プロカインアミド
(抗不整脈薬)
抗ウイルス
ジダノシン
ラミブジン
ペグインターフェロン-α- 2b
サニルブジン(スタブジン) エファビレンツ
その他 カルシウム製剤



表5 WHO に報告された薬剤性膵炎(1968-2001 年)
534 例:バルプロ酸ナトリウム(抗てんかん薬
304 例:ジダノシン(抗HIV 薬)
201 例:メサラジン(5-ASA )(炎症性腸疾患治療薬)
194 例:アザチオプリン(免疫抑制薬)
190 例:エナラプリル(ACE 阻害薬)
167 例:サニルブジン(抗HIV 薬)
133 例:アトルバスタチン(HMG-CoA 還元酵素阻害薬)
126 例:シンバスタチン(HMG-CoA 還元酵素阻害薬)
110 例:カプトプリル(ACE 阻害薬)
107 例シメチジン(ヒスタミンH2 拮抗薬)




@抗てんかん薬
  • バルプロ酸ナトリウムカルバマゼピン による薬剤性膵炎が報告されている。中でもバルプロ酸は報告例の最も多い薬剤である(表5)
  • 大規模コントロールスタディにより、90 日以内にバルプロ酸ナトリウムを使用した症例における膵炎の発症リスクは1.9(95%信頼区間:1.1-3.3)、91 日から1 年以内に使用した症例では2.6(同:0.8-8.7)と報告されている。また他の報告では1 年間バルプロ酸ナトリウムを服用した患者の膵炎発症リスクは2.4(同1.5-4.5)であった。一方、バルプロ酸ナトリウムの投与例における膵炎の発症は0.003-0.7%であり、投与例における発症頻度はそれ程高くない。発症機序として薬剤の代謝産物に対する過敏反応が原因と推定されている。
  • バルプロ酸ナトリウム投与で副作用を示した症例ではglutathione peroxidase とセレニウムが低下することが示されており、抗酸化作用が低下した結果、フリーラジカルが直接膵細胞膜を障害すると推察される。
  • また、ラット、マウス、犬を用いた毒性実験では、用量依存性に膵腺房細胞の空胞変性、間質への細胞浸潤、小葉の萎縮をきたすことが証明されている。投与から発症までの期間が3〜6 ヶ月、まれには1 年以上と長く、膵炎の原因検索に際し注意が必要である。再投与後の発症も3 週から6 ヶ月を要する。ただし、用量依存性はなく、血中薬剤濃度と膵炎発症との相関はない。バルプロ酸ナトリウムによる膵炎のほぼ半数は重症であり、壊死性膵炎や死亡例の報告もある。

A炎症性腸疾患治療薬
  • サラゾスルファピリジン(スルファサラジン:SASP)、メサラジン(5-ASA)の投与例で急性膵炎の報告がある2,15)。治療に関係なく炎症性腸疾患には膵炎の合併がみられるが、両薬剤ともチャレンジテスト陽性のエビデンスがあり、薬剤性膵炎の原因と考えられる。特にメサラジンによる膵炎の報告が多く15)、経口および注腸投与とも膵炎をきたす2)。投与から膵炎発症までの期間は30 日以内のことが多い2)。単因子解析ではあるが90 日以内にメサラジンの投与を受けた患者の膵炎発症リスクは9.0(95%信頼区間:1.8-44.6)との報告もあ

B抗潰瘍薬
  • ヒスタミンH2 拮抗薬、特にシメチジンによる急性膵炎の報告例が多いが、原因薬剤としての確証は得られていない2)。一方、オメプラゾールでチャレンジテスト陽性の報告例がある24)。
  • 83 歳、男性で、投与2 ヶ月後に仮性嚢胞を伴う膵炎を発症し、経過以後に再投与2日目で膵炎を再発している。しかし、胆嚢摘出の既往があり、膵炎の原因となる胆管結石の有無についての記載がなく、膵炎発症との因果関係は不明である。
    大規模ケースコントロールスタディでの多変量解析の結果、急性膵炎の相対危険度はヒスタミンH2 拮抗薬で2.4(95%信頼区間:1.2-4.8)、プロトンポンプインヒビターで2.1(同:1.2-3.4)であった3)。一方、後ろ向きコホート研究による膵炎のリスクはラニチジンで1.3(同:0.4-4.1)、シメチジンで2.1(同:0.6-7.2)、オメプラゾールで1.1(同:0.3-4.6)と明らかな因果関係を証明できなかっ

C免疫抑制薬・抗悪性腫瘍薬
  • アザチオプリンはチャレンジテスト陽性の報告例が最も多い薬剤である。また、メルカプトプリン(6-MP)にもチャレンジテスト陽性の報告がある。薬剤に対する過敏反応が原因で、投与後、数週内に膵炎を発症する。急性膵炎の臨床像は軽症であることが多い。
    白血病治療薬であるL-アスパラギナーゼ投与例で急性膵炎の合併が報告されている。L-アスパラギナーゼは細胞内での蛋白合成を阻害し、膵腺房細胞障害をきたす。投与例の8〜18%に膵炎を合併し、死亡率も1.8〜4.6%と高い。倫理上の問題によりチャレンジテストの報告はないが、高い膵炎の合併率より薬剤性膵炎の原因薬剤と考えられる。
    メシル酸イマチニブを投与された消化管間葉系腫瘍74 例中1 例(1.4%)、血液系腫瘍80 例中2 例(3%)に急性膵炎がみられたとの報告がある。また、潰瘍性大腸炎症例においてシクロスポリンによる重症急性膵炎の報告26)、移植症例においてタクロリムス(FK506)による急性膵炎の複数の報告がある27)。タクロリムスについては関節リウマチにおける大規模調査(n=896)で膵炎は2 例(0.2%)に見られた28)。関節リウマチやクローン病に対しインフリキシマブ(遺伝子組換え)を使用し急性膵炎を来たした症例も報告されている。
    これらの薬剤はチャレンジテストのエビデンスに乏しく、適応となる疾患に対し多くの薬剤が使用されていることより、当該薬剤と膵炎発症との因果関係は不明である。

Dステロイド薬
  • ステロイド薬は古くより膵炎の原因薬剤として報告されてきた。
    チャレンジテスト陽性の報告も2 例ある。投与量の増加に従い膵液の濃縮や膵管上皮の増殖が起こり、相対的な膵管閉塞機転が生じた結果、膵炎が発症すると考えられている。しかし、ステロイド薬は臨床的に重要な疾患に対し他剤との併用で用いられるため、基礎疾患や併用薬剤の関与が否定できないことが多い。
  • ステロイド誘発膵炎の動物実験も報告されているが、再現性に問題がある。
    また、急性膵炎に対しステロイド薬が奏効するという逆説的な報告もあり、現在ではステロイド薬と膵炎発症との関連については否定的な意見が多い。

Eエストロゲン
  • エストロゲンは素因のある個体において高トリグリセリド血症を誘発し、急性膵炎を発症する。高トリグリセリド血症による膵炎発症機序として、凝集した血清脂質粒子による膵臓の血管塞栓→膵リパーゼによるカイロミクロンの分解→大量の脂肪酸の遊離→膵腺房細胞の破壊が想定されている。
  • なお、高トリグリセリド血症では測定系への干渉により、アミラーゼ値が上昇しないことがあり注意を要する。

F高脂血症治療薬
  • 多くのHMG-CoA 還元酵素阻害薬において薬剤性膵炎の報告がある。
    詳細な報告例は少ないが、シンバスタチン、プラバスタチンではチャレンジテストの陽性例も確認されている。その他、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチンなど、すべてのHMG-CoA還元酵素阻害薬で膵炎の報告がみられる。アトルバスタチン投与後に発症した膵炎の軽快後、ロスバスタチン投与により膵炎を再発した症例が報告されており、HMG-CoA 還元酵素阻害薬に共通して感受性を示し膵炎を誘発する可能性が呈示されている。投与から発症までの期間は2〜8 ヶ月と比較的長い症例が多いが、4〜7 日と短期間で膵炎を発症した症例もある。多くは軽症の膵炎で終息するが、死亡例の報告もある。一方、フィブラート系の薬剤の中では、ベザフィブラートの投与により3 度膵炎を繰り返した症例が報告されてい

G利尿薬
  • 古くよりチアジド系薬剤、フロセミド投与例における急性膵炎の報告があるが、膵炎発症との因果関係について確証はない。チアジド系薬剤はカルシウムの再吸収促進により高カルシウム血症をきたし、膵炎を発症すると考えられている。

HACE阻害剤
  • WHO の集計ではACE 阻害薬による急性膵炎の報告が多いが(表5)、チャレンジテストにより因果関係を確認した報告はない。エナラプリルでは膵臓の血管性浮腫を誘発する可能性が指摘されているが、膵炎発症機序も不明である。

I抗HIV 薬
  • HIV 罹患者数の増加に伴い、日本でも2000 年以降HIV 治療薬による膵炎の報告が相次ぎ、過去10 年間の薬剤性膵炎の報告件数の上位10 薬剤中4 薬剤を占めている。抗HIV 薬であるジダノシンで治療されたHIV 陽性患者の3〜23%に急性膵炎を発症する。膵炎発症は用量依存性で、多くはチャレンジテスト陽性である。また、ジダノシンとサニルブジン(海外ではスタブジン)の併用で膵炎発症のリスクが増加することが報告されている。なお、大規模な症例対照研究では、上記の2 剤以外、特に新しいHIV 治療薬と膵炎との関連は認められていない。
    B 型肝炎においてラミブジンによる急性膵炎の報告があり、チャレンジテスト陽性例もある44)。また、C 型肝炎に対し投与されたインターフェロン-αあるいはペグインターフェロン-α2b による急性膵炎が13 例報告されており、このうちの2 例はチャレンジテスト陽性である15,45)。なお、インターフェロン製剤と併用されることの多いリバビリンと膵炎の関連は否定的である。

Jコデイン
  • 胆嚢摘出後の症例でコデイン投与1〜3 時間後に発症した膵炎の4例が報告されている。このうち3 例はチャレンジテスト陽性である。コデインは十二指腸乳頭括約筋の急峻(投与後5 分以内)で一過性(約2時間)の収縮を誘発することより、投与後の膵管内圧の上昇が膵炎発症機序として想定されている1)。




副作用発現頻度
  • 個々の副作用報告は独立行政法人医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページ(http://www.info.pmda.go.jp/)に掲載されている。最近10 年間(1998 年度〜2007 年度)において、我が国で報告された薬剤によると考えられる急性膵炎・膵炎の報告総数は1,432 例であった。6 例以上の報告のあった比較的頻度の多い薬剤の一覧を表6に示す。L-アスパラギナーゼが84 例と最も多く、
    以下メサラジン50 例、タクロリムス46 例、サニルブジン45 例、バルプロ酸ナトリウム41 例、シクロスポリン38 例、エファビレンツ33 例、プレドニゾロン32 例、ジダノシン31 例、ラミブジン31 例の順に続く。また、最近3年間(2005 年〜2007 年)では、2005 年度には92 例(急性膵炎64 例、膵炎28 例)、2006 年度には69 例(急性膵炎40 例、膵炎29 例)、2007 年度には92 例(急性膵炎64 例、膵炎28 例)の合計253 例の報告があるが、最近、特に頻度が増加しているといった傾向は認められていない。
副作用の判別基準(判別方法)
  • 薬剤性膵炎は基礎疾患との関係もあり、多剤併用例が多く、特定の薬剤との因果関係の立証は難しいことが多い。また、薬剤性膵炎では、その発症頻度が低いこと、さらに発症機序、用量などとの関係が十分に解明されていないことが多く、診断確定はしばしば困難である。
    表の4 項目を満たせば当該薬剤による膵炎と診断する。表3、@〜Bの3 項目を満たすが、チャレンジテストが未施行な場合は、因果関係を確定する(definit)に至らず疑われる薬剤と位置づける
    しかし、薬剤投与から膵炎発症までの期間が文献上一定している薬剤の投与において、それに合致する期間後に膵炎が発症した場合、薬剤性膵炎の可能性が高くなる。偶然の再投与を除き、膵炎を惹起した疑いのある薬剤を再投与することは、倫理上問題がある。基礎疾患に代替する薬剤がない場合は、十分なインフォームド・コンセントを収得した上で、薬剤を再投与して厳重な経過観察を行う。
判別が必要な疾患と判別方法
  • 急性膵炎の診断に関しては、急性腹症として発症することが多いので、消化管穿孔、汎発性腹膜炎、急性胆嚢炎、急性上腸管膜動脈閉塞症、絞扼性イレウスなどの消化器疾患および急性心筋梗塞(特に下壁梗塞)や解離性大動脈瘤などの循環器疾患との鑑別が必要である。血中膵酵素の測定とUS、CT などの画像診断が鑑別に有用であるが、血中アミラーゼの上昇は穿孔性腹膜炎や絞扼性イレウスでも上昇する一方、急性膵炎でも測定時に上昇しない例があるので注意が必要である。腹痛が軽度で、吐き気、嘔吐などの自覚症状のみの例では、一般的な薬剤性の消化管障害の症状と類似し、薬剤性膵炎の診断がつきにくい。
    薬剤性膵炎と診断するには、膵炎の他の成因を除外することが重要である。一般に急性膵炎の成因としては、アルコール性が最も多く、胆石性、特発性が続く。その他まれな成因として、内視鏡的膵胆管造影後、ムンプスウイルス感染、高カルシウム血症、高脂血症などがある。まず、経過、血液検査所見、画像診断などにより、急性膵炎の成因として頻度の高いアルコール性膵炎と胆石性膵炎を否定し、次に薬剤の内服状況と症状発現との関係を中心とする十分な病歴・薬歴聴取が必要となる。



治療方法
(1)治療の原則
  • まず、膵炎を発症しうる薬剤の投与を直ちに中止する。急性膵炎と診断したら、まず重症度を判定し、重症度に応じた治療を行う。
    十分な量の輸液を行い、血圧、脈拍数、呼吸数、体温、尿量などを経時的に観察しながら病態に応じた治療を行う。重症度判定は厚生労働省の基準(表1)を用いて行うが、発症時に軽症でも急激に重症化することがあるので、特に発症後48 時間以内は重症度判定を繰り返し行う必要がある
  1. モニタリング
    • 急性膵炎においては有効循環血漿量が著しく減少しているので、循環動態を評価して適切な量の輸液を行う必要があり、そのためには経時的にモニタリングを行う必要がある。モニタリングには意識状態、血圧、脈拍数、呼吸数、体温、尿量、酸素飽和度を測定する。
      その他に、体温(末梢温)、胸部レントゲンでの心胸郭比(CTR)計測、血液ガス分析(特に代謝性アシドーシスの有無と程度)、電解質、ヘマトクリット値などを指標にする。
      輸液の最も重要な目標は循環動態の安定であり、それは血圧、脈拍数の維持と適正な尿量の確保である。適切な循環血漿量や血圧は尿量と密接に関連しており、尿量が最低でも1 mL/kg/時間を確保するべきである。
      十分な初期輸液にもかかわらず、循環動態の不安定性、特に意識状態の悪化、代謝性アシドーシスの出現や増悪が認められれば、中心静脈圧(CVP)や肺動脈カテーテルモニタリングなどさらなる循環動態の評価や腸管の循環不全など他要因の検討が必要で、高次医療機関への転送を考慮すべきである。
  2. 輸液
    • 初期には細胞外液(酢酸リンゲル液あるいは乳酸リンゲル液など)を末梢輸液ルートから行う。中等症以上では中心静脈ルートの確保が望ましい。約6 時間後に血圧、脈拍数、尿量などの指標を再評価し、その後の輸液計画をたてる。尿量が順調に確保されるまでは大量の輸液が必要である。なお、十分な輸液を行う前に利尿薬を投与すると状況を悪化させる可能性が高いので注意を要する。
  3. 蛋白分解酵素阻害薬
    • 急性膵炎と診断された時点から蛋白分解酵素阻害薬を使用する。蛋白分解酵素阻害薬には、メシル酸ガベキサート、メシル酸ナファモスタット、ウリナスタチンなどがある



治療例【軽症例の場合】
  • 軽症例では中心静脈ルートは必要ない。体重60 kg の患者では1日輸液量は約2,500〜4,000 mL/日で、最初の6 時間量は約600〜1,000mL とする。蛋白分解酵素阻害薬は、下記の薬剤のいずれかを、症状に応じて量を増減して投与する。
    メシル酸ガベキサート:200〜600 mg/日(2 回に分けて、1 回約2時間かけて点滴静注)。
    メシル酸ナファモスタット:10〜60 mg/日(2 回に分けて、1 回約2 時間かけて点滴静注)。
    ウリナスタチン:5 万〜15 万単位/日(3 回に分けて点滴静注)。

治療例【中等症の場合】
  • 中等症例では中心静脈ルートの確保が望ましく、24 時間持続点滴とする。
    体重60 kg の患者では1 日輸液量は約3,600〜7,200 mL/日で、最初の6 時間量は約1,200〜2,400 mL とする。
    蛋白分解酵素阻害薬として、メシル酸ガベキサート:600 mg/日(2 回に分けて、1 回約2 時間かけて点滴静注)+ウリナスタチン:15 万単位/日(3 回に分けて点滴静注)。または、メシル酸ナファモスタット:60 mg/日(2 回に分けて、1 回約2 時間かけて点滴静注)+ウリナスタチン:15 万単位/日(3 回に分けて点滴静注)を投与する。

治療例【重症の場合】
  • 重症例では中心静脈ルートを確保して経時的に中心静脈圧(CVP)をモニタリングし、輸液の量や速度の目安とする。
    体重60 kg の患者では1日輸液量は約4,800〜9,600 mL/日で、最初の6 時間量は約2,400〜4,800 mL とする。
    蛋白分解酵素阻害薬は1日に使用可能な最大量を使用する。
  • さらに、播種性血管内凝固症候群(DIC)やショックを呈している場合には、それに準じて、24 時間持続投与を行う。動脈にカテーテルを留置して、抗菌薬と同時に持続動注を行うと有効であるとの報告がある。
    重症例では致死的な合併症である膵および膵周囲の感染症の発生頻度が高いので、早期から予防的に抗菌薬を静脈投与する。使用する抗菌薬は、抗菌スペクトラムが広く、膵組織への移行の良いカルバペネム系のイミペネム、メロペネムなどが望ましい。

転帰
  • 薬剤性膵炎の転帰は、死亡例がなく比較的経過良好であるとする報告がある。
  • しかしながら、文献による47 例の集計で死亡例が4例(9%)であったとする報告や文献による34例の集計で死亡例が5例(15%)であり死亡率が高かったとする報告がある。転帰に差が認められるのは、原因となる薬剤によって異なるのか、急性膵炎自体の重症度によるものかは不明である。
    薬剤の再投与により急性膵炎が再発することが多いので、注意を要する。
  • 薬剤性膵炎の原因を突きつめるためにチャレンジテストを行ったという報告があるが、これは危険が伴うことを含めて人道的に問題があると思われるので極力避けるべきである。





典型症例
【症例1】30 歳代、女性
  • 患者は1年前に両肩、両膝痛を自覚し、関節リウマチと診断され通院していたところ、発熱(38.5度)、下痢、嘔吐が出現し、3日後には上腹部痛、背部痛も認めたために入院となった。
  • 6 ヶ月前からジクロフェナクナトリウム75mg/日とソファルコン150mg/日を、12日前からミゾリビン300mg/日が投与されていた。
    血液検査では、白血球数10,300/μL、Hb 10.7g/dL、CRP 25.1mg/dL、BUN 40mg/dL、アミラーゼ321 IU/L、リパーゼ1,412 IU/L と膵酵素の著明な上昇を認めたために、急性膵炎と診断された。腹部超音波検査、CT では膵腫大を認めなかったことから、重症度はStage 0 軽症急性膵炎と判断し、服薬中の薬剤を中止し、ウリナスタチンを投与したところ、自覚症状は改善し、膵酵素も徐々に低下した。入院23 病日頃から関節痛が増強したために、自己判断でミゾリビン、ソファルコンを2 日間服用したところ、36 時間後から入院時と同じ症状が出現し、アミラーゼ値は1,311 IU/L と急激に上昇した。薬剤の中止とウリナスタチンの再投与にて自覚症状の消失と、膵酵素の改善が得られた。ソファルコンは6 ヶ月以上前から投与されていること、ミゾリビンは投与開始後12 日目の発症であり、薬剤性膵炎の報告があるアザチオプリンと類似性のある薬剤であることから、ミゾリビンが原因の薬剤性膵炎と考えられた。

【症例2】30 歳代、女性
  • 患者は性同一性障害にて両側乳房切除の既往があり、4 年以上250mg/週でテストステロンを投与されていた。時に自然軽快する軽い腹痛と腰部痛を認めていたが、ある日の早朝から腹部膨満感があり、その後、急激に腹痛、腰背部痛、嘔吐が出現したために、緊急入院となった。白血球数16,000/μL と上昇し、血清アミラーゼ値755IU/L、エラスターゼ値1,631ng/dL、リパーゼ値2,060U/L と膵酵素が著明に上昇していた。CT にて膵全体の腫大と膵周囲(腹腔内、前腎傍腔)の滲出液を認め、CT GradeVと診断された。軽症急性膵炎(重症度スコア0 点)と診断され、脾動脈に留置したカテーテルからメシル酸ナファモスタット200mg/日、メロペネム1g(力価)/日の持続動注を開始した。
    1 週間の持続動注のあとメシル酸ナファモスタット200mg/日で持続点滴を行っていたが、4 週間後に38℃以上の発熱と腹痛が増悪し、腹腔内膿瘍を合併した。白血球数21,500μ/L、ヘマトクリット39.6%、BUN9.5mg/dL、Ca 8.8mg/dL、空腹時血糖127mg/dL であった。また、SIRS 診断基準3 項目陽性(発熱38℃以上、呼吸回数24 回/分、脈拍数114 回/分)であった。さらに画像所見としてCT GradeWであったことから、重症度スコア5 点 Stage2 重症急性膵炎(重症T)と診断された。膿瘍治療として経皮的ドレナージを行ったが、排膿は困難であり、外科的ドレナージ術を実施したところ、軽快して術後43日目に退院となった。
    テストステロンの投与を避けるように指導していたにもかかわらず、退院6 ヶ月後に2 週間隔で2 回投与されたために急性膵炎を再発し、再入院となった。今回は、保存的治療にて重症化せずに軽快し退院となった。

その他、早期発見、早期対応に必要な事項
  • 薬剤性膵炎はいったん発症すると死に至ることもある重篤な副作用であることから、早期に診断し治療を開始する必要がある。
    膵炎を惹起する薬剤の中に抗がん剤が多く含まれることから、急性白血病に対する化学療法の際に、血清アミラーゼ値を週2 回以上測定し、上昇した症例に対して蛋白分解酵素阻害薬を投与することで、治療効果が期待できたという報告59)がある。また、再発することが多いことから、原疾患の治療のために再投与が避けられない場合には、膵炎の治療を行いながら投与することも考慮される。


関連情報 膵炎」「急性膵炎 」「慢性膵炎」「胸痛」「急性腹症」「高脂血症」「低カルシウム血症」「頻脈」「チアノーゼ」「ショック」「鼓脹」「腹痛」「活性酸素








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