慢性疼痛
(慢性痛)




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慢性疼痛(慢性痛)
慢性神経因性疼痛
(神経障害性疼痛)

@ケガなどによる神経損傷の後に起き、
  • ・いつまでも消えない痛み、
  • ・不快感、
  • ・シビレ、
  • ・灼熱感、
  • ・刺されるような痛み(穿痛感)
  • ・熱感、冷感、
  • ・腫れ
  • などざまざまな異常感覚を伴う。

Aケガの他
  • ・神経のウイルス感染、
  • 糖尿病による末梢神経の損傷、
  • ・ガンの手術による神経損傷、
  • ・ガンの化学療法、
  • ・栄養不足などによって神経が損傷
  されても、同様に神経障害性疼痛が起きる。


Bささいな原因から起きる痛みが、いつまでもおさまらず、逆にだんだんひどくなる
  • 例えば
  • ベッドのシーツに軽く触れるだけで、電気ショックのような痛みを感じる
  • シャワーを浴びると、お湯がまるでナイフのように感じられる
  • 車に乗っているときの振動が耐えられない






外傷から慢性疼痛
CRPS
(複合性局所疼痛症候群)
  • ・手足の小さなケガや手術後に、その手足や反対側の手足が痛む
    ・末梢のケガなどで発症し、痛みが患肢以外にも広がる。


脊髄損傷後疼痛
  • ・事故や病気で脊髄を損傷し、手足がマヒし体幹が痛む


脊椎手術後疼痛症候群(腰椎手術後疼痛)


開胸手術後疼痛

腕神経引き抜き損傷
  • ・バイク事故などで腕の神経が引きちぎれ、肩や腕が痛む。


幻肢症・「断端痛」
  • ・手足の切断後に、無くなっているはずの手足に痛みを感じる




病気から慢性疼痛
糖尿病性神経因性疼痛
  • 糖尿病による神経障害で手足の末端が痛む


帯状疱疹後神経痛

多発性硬化性疼痛

中枢性卒中後痛
  • 脳卒中後に半身の手足や顔が痛む




 大規模調査
660万人
  • 日本大学医学部の小川節郎教授らは2010年、インターネットを使い20〜69歳の約2万人に痛みについて大規模調査を実施した。
  • 慢性の痛みがあると答えたのは26.4%で、その4人に1人は神経障害性疼痛が疑われた。
  • 調査結果から小川教授は全国に成人の慢性疼痛患者は約2700万人おり、このうち神経障害性疼痛は約660万人と推定する。

多くは、腰・背中・尻などの痛み。
    • 「焼けるような」
    • 「ヒリヒリする」
    • 「ピーンと走るような」
    • 「むずがゆい」
    などと表現される。




メチル基が存在しない
成田年・星薬科大学教授らは、マウス実験で、脊髄の細胞で炎症タンパク質を作る遺伝子の一部に本来つくはずのメチル基が存在しないことを明らかにした。
  • 神経が傷ついたあとに痛みを起こす物質が出てメチル基を外し、痛みを長期化させるとみている。



人工塩基で・・関与遺伝子発現を抑制
 2010年、岡山大学大学院医師薬学総合研究所の大内田守准教授と板野義太郎助教らは、ガンなどによる慢性の痛みを和らげる新しい手法を開発した。痛みに関連する遺伝子の断片を模倣した塩基配列を人工合成し、遺伝子のスイッチが入らないようにジャマさせる。
  • ラット実験で効果を確認。研究チームは、痛み関連する遺伝子を調べるために、ラットの後脚から腰につながる神経をしばり、慢性的な疼痛がある時に活発に働く遺伝子を突き止めた。この遺伝子の働きを抑えて、痛みが出にくくする手法を見つけた。
  • 具体的には、遺伝子のスイッチを調節するプロモーター部分と同じ塩基配列を持つ断片を人工合成した。合成断片が遺伝子の周囲に多数あると、スイッチをオンにするのに必要な転写因子などがプロモーターと見誤ってくっつく。その結果、スイッチが入らず痛みが抑制されるメカニズム。ラット実験では左脚の神経節をしばった後に、合成した断片約1万個を脊髄に注射した。両脚の裏を様々な大きさの繊維で突き、細くても脚を縮めれば痛みを感じやすく、太くしたときに始めて縮める場合は痛みが弱いと判断した。注射したラットは翌日から、普通のラットと同程度の太い繊維で押すまで反応しなくなった。




巻き貝のペプチド
2011年、宮崎大学の池田哲也准教授らは軟体動物である巻き貝「ナガニシ」から見つかったアミノ酸の断片(ペプチド)が神経性の痛みを軽減することを突き止めた。

幸福感を高める脳内物質として知られるセロトニンを増やすことも分かり、うつ病治療にもつかえる可能性がある。


研究チームは巻き貝の一種「ナガニシ」の脳神経節(人間の脳にあたる)をすりつぶし、「APGWamide」と呼ばれるペプチドを抽出。

糖尿病
のラットに投与した。
糖尿病
になると手足の末端部分に十分な血液が届かなくなったり、ブドウ糖が変化した糖化産物が蓄積したりして痛みが生じる。2週間高血糖が続いたラットの足を刺激すると、引っ込める動作が多くなり、足に痛みを感じていると判断した。ペプチド(APGWamide)を脊髄に投与したところ、引っ込める動作が減少した。


痛みを感じるほどの刺激を与えると、神経細胞にあるタンパク質が多くなることが知られている。糖尿病による痛みを感じる場合、このタンパク質が正常状態の2倍に増えていた。ペプチドを投与したラットでは正常ラットと同程度に痛みが減ることが確認できた。

また、うつ病モデルのラットの大脳皮質にAPGWamideを投与したときと投与しない時とで脳内物質のセロトニン量を比較したところ、投与時に1.6倍のセロトニンが出ていることが分かった。一方でほかの脳内物質であるノルアドレナリンドーパミン量は変化しなかった。現在の抗うつ薬では副作用として吐き気やめまいを起こすが、その理由は、ドーパミン量が増えるのが原因と見られている。


 (慢性痛の関連遺伝子)
2012年、京都大学の金子周司教授と中川貴之准教授らは、慢性痛の関連遺伝子を特定した。
  • 圧力や熱による痛みとは別に、慢性痛だけにかかわる遺伝子があった。
  • 神経細胞などの表面にあり、炎症関連物質を検出するセンサー役タンパク質「TRPM2」に注目した。
  • 遺伝子組み換えでTRPM2を持たないマウスを作製。
  • 薬物で炎症を起こして慢性痛を模造した痛みを与え実験した、
  • TRPM2は損傷部位だけでなく、中枢神経である脊髄でも活発に働いていた。炎症を引き起こす細胞を誘導する物質を出していた。



誤ったシグナルが脳に達するため
神経それ自体の異常な動作のために起きる痛み
  • 誤ったシグナルが脳に達するために生じる痛みで、急性疼痛と同様にリアルで、しかも消えることがない。
  • 九州大学の井上和秀教授と津田誠准教授らは、2003年、神経細胞の中でも情報伝達に直接関わらず、病気になると活性化する「ミクログリア」という細胞に着目した。
  • ミクログリアが活性化した状態が長く続くと、痛みを引き起こす物質を大量に放出し神経障害性疼痛の発症をうながすことを突き止めた。



 (慢性の激痛を起こすカギ)
2012年、九州大学の井上和秀教授と津田誠准教授らのグループは、慢性の激しい疼痛を引き起こすカギとなるタンパク質を発見した。

このタンパク質は
  • 「インターフェロン調節因子8」
  • (IRF8)

細胞核内のDNAに結合して様々な分子の合成を調節している。
  • 脳や脊髄のなかで免疫を担っている「ミクログリア」という細胞だけで作られていた。
  • 研究グループは、神経が損傷して慢性の激しい痛みを起こすモデルマウスの脊髄を調べ、IRF8がミクログリアだけで急増することを見つけた。
  • IRF8が大量に作られた結果、ミクログリアの活動が高まり、神経細胞を異常に興奮させる様々な生体分子を放出していた。
  • IRF8を作れないマウスを横浜市立大学の田村智彦教授の協力で作製し、痛みの程度の変化を調べた結果、激しい痛みが50〜60%抑えられた。
  • IRF8が“痛みを引き起こすスイッチ役”(津田准教授)と結論づけた。
  • 成果は4/5のセル・リポーツ(電子版)に発表。
  • 慢性の激しい痛みは、ガンや糖尿病などで神経が損傷して発症する。推定患者数は世界中で2000万人。



アストロサイト
2016年、自然科学研究機構生理学研究所の鍋倉淳一教授らは、マウスの脳を、特殊な顕微鏡で生きたまま観察。

痛みや触った感覚などを担う部位で、「アストロサイト」と呼ぶ細胞の働きが活発になっていた。

アストロサイトは、トロンボスポンジンという糖タンパク質を作り、神経細胞に回路の組み換えを促す。

糖タンパク質の合成を阻害する化合物をマウスの脳に注射すると、1週間後に症状が緩和した。

神経細胞に糖タンパク質が働かないようにするガバペンチンという薬剤を注射しても症状が和らいだ。

アストロサイトの活動は一過性で、末梢神経が傷ついてから1週間ぐらいで収まる。しかし、いったん組み変わり異常となった神経回路は維持されるため、疼痛は長時間続く。



モルヒネ効かない神経障害性疼痛
・・・免疫系物資が関与

2013年、福岡大学の高野行夫教授らのグループは、モルヒネが効きにくい慢性的な激しい痛み「神経障害性疼痛」が発症する仕組みを解明した。免疫に関わる情報伝達を担うタンパク質が関与していた。
  • 白血球に情報を伝えるタンパク質が増えていた。
鎮痛薬

通常の鎮痛薬で神経障害性疼痛は緩和できない。

その理由は、従来の鎮痛剤はすべてニューロンを標的にしているが、神経性障害疼痛ではニューロンとは別の「グリア細胞」の機能不全によって生じるため、従来の鎮痛剤は無効。モルヒネでさえ効果がない。


米ファイザーが開発した「プレガバリン」(商品名:リリカ)が効果的とされる。

日本では2010年6月に帯状疱疹後神経痛の薬として発売。痛みを伝える神経伝達物質が過剰に出ないように抑えて鎮痛作用を発揮するタイプの薬。




既存薬が有効
2017年、岡山大学も加藤百合特任助教と宮地孝明准教授らが突きとめた。
ガン・糖尿病などで長期間痛みが続く慢性疼痛に骨粗鬆症の治療薬が有効と判明。

(ドラッグリポジショニング)
=既存薬を別の病気に治療に使うこと。

慢性の痛みは神経が傷ついたり炎症が起きたりして発症する。
骨粗鬆症の治療に使われているビスホスホネート製剤が、骨粗鬆症の痛みを和らげることが知られていた。
研究チームはビスホスホネート製剤の一種の「クロドロン酸」に注目。
痛みを抑えるメカニズムを明らかにした。

慢性疼痛のモデルマウスにクロドロン酸を投与すると、ATP(アデノシン三リン酸)が神経細胞から放出されなくなった。

ATPはエネルギー源だが、神経伝達物質としても働き、痛みを感じる神経を刺激するという。

クロドロン酸の鎮痛効果は神経が傷ついて起こる痛みの治療薬より強く、ねむけ(眠気)などの副作用なども起こらなかった。

また、クロドロン酸には免疫細胞からのATP放出を抑える機能もあった。
抗炎症効果は一般的なステロイド製剤と同等。



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