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再生 大人でも新たな脳細胞
大人の脳は成長が止まり、年齢とともに脳細胞が破壊されると考えられていたが、認識や知覚などの重要な働きをつかさどる大脳皮質には、大人になっても新しい脳細胞が付け加わっていることがわかった。
米プリンストン大のエリザベス・ゴールド博士らがアカゲザルを使った実験で確認。1999年10/15日付けの米科学誌サイエンスに発表した。
サルと人間の脳は極めて似ていることから、人間の脳でも同じ現象が起きているとみられる。博士らは、新たに付け加わる脳細胞は記憶や学習などの高度な機能に関連があるらしい、と指摘している。
博士らは、細胞分裂して新たに増えた細胞に取り込まれる特殊な化学物質を、成獣のアカゲザル12匹の腹に注入。2時間から7週間後にサルの脳を調べ、どの部分から化学物質が見つかるかを分析した。
その結果、注入2時間後の脳では、脳の中心近くで見つかり、新たな細胞が脳の奥深くで作られていることが判明。新たな細胞は時間とともに、脳の外層である大脳皮質で移動し、脳神経細胞として成熟することが分かった。新たな細胞は大脳皮質の中でも判断力など特に高度な機能を持つ部分に付け加わるという
脳神経再生の遺伝子(bc12遺伝子
「一度傷つくと再生しないとされていた脳の中枢神経が、『bc12』と呼ばれるガン遺伝子によって再生されることを、ノーベル医学生理学賞受賞者の利根川進マサチューセッツ工科大教授らがマウスを使った実験で突き止めた。
中枢神経は人間の活動で重要な働きをしており、解明が進めば脳障害の治療に大きく役立つと期待される。
利根川教授は「この遺伝子を体内に注入する遺伝子治療などで、脳に障害がある新生児や脳卒中の後遺症治療、神経変性疾患などを治療できる道が開ける」と話しており、研究成果は30日付けの英科学誌ネイチャーに発表された。
 利根川教授によると、研究グループは受精後の日数が異なるマウスの胎児の網膜と脳の一部をそれぞれ取り出し、互いに接触させた状態で培養した。網膜と脳の神経細胞は通常はつながっているが実験では切断された。
実験の結果、受精後間もない胎児は網膜の神経細胞の軸索の部分が再生したが、受精後かなり日数が経過し生まれる直前の胎児は再生せず、成長のある段階を境に再生しなくなることを確認。再生しなくなる時期は、bc12が作るタンパク質の量が極端に減る時期とほぼ一致することを発見した。
一方、bc12遺伝子が作るタンパク質の量が成長しても減らないよう遺伝子を操作したマウスで実験したところ、成長の過程に関係なく中枢神経の細胞は再生、この遺伝子が再生に関与していることが分かった、という。
bc12遺伝子は異常が起きるとある種のガンを起こすなど、細胞の増殖・分化に関係する幅広い働きをすることで最近注目されていた
の電位で増殖
国立循環器病センターの研究グループは、脳の神経細胞が新たに作られるキッカケとなる生体現象を、ラットを使った動物実験で解明した。
脳梗塞などで脳の神経細胞の損傷を受けた人の回復に役立つかもしれない。
脳に血流不足などが生じた際に、脳内で発生する電位変化の波が脳の神経細胞を新たに生み出す役割を担っていた。
成果は米医学誌「ストローク」2005年7月号に掲載。
頭部の外傷や脳の血管が詰まって脳の血流不足が起きると、損傷を受けた神経細胞胃の付近でカリウム濃度が上昇し、周辺の神経細胞以内の電位も上昇する。この電位変化が脳全体へ波紋のように広がっては消えていく現象が起きることが知られていた。・・・だが、何のために起きているのが不明だった。
同センターの柳本広二。脳血管障害脳外科研究室長らはラットの脳に電位変化を発生させ、顕微鏡で脳を観察した。その結果、新しい神経細胞が多数、現れていることを確認した。新たな神経細胞を作り出す『神経幹細胞』が、電位変化で刺激されたためと考えている。
骨髄中の
タンパク質
ガレクチン1
慶応義塾大学の岡野栄之教授と坂口昌徳助手らは、脳梗塞などでダメージを受けた脳の神経細胞が再生するのを手助けするタンパク質を、マウス実験で確認した。2006年4月の米アカデミー紀要に掲載。
脳の中には脳神経に成長する能力を持った『神経幹細胞』という細胞が含まれ、脳梗塞などによって脳機能が低下したときに脳神経を再生したり修復する働きをしている。神経幹細胞は胎児の脳には比較的多いが大人になると微量しか含まれていない。
研究グループは、骨髄中で神経を修復させる物質を分泌している『骨髄間質細胞』という特殊な細胞から『』というタンパク質を抽出。このガレクチン1に神経幹細胞を増殖させる作用があることを突き止めた。脳の中では神経幹細胞が自らこのタンパク質を分泌していると考えられる。
試験管内の実験で、ガレクチン1を加えた分量に比例して神経幹細胞がほぼ無限に増殖。健康な大人のマウスの脳に注入すると神経幹細胞が2倍に増殖したほか、このタンパク質を持たない遺伝子改変マウスでは、神経幹細胞の量が1/3〜1/4に減少した。
このタンパク質は脳神経だけでなく中枢神経全般の増殖・再生にも関わっていると考えられている
比喩 脳の「角回」・・・比喩
「米カリフォルニア大学の研究者らは、脳の『角回』と呼ばれる部分が、比喩表現を理解する機能と関係していることを発見した。左側の角回が傷ついている右利きの患者4人で調べた。患者らは「隣の芝生は青い」などの比喩の意味をほとんど理解できなかった。
患者らは全員英語力や思考力にも問題はなかったが、比喩の意味を尋ねても文字通りの意味しか理解できなかった。
脳の他の部分に傷が付いている患者には、このような傾向は見られなかった。人間の角回は他の動物より大きく、比喩の理解や抽象的な思考を助けている可能性があるという。幽体離脱
ほ乳類 ほ乳類の脳
2008年、ほ乳類の脳の形成に関わる遺伝情報を、東京工業大学と理化学研究所の研究チームが発見した。ほ乳類が約2憶年前に地球上に誕生したときに、この遺伝情報を獲得したとみられる。
発見したのは『レトロポゾン』と呼ばれる遺伝子情報。脳を作る遺伝子の働きを助け、「視床」という脳の重要な部位を作る。マウス実験で確認した。
視床は耳や目が捉えた感覚情報を脳内で処理し、ほ乳類が周囲の様子を素早く把握して行動するための重要な役割を果たしている。
鳥類や両生類にはほ乳類のような視床は無い。
神経回路 神経網の可塑性
理化学研究所・脳科学総合研究センターのヘンシュ貴雄チームリーダーらは、脳の神経回路が柔軟に組変わる能力が発揮される背景に神経の興奮を抑制する仕組みの存在が重要な役割を果たしていることを突き止めた。詳細は2000年3/9日付の英科学誌「ネイチャー」に発表する。
研究はマウスの大脳で視覚情報を処理する神経回路を対象に進めた。この回路に目から情報が入ると、神経が興奮して情報伝達を強める刺激と、逆に興奮を抑制して情報伝達を弱める刺激の両方が組合わさって働く。また生後のある時期に限って、外部の刺激で神経回路が柔軟に組変わることが知られている。これを『脳の可塑性』と予備、可塑性が現れる時期を『臨界期』という。
遺伝子技術を用いて、興奮を抑制する刺激がうまく働かないマウスを作り、脳の可塑性にどんな影響が出るか調べた。その結果、こうしたマウスは大人に成長するまで全く可塑性が現れなかった。しかし大人になってから興奮抑制作用がある薬剤を投与すると、可塑性を持ち始めた。
逆に神経回路の抑制作用が未熟な生後間もないマウスに同じ薬剤を投与すると、通常よりも早く臨界期になった。
こうした結果から研究グループは「可塑性が現れるには一定レベル以上の抑制性の刺激が不可欠」と結論づけている
伝達・誘導 脳内細胞の情報伝達・誘導物質
「脳の神経細胞内で情報伝達にかかわる様々な物質を運ぶ「分子モーター」の行き先を決める誘導タンパク質を東京大学の広川信隆教授らが発見した。
このタンパク質の働きを明らかにできれば、神経細胞に異常が起きる様々な神経変性疾患や老化に伴う記憶障害などの解明や治療法の開発に結びつく可能性がある。
広川教授らは、分子モーターが<GRIP1>というタンパク質とくっつくと、神経細胞の中心から樹状突起と呼ぶ部分に移動することを突き止めた。分子モーターはGRIP1を介して記憶形成に不可欠な別のタンパク質と結びつき、情報伝達を樹状突起に送り届けるという。
マウスの実験では、GRIP1の働きを阻害すると分子モーターが樹状突起に移動できなくなった。逆にGRIP1の働きを高めると、樹状突起に集まる分子モーターが多くなった。
神経細胞は軸索という細長い手を持ち、そこから他の神経細胞の樹状突起に情報を伝える。これまで、分子モーターを軸索に向かわせるタンパク質は見つかっていたが、樹状突起に分子モーターが移動する仕組みは不明だった。
分子モーターなどはヒトやマウスに共通。「高齢動物では分子モーターの働きが低下することが分かっており、ヒトの記憶障害にもかかわる可能性がある」(広川教授)という。」
グリア細胞 理化学研究所の研究チームは脳の神経細胞が成長する際に『グリア細胞』と呼ぶ別の細胞との接触が重要な役割を果たしていることを突き止めた。成果は、2004年2/5付けの米科学誌ニューロンに掲載。
神経細胞が成長して結合する過程では、周囲のグリア細胞との接触が重要な役割を演じていると推測、グリア細胞が分泌する物質に浸けた神経細胞を2つのグループに分け、一方をグリア細胞に接触、他方は接触させないで比較した。その結果、接触させた方が神経細胞の結合の数が5〜6倍多く、結合を促す物質が神経細胞内で活発に働いていた
血中塩分の調節
「基礎生物学研究所の野田昌晴教授と檜山武史助教授らのグループは、脳の神経回路を支えるグリア細胞が、血液中の塩分濃度を検知して神経細胞をコントロールしていることとを突き止めた。成果2007年4/4付けのニューロンに掲載。
研究チームは、脳室のそばにあるグリア細胞の違いでマウスが塩水錐を飲んだり飲まなくなったりすることに着目。
グリア細胞の膜に血液中のナトリウムイオンを検知して取り込む特殊なタンパク質が存在することを発見した。ナトリウムイオンを取り込むときにエネルギーを使う。グリア細胞はグルコースからエネルギーを取り出した後に残る乳酸を神経細胞に供給することで、神経細胞の興奮を抑えることを分かった。神経の興奮が抑制されると塩分の摂取行動も抑制されると推定される。
このタンパク質を作れないようにしたマウスでは、脱水状態にして血液中の塩分濃度を上げてもいつまでも塩水を飲み続けていた。正常なマウスは塩水を飲まなくなった。
グリア細胞は神経細胞へ栄養分を供給すると考えられているが、人間の生理活動の基本である塩分濃度の調節に深く関与しているのが分かったのは初めて。
左右非対称 理化学研究所と英ロンドン大学は2005年1/19、脳内の神経回路のつながり方が左右非対称になっていることを確認したと発表。
ゼブラフィッシュを対象に、視覚や嗅覚などの情報が入る脳内の手綱核と呼ばれる部分を調べた。手綱核は脳の中心線上にあり左右に分かれた構造。左右それぞれから、同じく中心線上にある脚間核という部分に神経で繋がっている。
蛍光性のタンパク質を入れて脳内で働く遺伝子を可視化して神経の結合を観察したところ、手綱核の左側と右側では神経が脚間核と結合する位置が異なっていた。また、可視化した遺伝子が右側で働くタイプと左側で働くタイプとでは結合が左右逆だった。手綱核は人間にもあり、研究チームは人間の脳機能の解明に役立てる
情報伝達 2007年9月、理化学研究所は脳内で複数の情報が混乱しないで伝わるように手助けするタンパク質を突き止めた。
4つのタンパク質が働いて情報ごとに伝達経路が区別されるという。
脳神経細胞は他に細胞に情報を送る際、軸索と呼ぶ突起をのばす。
情報を受け取る細胞では樹状突起をつかって情報を受け取る。
樹状突起のどこに結びつくかで情報の種類がくばられるが詳細は不明。
ネズミの海馬で調べたところ、送り手細胞の軸索表面には『ネトリンG1』と『『ネトリンG2』と呼ぶタンパク質のいずれかが現れた。
受け手細胞の樹状突起では、先端近くに『NGL-1』、根元近くには『NGL-2』と呼ぶタンパク質が存在。
ネトリンG1はNGL-1
ネトリンG2はNGL-2
とそれぞれ結合し、別々の情報を伝える経路を張るという。
成果は米アカデミー紀要電子版に掲載。

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