p53
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ガン」「アポトーシス」「ガン抑制遺伝子

p53 はタンパク質(プロテイン)の略。
・「53」は、そのタンパク質の大きさを表し、分子量53000のタンパク質を作る遺伝子の意味。
・人間では、23対ある染色体の17番目にある。
・すべての脊椎動物にあり、イカや二枚貝にもあるが、大腸菌や酵母など単細胞生物にはないらしい
細胞のガン化は、ガン遺伝子とガン抑制遺伝子が変化して起きる。
p53はガン抑制遺伝子の1つ。
他の複数の遺伝子の働きも制御している。
特に細胞の増殖に関連する[p21遺伝子]に働きかけ、その働きを止めることでガン化を防いでいる。
運動することで活性化される。
不活性化 2010年、米ソーク生物学研究所はガンを抑える遺伝子として知られる「p53」が不活性化される新たな仕組みを突き止めた。
アデノウイルスがつくるタンパク質「E4-ORF3」がp53遺伝子からできたタンパク質がDNAに結合するのをジャマして不活性化していた。
iPS細胞 iPS細胞は、皮膚細胞や神経細胞などの細胞ができるさいに元になる「幹細胞」の一種。普通の皮膚細胞は数十回分裂すると死ぬが、幹細胞は自分のコピーを作り続け、そこから次々に皮膚細胞ができていく。
ガン細胞も、ガンの元になる「ガン幹細胞」が無限に増殖を繰り返す。
谷口英樹・横浜市立大学教授よると「ガン幹細胞も元々は正常な幹細胞だったものが、遺伝子に複数の変化が起きてつくられる」「普通の細胞が、幹細胞の特徴である増殖能力を改めて獲得してがん幹細胞になる可能性がある」と指摘する。
ガン化は、正常な細胞が紫外線や発ガン物質にさらされるうちに複数の遺伝子が傷ついたり、働きが変化して起きるとされる。その過程で働く防御システムの中心になるのが[p53遺伝子]。
傷ついた遺伝子を持つ細胞が自ら死ぬように働きかけて除去したり、細胞の増殖を止めて修復の時間稼ぎをしたりする。
さらに、P53はガン細胞と同じように、iPS細胞の作製をジャマすることが分かってきた。
iPS細胞は無限に増えるが、たくさん作れないのが難点。山中教授らの方法では、皮膚細胞に2〜4個の遺伝子を加えて作るが、この遺伝子を入れる操作がP53の働きを高め、作製効率を下げてしまうらしい。P53の働きを抑えると、iPS細胞の作製効率は10〜100倍上がるという。
p53R2 DNA修復
人間の細胞は、放射線などによって特定の遺伝子DNAに傷が付くと、ガン化することが知られているが、東京大医科学研究所の中村祐輔教授と荒川博文助手らは、遺伝子の傷の部分に駆けつけてDNAを修復する「救急車」の役目を果たす遺伝子を発見し、その巧妙な修復の仕組みを世界に先駆けて明らかにした。研究成果は2日発行の英科学誌「ネイチャー」で発表する。
中村教授らは、人間の細胞に紫外線とガンマ線、抗ガン剤をそれぞれ反応させ、それによって働き出す遺伝子を調べた。その結果、発見された遺伝子『p53R2』が作り出すタンパク質は、細胞がガンになるのを防いでいる「p53」という名前の遺伝子から出動命令を受け、傷ついたDNAを取り換えるために遺伝子のそばまで急行し、修復用DNAを合成して供給する酵素であることが判明した。
p53を働かないようにした細胞では、この酵素も働かなくなることから、p53の指令で初めて行動を起こしていることも分かった。
p53は正常細胞がガン細胞にならないよう、遺伝子に異常がある場合に細胞分裂を止めたり、滋陰降火湯サルに導いたりする。しかし、p53がDNA修復に関与しているらしいことは指摘されてはいたものの、具体的な仕組みは不明だった。」
p53に異常・・・・・・・・・・→ガン化する
p53が働くと
  1. アポトーシスを起こすタンパク質を作る
  2. 細胞の分裂をストップさせるタンパク質を作る
  3. DNAの傷を修復するタンパク質(p53R2)を作る
ガン ガン抑制遺伝子で、ガン細胞が消失
「肺の進行ガン患者の患部に「ガン抑制遺伝子」と呼ばれる遺伝子を、注入する新しい治療により、ガン細胞が消失するなどの効果があることを、米テキサス大のジャック・ロス博士らの研究グループが確認した。米科学誌ネイチャー・メディシン1996年9月号に発表する。乳・大腸ガンなど、他の進行・早期癌への応用が期待されている。
多くのガン患者の場合、「P53」というタンパク質を作る遺伝子が欠損していることがこれまでの研究で分かっていた。この遺伝子が正常な場合は細胞がガン化するのを妨げる働きがあり、ガン抑制遺伝子を呼ばれている。
同博士らは、他の治療法では効果がなかった9人の肺の進行ガン患者の患部に、ウイルスを遺伝子の運び屋(ベクター)にしてP53の正常遺伝子を注入する治療を1日1回、5日間続けた。経過観察期間をおいて調べた結果、9人のうち、1人はガン細胞が完全に消失、2人は約半分以上縮小、3人は縮小はしていなかったものの進行が止まるなど、6人ではっきりとした効果を確認出来たという
田中信之・日本医科大学教授らは、ガン化が促進される仕組みを明らかにした。ガンの発症を抑える『P53』と呼ぶ遺伝子が変異して機能を失うことで、細胞による糖の取り込みが促進され、いったんガン化すると細胞の増殖が更に盛んになるという。
成果は2008年4/7のネイチャー・セルバイオロジー電子版に発表
P53が正常に働かなくなると、細胞に糖を取り込むための輸送分子を発現させる因子『NF-κB』が活性化して、細胞が糖を積極的に取り込むようになる。細胞は糖などを元にエネルギーを作り増殖しているが、同時にガン遺伝子が働き始めると、増殖に拍車がかかってガン化する
2009年、宮園浩平・東京大学教授らは、ガン抑制遺伝子「p53」の新たな機能を発見した。
これまで癌の原因となるDNAの損傷を修復することが知られていたが、さらに、ガンの抑制に関わる物質の生成にも関与していることを突き止めた。
宮園教授と順天堂大学、中部大学のチームは、『microRNA』という物質の生成過程に注目。microRNAを作り出す酵素などを分析したところ、p53がmicroRNAができるのを促していた。7/23のネイチャーに掲載
細胞死 ガン細胞の特徴は、無限に増殖を繰り返す不死化。2001年9月の日本癌学会でも、寿命を保つようにしてガン細胞をなくす多くの研究発表があり、注目を集めた。国立がんセンター研究所の田矢洋一部長らのグループは、癌の発症を防ぐための細胞死がどのように起きるのかを明らかにした。細胞では遺伝子が修復できないほどのダメージを受けると、自ら細胞死を選択してガン化を防ぐ機能を備える。
これまでに、ガン抑制遺伝子p53がAIP1というタンパク質を活性化させて細胞死を引き起こすことが分かっている。田矢部長らは、細胞死を誘導するp53の仕組みを詳細に解明した。カゼンインキナーゼ2という酵素などで出来たタンパク質複合体が、p53の細胞死を誘発する力を強めていることをつかんだ。p53を選択的に活性化する物質を開発できれば、新たな抗ガン剤になる可能性がある
リ・フラウメニ
症候群
p53遺伝子の異常が原因で起こるガン多発症候群。
30歳代までにガンになる確立が50%、70歳代では90%と言われる。
日本に数家族、世界で140家族ほどおり、遺伝子診断で判明するが治療法がない
長寿老化 国内の死亡原因第一位はガンだ。
年をとるとガンの発症率は高まるので、社会の高齢化が進むほど、この傾向は強くなる。
本来、体にはガン細胞を監視し増殖を抑える力が備わっている。その代表格が『P53』などのガン抑制遺伝子だ。こうした遺伝子が働かないようにしたマウスは若くしてガンを発症する。
P53は老化も制御しているといわれている。米ベイラー医科大学のドノハウアー教授はマウスの実験で、この遺伝子が肝細胞も監視していることを発見した。
幹細胞は多種多様な細胞の元になる重要な細胞。幹細胞からできた細胞が心臓や肝臓、筋肉など様々な体の臓器・組織を形作る。年をとると臓器の機能が低下するのは、この遺伝子に監視された幹細胞がきちんと働かず臓器を形成する細胞が足りなくなるためとドノハウアー教授は考えている。
教授は実験に失敗したことで、このガン抑制遺伝子の新たな働きを見つけた。遺伝子の機能を知るためには通常、その遺伝子を破壊したマウスを作製して、マウスの健康状態がどのようにへんかするかを調べる。
P53遺伝子の場合もこれを壊したマウスではガンが高率に発生した。実験結果はこの遺伝子がガン細胞を監視する機能を持つことを意味する。しかし、ガンでマウスが若くして死んでしまったため、老化の症状を解析できなかった。
ドノハウアー教授は研究の過程で、この遺伝子を不完全に壊したマウスを作ってしまった。教授の作ったマウスは、この遺伝子が正常なマウスの体内で合成されるタンパク質はできないものの、一部が欠けた不完全なタンパク質ができた。
不完全なタンパク質の働きを調べた結果、実は正常なタンパク質よりも強力にガンが発生するのえを抑制する作用があった。ではこのこのマウスはガンを克服して寿命が延びたのだろうか?予想に反して、マウスはガンを克服できたにもかかわらず短命だった。
解剖して短命の原因を探ったが、大きな病変を見つけることはできなかった。萎縮した臓器は、まさしくヒトの老化した臓器を思わせる病理像だった。
その後の実験から、P53を不完全に壊したマウスでは監視機能が強まり、幹細胞があたらに細胞を供給できなくなったため臓器が次第に萎縮してくる可能性のあることがわかってきた。
年をとると、幹細胞を維持できなくなることは以前から知られていたが、それを制御していたのが、どうやらこのP53だったのだ。、(白澤卓二・東京都老人総合研究所研究部長)
心不全 心不全を引き起こす
「ガンの増殖を抑える遺伝子に、意外な“悪玉”の一面があることがわかった。千葉大学医学部付属病院の小室一成教授と南野徹助手らは、ガン抑制遺伝子『P53』に、高血圧患者の心不全を引き起こす作用があることをマウス実験で確認した。
人間でも同様と見られる。心臓だけでp53遺伝子の働きを抑えることができれば、ガンのリスクを高めずに心臓疾患の減らせる可能性がある。成果は2007年3/5のネイチャー電子版に掲載。
高血圧患者は高い圧力で血液を送り出すため、心臓が徐々に大きくなる。心臓が大きくなると当初は血管も増えるが、数週間すると逆に減り始め、心臓に酸素が行き渡らなくなり心不全に陥る。
血管を増やしているのは『HIF1』と呼ばれる体内物質の作用だが、酸素不足の状態が続くとp53遺伝子が作るタンパク質がHIF1を分解し血管が作れなくなる。
p53遺伝子が働かないようにしたマウスでは、心臓が肥大しても心不全は起きなかった。逆にp53遺伝子を薬で活性化すると、通常の半分の期間で心不全になった。
心臓疾患がある人の大半は心臓肥大からくる心不全の危険にさらされている。」
血液検査で P53タンパク質
千葉大学大学院医学研究院の落合武俊前教授を中心とする研究グループは、医学生物学研究所と共同で、早期ガンを血液検査で発見できる新たな診断法を開発した。
厚生労働省は[食道ガン][大腸ガン][乳ガン]についてこの診断法をつかった検査薬を承認し、2007年内に保険適用される見込み。
研究グループの島田英昭講師によると、新しい診断法は、人体の免疫反応を利用。体内のガン抑制遺伝『P53』が突然変異して産出される異常な「P53タンパク質」に対して人体が作り出す抗体を測定する。
正常なP53タンパク質が遺伝子の損傷を修復するなどの働きを持つ一方、異常なP53タンパク質はそれらの機能を失っているため、遺伝子の損傷のある細胞が増殖してガンになると考えられている。
食道ガン患者の62%、大腸ガン患者の59%、の体内で以上異なP53タンパク質の過剰発生が確認されている。
転写因子 2010年、理化学研究所は、ヒトの正常細胞で遺伝子の働きを調整している転写因子(タンパク質)がお互いに関係し合う様子を図に描いた。
複雑な相関関係が地図のように確認できる。
成果は3/5の米科学誌セル(電子版)に発表。
約2000種類あるとされる人の転写因子のうち1222種類を調べた。
図には2種類づつ、ずべての組み合わせについて相互に作用する関係を線で結んだ。すると、転写因子が納豆の豆のように糸でつながった。
Bach1 2008年11月、東北大学院医学系研究科の五十嵐和彦教授らと財団法人癌研究会癌研究所などは、『Bach1』(バック1)と呼ばれる転写因子(DNA結合型タンパク質)が細胞老化を誘導する転写因子『p53』の機能を抑えることを発見した。
P53は細胞老化に関係する遺伝子を活性化させる転写因子で、それらの遺伝子で形成されたタンパク質が、細胞の増殖を停止させ老化を誘導することが知られていた。しかし、p53の機能が調節される仕組みはこれまで不明だった。
遺伝子の転写を活性化させようとするp53に別の転写因子Bach1が結合すると、その働きが阻害させることがマウス実験で分かった。
Bach1を欠損させた細胞は、通常の細胞に比べて速やかに細胞老化に至ることが確認された。
マイクロRNA miRNA(micro-RNA)とは、細胞内に存在する長さ20〜25塩基ほどの1本鎖RNA。
2009年、シンガポール・ゲノム研究所と米ハーバード大学の国際研究チームは、ガン抑制遺伝子として知られる「P53」の働きを抑えるマイクロRNAを発見した。
『125b』というマイクロRNA。
通常、P53が作るタンパク質はガン細胞の死をうながす働きがある。ゼブラフィッシュの受精卵発生過程で調べたところ、125bがP53の働きを抑えていた。
ガン細胞医は無限に増殖する性質を持つ。ヒトのガン細胞を観察したところ、125bが過剰に存在していた。、
PICT1 P53を制御
2011年、九州大学の鈴木聡教授と大阪大学の森正樹教授らは、がん抑制遺伝子「P53」の働きを制御する分子を見つけた。
成果はネイチャー・メディシン(電子版)に掲載。
P53はガン細胞の増殖を抑制したり、死滅させたりする遺伝子。
研究チームは19番目の染色体の一部にある分子「PICT1」に着目。この分子が特定の分子と結合しないと、P53の働きが活発になると一連の反応経路を明らかにした。
PICT1の量をコントロールできる化合物が見つかれば新しい抗ガン剤となるかもしれない。