セロトニン症候群

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セロトニン」「パニック障害嘔吐」「片頭痛」「カルチノイド症候群
セロトニン症候群
  • 内のセロトニン濃度が高すぎることによって引き起こされる症状。
    セロトニン症候群の症状は軽いものから、
  • 症状は3つの主要な神経系に影響を与える。
    1. 自律神経系・・
            ・体温の上昇、
           ・異常発汗
           ・緊張
           ・高血圧
           ・心拍数の増加(ドキドキする)、
           ・吐き気
           ・下痢
    2. 体神経系および筋肉・・・・
            筋肉のケイレン
           ・緊張と緩和の繰り返し  (歯をカチカチさせる)、
           ・反射亢進、
           ・硬直、
           ・振戦
    3. 脳認識機能・・・
           ・混乱
           ・興奮
           ・錯乱
           ・頭痛
           ・昏睡


セロトニン症候群 (厚生労働省
英語名:Serotonin Syndrome/ Serotonin Toxicity
  • とは
    • 精神科のお薬(特に抗うつ薬)などを服用中に、不安、発熱、震えなどをおこす「セロトニン症候群」が生じることがあります。
      何かのお薬を服用していて、次のような症状が同時に複数見られた場合は、医師、薬剤師に連絡し、すみやかに受診してください。
      • 「不安」、
      • 「混乱する」、
      • 「いらいらする」
      上記の症状に加えて以下の症状がみられる場合。
      • 「興奮する」、
      • 「動き回る」
      • 「手足が勝手に動く」、
      • 「眼が勝手に動く」、
        「震える」、
      • 「体が固くなる」、
      • 「汗をかく」、
      • 「発熱」、
      • 「下痢」、
        「脈が速くなる」
      など
    • セロトニン症候群は、服薬開始数時間以内に症状が表れることが多いです。服薬を中止すれば、通常は24 時間以内に症状は消えますが、ごくまれに横紋筋融解症や腎不全などの重篤な結果に陥ることもありますから注意が必要です。
  • 早期発見と早期対応のポイント
    • 薬の飲み始めや服用量が増え始めた頃に、急に精神的に落ち着かなくなったり、体が震えてきたり、汗が出てきて脈が早くなるなどの症状が見られた場合は、副作用を疑うことが必要です。
      セロトニン症候群の原因薬剤は
      • 抗うつ薬が最も多く、特に一般にSSRI と呼ばれる選択的セロトニン再取り込み阻害薬(フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン)で起きることがほとんどです。
      • 他には難治性パーキンソン病に用いられる塩酸セレギリンという薬でおきることもあります。
      • まれではありますが、炭酸リチウムなどの気分安定薬や抗不安薬・睡眠薬、またサプリメントであるセントジョーンズ・ワート(西洋オトギリソウ)
      で起きる可能性もあります。
    • 特に抗うつ薬を複数併用している人、他の薬と同時に服用している人におきやすいので注意が必要です。
      セロトニン症候群が疑われた時は速やかに医師か薬剤師に連絡して指示に従ってください。もし連絡がつかない場合は、お薬手帳やお手持ちの薬を持参して救急医療機関を受診してください。
    • 意識がもうろうとしてきた時は救急車を呼んでください。
    • セロトニン症候群の場合は通常服薬を中止し、安静にすればすみやかに軽快しますが、もしそうで無かった場合は、薬を急にやめることがかえって危険なこともありますので、必ず専門家にご相談ください。
    • 抗うつ薬服用中に、急に精神的に落ち着かなくなったり、振戦、発汗、頻脈などが認められた場合は、セロトニン症候群の可能性を疑う必要がある。
      不安、焦燥などの精神症状はうつ病の悪化と誤診される可能性があるが、振戦・発汗など身体症状を伴う場合は本症候群を念頭におかなければならない。
      一般に、本症候群は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などのセロトニン(5-HT)作動性の抗うつ薬の大量投与や、多剤併用時に発現することが多いため、それらの抗うつ薬を増量したり、他の抗うつ薬を追加した場合に上記症状が認められたときは本症候群を疑う必要がある。

  • 副作用の概要
    • 1970 年代、さまざまなセロトニン作動薬が動物に投与され5-HT の薬理作用が調べられた。この時、動物に特有の異常行動が観察され、この異常行動が“5-HT behavioral syndrome”と呼ばれた1)。このように、セロトニン症候群は本来動物の行動薬理学領域で使用された用語である。
    • しかし、1982 年Inselらは抗うつ薬であるクロミプラミンとモノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬との相互作用により不穏、ミオクローヌス、発熱、反射亢進などを呈した2 例をヒトのセロトニン症候群として報告した。これがヒトにセロトニン症候群という用語が使用された最初の報告である。
    • また、1950 年代にMAO 阻害作用を有する抗結核薬のイプロニアジドと麻薬性鎮痛薬であるペチジンの併用中に不穏、興奮、振戦、反射亢進などを呈した症例が報告されており、以後も類似の報告が散見され、これらの症例は現在のセロトニン症候群の概念に当てはまる。
      Insel らの報告以後セロトニン症候群の症例は散発的に報告されていたが、1991 年にSternbach が本症候群の総説を発表した。この時欧米では、SSRIが登場しその使用量が増加し、その結果セロトニン症候群の発現が増加しつつある時期にかさなっていた。そのため、彼の総説は時宜にかなった報告となり、セロトニン症候群に対する関心が高まり、その報告例は増加し現在に至っている。
      わが国においては、1993 年小島らが、地方会で「クロミプラミンとリチウムの併用中に5-HT 症候群の出現、遷延化をみた1 症例」を報告しているが、セロトニン症候群の概念が一般的になるまでにはいたっていない。1996 年になり、「Clomipramine 単一投与中のセロトニン症候群 (佐々木ら)」6)と「セロトニン症候群と考えられた2 症例−悪性症候群との鑑別を中心に (西嶋ら)」7)が 精神医学雑誌に続けて掲載され、それ以降セロトニン症候群に対する関心が集まるようになった。その後、現在までに主要雑誌に限ると症例報告は30 数編発表されている。
    (1)副作用発現頻度
    • 本症候群の発症率については、Isbister ら8)は抗うつ薬の過量服用で入院となった患者群を調査している。どの程度の用量を服用したか記載はないが、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、フルオキセチン(国内未発売)、シタロプラム(国内未発売)の5 種類のSSRI をそれぞれ単剤のみ過量服用した結果、セロトニン症候群を呈した症例は469 例中67 例、すなわち14%であったと報告している。一方、Ebert ら9)はフルボキサミンを中心に治療を受けている200 人の入院患者の調査を行っている。フルボキサミンの一日平均投与量は200 mg で、109 人はフルボキサミンの単剤投与を受け、残りは炭酸リチウム、他の抗うつ薬の併用投与を受けていた。
      そのうち、3 例 (1.5%) は不眠・不安・焦燥などの精神症状を示したものの、典型的なセロトニン症候群を示した症例は認めなかった。また、MacKayら10)は、臨床医にアンケート調査を行い、ネファゾドン(国内未発売)で治療されている11,834 人のうちSternbach の示すセロトニン症候群の10症状(「副作用の判別基準」の項表1)のうち2 症状以上を認めた症例は53例(0.4%)であったと述べている。これらの結果から分かることは、抗うつ薬の過量投与ではセロトニン症候群の発現頻度が高くなるが、抗うつ薬を通常用量投与されている限りセロトニン症候群の発現頻度はかなり低いということである。実際の臨床では、種類の異なる抗うつ薬の併用が行われる。また、特定の抗うつ薬ではセロトニン症候群の発現の頻度が高いという報告11)もある。さらには、MAO 阻害薬が他の抗うつ薬に併用された場合はセロトニン症候群が起きやすくなる12)。今後、以上の点を踏まえて大規模、前向きの調査を行う必要がある。
    (2)セロトニン症候群を発現させる可能性のある薬剤
    • セロトニン神経系への機能亢進作用を有する薬剤はすべて原因薬剤となる。フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリンなどの SSRI、クロミプラミン、イミプラミン、アミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬がわが国でしばしば報告にあがる原因薬剤であるが、セロトニン症候群の報告を概観すると、単剤よりは多剤投与時の発現が圧倒的に多い。欧米では、トラニルシプロミン、モクリベマイドなどの MAO 阻害薬とSSRI や三環系抗うつ薬との併用によるセロトニン症候群は重篤な結果になる例が多いがわが国では抗うつ薬としてのMAO 阻害薬は臨床では認可されていない。た
      だし、パ−キンソン病の治療に用いられるセレギニンはMAO 阻害薬であり、時に難治性のうつ病に使用される試みもあり、セレギニンとSSRI や三環系抗うつ薬との併用は避ける必要がある。炭酸リチウムが、双極性障害や遷延するうつ病に抗うつ薬と併用されることがあるが、炭酸リチウムはセロトニン機能を増強させる作用を有し、併用時にセロトニン症候群が発症した報告もあるので、注意しておく必要がある。抗不安薬であるタンドスピロンは5-HT1A 受容体作動薬であり、本剤がセロトニン症候群の発症に関与した報告13,14)も認められる。頻度は少ないが、ペチジン、ペンタゾシン、トラマドールなどの鎮痛薬や鎮咳剤であるデキストロメトルファンなどと抗うつ薬の併用時にセロトニン症候群が発現することもあるその他、サプリメントとして使用されるセントジョーンズ・ワートはセロトニン活性を亢進するので、その服用を知らないで抗うつ薬が投与された場合は本症候群の発現の危険が高まる。また、違法性麻薬に指定されているMDMA( 通称エクスタシー)は神経終末からの5-HT 遊離を増強させる作用を有することからセロトニン症候群の原因薬剤になりうる16)。最近MRSA 感染症に使用されるリネゾリドとSSRI との併用でセロトニン症候群が発現したという報告17)が増えてきている。リネゾリドはMAO 阻害薬の作用を有するためと考えられる。
    (3)発症危険因子
    • 本症候群と臨床症状が類似する悪性症候群では、興奮などが持続し脱水・低栄養状態にある患者、精神発達遅滞や脳器質性疾患を有する中枢神経系に脆弱性が予想される患者、高温多湿な環境にある場合などが発症の危険因子であるといわれている。一方、セロトニン症候群ではMDMA が関与する場合には高温環境が影響すると指摘16)されているものの、他の原因薬剤によるセロトニン症候群においては個体側の要因について明らかなことは分かっていない。ただし、抗うつ薬が大量投与され中枢セロトニン活性が亢進した場合にセロトニン症候群の発現の危険性が高まる。たとえばパロキセチンなどの代謝にかかわるCYP2D6 遺伝子に多型を認めるpoormetabolizer18,19,20)においては、パロキセチンの代謝が十分になされず、パロキセチンの血中濃度が上昇し、セロトニン症候群の発現の危険性が高まる可能性がある。また、報告例は少ないが身体疾患を合併している患者に抗うつ薬が投与されセロトニン症候群が発現したことから、本症候群にも悪性症候群と同様に何らかの身体的脆弱性が存在すると指摘する報告例21,22)も認められる。この点に関しては、今後症例を重ねて検討しなければならない。
    (4)臨床症状
    • セロトニン症候群の臨床症状は多彩で、Millsは過去に報告された127例の分析から34 症状をとり挙げているが、大きくは
      1. 神経・筋症状 (腱反射亢進、ミオクローヌス、筋強剛など)、
      2. 自律神経症状 (発熱、頻脈、発汗、振戦、下痢、皮膚の紅潮)、
      3. 精神症状の変化 (不安、焦燥、錯乱、軽躁)
      である。
      本症候群は軽症例から重症例まであり、軽症例では頻脈、発汗、散瞳、間歇的な振戦・ミオクローヌス、精神症状の変化などがみられ、発熱はないか軽度である。中等度以上の症例になると、腱反射亢進、持続的なミオクローヌス・振戦に筋強剛が加わり、発熱も40℃近くになる。予後を左右するのは発熱であり、40℃以上の高熱が持続する場合は、横紋筋融解症、腎不全、DIC などの併発の可能性が高くなり、死亡に至る場合もある。
    (5)臨床検査所見
    • 本症候群と臨床症状が類似する悪性症候群との比較になるが、悪性症候群では疾患特異的ではないものの血清クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇や白血球増加が高頻度で認められるが、セロトニン症候群ではこれらの検査は異常を示す頻度が低い。
    • 1991 年以降報告された168 例の統計24)では、白血球増加を認めたのは全体の8.3%、血清CK の上昇を認めた例は全体の26.8%と報告されており、セロトニン症候群に特徴的な検査所見はないと考えられる。
    (6)発症機序と病態
    • Sternbach は、セロトニン症候群の病態を過去の動物実験の所見から5-HT1A 受容体の刺激がその症状形成に重要な役割を担っていると述べている。確かに5-HT1A 受容体の関与は重要であるが、すでに述べたようにセロトニン症候群は多彩な症状からなっており、すべての症状を5-HT1A 受容体の刺激のみで説明することはできない。たとえば、体温は5-HT1A 受容体の刺激では低下する25)。一方、セロトニン症候群では半数近くに発熱が認められる。これは、5-HT2A 受容体の刺激26)が関与していることを示唆させる。
      また、セロトニン症候群では筋強剛などの錐体外路症状や多彩な自律神経症状が認められ、ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系の関与も考えられる。セロトニン症候群の髄液モノアミン動態の研究21)によれば、例数は少ないがセロトニン症候群では5-HT 活性の亢進だけでなく、ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系の関与を示唆する所見も認められる。このように、セロトニン症候群は5-HT 作動薬の投与により脳内の5-HT 活性が亢進するだけでなく、ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系、あるいは他の神経系にも影響が及び、多彩な症状を形成しているものと考えられる。

  • 副作用の判別基準(判別方法)
    • 以下にセロトニン症候群の3 つの診断基準を挙げる。Sternbach の診断基準(表1)は最初に提案されたこと、10 症状のうち少なくとも3 つの症状を認めるという内容から、使いやすく広く用いられているが、セロトニン症候群の診断基準としては特異性が低い。Rudomski らは、Sternbach が参照した
      過去に報告された38 例にその後報告された24 症例を加えた62 例の症状分析から、セロトニン症候群の診断基準を主症状と副症状にわけて、より厳格な診断基準を作成している (のちにBirmes29)らにより改変、表2)。ただし、この診断基準に従うと軽症の症例は見落とされる可能性がある。Hegerl らの診断基準(表3)は、9 症状を点数化し、最高点は27 点で、7 点以上でセロ
      トニン症候群と診断するものである。重症度の判定に有用であるが、使用する上で煩雑な点がある。

表1.Sternbach の診断基準
A: セロトニン作動薬の追加投与や投薬の増加と一致して次の症状の少なくとも3 つを認める
  • 1)精神症状の変化(錯乱、軽躁状態)、 2)興奮、 3)ミオクローヌス、 4)反射亢進、
    5)発汗、 6)悪寒、 7)振戦、 8)下痢、 9)協調運動障害、 10)発熱
B: 他の疾患(たとえば感染、代謝疾患、物質乱用やその離脱)が否定されること
C: 上に挙げた臨床症状の出現前に抗精神病薬が投与されたり、その用量が増量されていないこと

表2.Rudomski らの診断基準 (Birmes らにより改変)
1: セロトニン作動薬を治療に使用(あるいは増量)していることに加えて、下記の少なくとも4
つの主症状、あるいは3 つの主症状と2 つの副症状を有していること
  1. 精神(認知、行動)症状
    • 主症状:錯乱、気分高揚、昏睡または半昏睡
      副症状:興奮と神経過敏、不眠
  2. 自律神経症状
    • 主症状:発熱、発汗
      副症状:頻脈、頻呼吸と呼吸困難、下痢、低血圧または高血圧
  3. 神経学的症状
    • 主症状:ミオクローヌス、振戦、悪寒、筋強剛、神経反射亢進
      副症状:協調運動障害、散瞳、アカシジア
2: これらの症状は、患者がセロトニン作動薬を服用する前に発症した精神疾患あるいはその悪化に該当するものでない
3: 感染、代謝、内分泌、あるいは中毒因は除外される
4: 発症前に抗精紳病薬が投与されていないこと、または増量されていないこと

表3.Hegerl らの診断基準
1: 焦燥 (運動不穏、アカシジア)
  • 0:なし
  • 1:軽度 : 断続的
  • 2:中等度: ソワソワするが静座可能
  • 3:重度 : 持続的。
    • 長時間の静座はほとんど不可能。いつも落ち着かないと感じている。
2: 見当識障害
時、場所、人及び状況に関する見当識。最も重篤な症状に重点をおいて評価する事。時、場所、人及び状況の中、2 つ以上にわたり明らかな障害があれば、重度(3)と評価する。
  • 0:なし
  • 1:軽度
  • 2:中等度
  • 3:重度
3: ミオクローヌス (突然生じる筋肉のピクッとした収縮。「睡眠中におこる収縮」は評価しない)
  • 0:なし
  • 1:軽度 : 数回程、短時間出現。
  • 2:中等度: 繰り返し出現。観察可能。
  • 3:重度 : 持続的に観察される。
4: 腱反射亢進
  • 0:なし
  • 1:軽度 : 腱反射亢進はあるが、反射誘発領域に変化なし。
  • 2:中等度: 反射誘発領域の拡大を伴った腱反射亢進、一過性のクローヌスを伴う。
  • 3:重度 : 反射誘発領域の拡大を伴った腱反射亢進、持続性のクローヌスを伴う。
5: 振戦
  • 0:なし
  • 1:軽度 : 軽微な振戦。機能は障害されていない。
  • 2:中等度: 粗大な振戦。機能(コップをもつ、字を書く、など)は中等度に障害されている。
  • 3:重度 : 重度の振戦。機能(コップをもつ、字を書く、など)は高度に障害されている。
6: 眩暈 (自覚症状)
  • 0:なし
  • 1:軽度 : 軽度で断続的。
  • 2:中等度: かなりの間感じる眩暈。機能(動く、立ち上がる)は障害されていない。
  • 3:重度 : いつでも感じている眩暈。機能(動く、立ち上がる)に障害が及んでいる。
7: 発熱
  • 0:なし:>37℃
  • 1:軽度 : 37℃−37.9℃
  • 2:中等度: 38℃−38.9℃
  • 3:重度 : ≧39℃
8: 発汗 (通常の気温で安静時)
  • 0:なし
  • 1:軽度 : 発汗増加の自覚
  • 2:中等度: 湿った皮膚。発汗が観察される。
  • 3:重度 : 衣服や寝具を湿らせる程の発汗。
9: 下痢
  • 0:なし
  • 1:軽度 : 粘度の低下した便。回数は普段と同じ。
  • 2:中等度: 液状便、あるいは粘度の低下した便。回数は、1〜3 回/日。
  • 3:重度 : 液状便。回数は、≧4 回/日。
(合計点7 点以上でセロトニン症候群)

  • 判別が必要な疾患と判別方法
    • 本症候群の鑑別疾患として挙げられるものには、
      • 悪性症候群、
      • 甲状腺クリーゼ、
      • 脳炎、
      • 中枢性抗コリン薬中毒、
      • 抗うつ薬の離脱症候群
      などがあるが、最も問題となるのは悪性症候群との鑑別である(表4)。
    • 最近よく引用されるCaroff らの悪性症候群の診断基準と上記のセロトニン症候群の診断基準を比較すると、かなり臨床症状が重複している。
    • 一般に、セロトニン症候群に特徴的なのは不安・焦燥・興奮などの精神症状である。頻脈、発汗、血圧変動などの自律神経症状は両症候群に共通して認めるが、筋強剛などの錐体外路症状は悪性症候群に頻度が高い。
    • セロトニン症候群に特徴的なのはミオクローヌスと反射亢進であり、悪性症候群ではその出現頻度は低い。
    • 血液検査では、血清CK 値の上昇と白血球の増加は悪性症候群でその頻度が高い。
    • しかし、セロトニン症候群が重症化するにしたがい鑑別が困難となってくる。
    • この場合は、セロトニン症候群に特徴的なミオクローヌスが認められるか、原因薬剤が抗うつ薬か、といった点から判断しなければならない。
表4.セロトニン症候群と悪性症候群の鑑別

  • 治療方法
    • セロトニン症候群の治療の基本は、原因薬剤の中止と補液や体温冷却などの保存的な治療である。
    • セロトニン症候群は一般に予後は良く、70%の症例は発症24 時間以内に改善するといわれている。
    • しかし、高熱、呼吸不全、腎不全、DIC などを呈し死亡に至る症例も存在する。
    • その場合は合併症に対する治療が必要になってくる。
      重症例に対しては、薬物治療が試みられている。
      1. 最も報告が多いのは、非特異的5-HT 受容体遮断薬であるシプロヘプタジンである。本剤は抗アレルギー薬として本邦で使用されており1 日12 mg まで投与できるが、セロトニン症候群では1 日24 mg 程度まで使用されている
      2. β-blocker であるプロプラノロールは5-HT1A 受容体の遮断作用も有しセロトニン症候群に有効との報告35)もあるが、その報告数は少なく確立された見解には至っていない。
      3. 抗精神病薬であるクロルプロマジンがセロトニン症候群に有効であったという報告も存在する。クロルプロマジンは比較的強い5-HT2A 受容体遮断作用を有するためかもしれないが、やはり報告例が少ない。
      4. セロトニン症候群で認められるミオクローヌスや不安・焦燥に対しては、クロナゼパム・ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤が使用され有効と報告されている。
      悪性症候群の治療薬として認可されているダントロレンがセロトニン症候群にも有効との報告36)もあるが、それを否定する報告31)もありその評価は定まっていない。ただし、ダントロレンがセロトニン症候群を悪化させることはないため、悪性症候群かセロトニン症候群か鑑別の困難な症例に対しては使用する意義はあるものと思われる
  • 典型症例の概要
    • [症例]60 歳代、男性。
      家族歴:特記すべき事項なし。
      既往歴:32 歳頃うつ病に罹患するが、数か月で改善。以後、著変を知らず。
      現病歴:X−3 年1 月、患者59 歳の時、うつ病が再発しA 病院に通院するようになった。治療中、軽躁状態になったが抗うつ薬の減量で改善した。X−2年7 月、バイクを運転中転倒し整形外科にかかるようになったが、その後よりうつ状態が悪化し、同年9 月にA 病院に入院しX 年2 月に退院した。
      以後、外来に規則的に通院していた。この時の投薬は、イミプラミン100 mg/日、炭酸リチウム600 mg/日、アルプラゾラム1.2 mg/日、フルニトラゼパム4 mg/日であった。X 年7 月に入り、患者のうつ状態が悪化し、食事摂取が減少した。7 月21 日外来を受診した際、イミプラミンが175 mg/日に増量された。患者は単身生活のため、近くに住む兄弟が時々様子を見に行っていたが、7 月24 日訪問したところ、患者は自分で起立歩行ができなかった。食事摂取も困難であり、体熱感も伴っていた。
    • そのため、7 月27 日A病院に入院となった。しかし、身体状態が極めて悪く、7 月28 日B 総合病院の内科に転院となった。
    • B 病院入院時、体温39.8℃、脈拍120/分、収縮期血圧70 mmHg であり、意識障害を認めた。血液検査では、白血球数15、400/μl、赤血球数496 万/μl、CK 2、195 IU/l、GOT 114 IU/l、GPT 52 IU/lであり、BUN 89 mg/dl、クレアチニン 5.73 mg/dl と急性腎不全の状態であった。1 日3、000 ml の輸液、ドパミンの投与が行われた。その結果、急性腎不全は改善した。一方、筋強剛、著明な発汗、上下肢の”微細な振戦 (紹介状の記載による)”を認めたため、悪性症候群の診断の下にダントロレン40 mg の点滴静注も開始された。しかし、意識障害、上下肢の”微細な振戦”に改善が認められないため、8 月3 日大学病院精神科に転院となった。転院時、体温37.3℃、脈拍90/分であり、意識レベルはJCS でT-3 であった。
      上下肢、顔輪筋、口輪筋に著明なミオクローヌスを認め、B 病院で振戦ととらえられていた症状はミオクローヌスと考えられた。また、上半身に著明な発汗を観察し、上肢に中程度の筋強剛も認めた。協調運動障害もあり、自力での歩行は不可能であった。血液検査では、BUN 15.8 mg/dl、クレアチニン 0.71 mg/dl、白血球数6、200/μl、赤血球数408 万/μl、CK 14、830 IU/l、GOT 346 IU/l、GPT 61 IU/l であり、 血清リチウム濃度は感度以下であった。発熱、筋強剛、著明な発汗、血清CK の上昇などからB 総合病院内科では悪性症候群と診断されたが、イミプラミンの増量の後より上記臨床症状が出現していること、著明なミオクローヌス、協調運動障害を認めたことからセロトニン症候群と診断し、シプロヘプタジン12 mg/日の投与を開始した。8 月8 日頃には筋強剛、発汗は消失した。シプロヘプタジンの投与後、著明なミオクローヌスは軽減したが、なお間歇的にミオクローヌスが観察された。そのため、8 月15 日よりクロナゼパム4 mg/日を追加した。8 月18 日にミオクローヌスは完全に消失した。

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