キズの治癒
- 東京農工大学の松田浩珍助教授らのグループは神経細胞の成長を促す生理活性物質が傷の治療を促すことを動物実験で突き止めた。
- この物質は『神経成長因子(NGF)』とよばれ、皮膚の再生に関与する生理活性物質の分泌を促すためとみられる。
体内で神経成長因子が造られにくくなる糖尿病などの患者の炎症治療に利用出来る可能性があるという。 神経成長因子は体内で働くタンパク質の一種で、神経網の形成を促す働きがある。実験ではマウスの背中に傷をつけ、この物質による治癒効果を調べた。その結果、傷口にこの成分を塗ると、何もしない場合に比べて2日早い8日で治癒した。傷が治りにくい糖尿病のマウスの実験でも約4日短くなった。 この物質の働きを調べたところ、神経細胞だけでなく、傷口周辺の皮膚細胞や造血細胞がこの成分を作りだし、皮膚の下や免疫にかかわるインターフェロンなどの成分も分泌されていた。これらの生理活性物質の複合的な働きで治癒が促進されるとしている。
痛みを8週間抑える
- 1回の投与で耐え難い痛みを8週間緩和できる痛み止めが研究中。
米ファイザーが開発中の抗体医薬は痛みの原因物質といわれるNGFに働きかけて痛みを元から断つ効果が期待されている。
- NGFは神経細胞の成長に重要な働きをするタンパク質で、炎症が起きた際にも作られる。
ファイザーの抗体医薬はNGFと結合し、体外に排泄する働きを持つ。 2009年、ヒザ変形性関節症の患者を対象に第一相臨床試験を日本で始めた。アメリカでは第三相試験に着手していて、長時間の作用と痛みを和らげる効果が既存の鎮痛剤より大きかった。
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