神経幹細胞
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神経幹細胞・・・脳の神経になる体性幹細胞
脳神経幹細胞を活性化
「1998年、成人の脳で神経細胞が新しく成長することを世界で始めて実証し、脳から分離するすることにも成功したフレッド・ゲージ教授(ソーク研究所)に聞きました。
骨髄から万能性のある幹細胞が見つかっているが、脳の神経幹細胞との関係をどうみるか?
「神経幹細胞は、受精卵が分割を繰り返して発生していく極初期に出来る神経管にある細胞だ。仮に骨髄などに万能性の細胞があるとしても、神経幹細胞とは発生の由来が違うと思う」
・パーキンソン病などの神経変異性疾患の治療には神経幹細胞が最も有効か?
「まだ分からない。ES細胞のほうがうまくいく疾患もあるかもしれない」
・脳にある神経幹細胞の利点は?
「われわれは活発に動き回ったり迷路などの学習に熱心なマウスほど、脳内の神経幹細胞が多くの神経細胞に成長することを突きとめている。これは脳にある神経幹細胞をそのまま刺激して神経細胞になる可能性を示唆している」
・神経幹細胞を使う治療は、移植ではなく薬で刺激する方が有望か?
「まだどちらとも言えない。神経幹細胞が神経細胞に成長するメカニズムがよく分かっていないからだ。細胞を分離して体外に取りだし、増殖の後に移植する方法も開発に取り組んでいる。だが、神経は複雑なネットワークを構築することで機能を発揮する。いしょくをしてそのネットワークは回復させることは、かなり難しい
パーキンソン治療に
協和発酵の桜田一洋主任研究員も神経幹細胞の有効性に注目している。留学先の米ソーク研究所ケージ教授のもとで神経幹細胞を使ってパーキンソン病の治療に有効な細胞を作る研究を進めた。パーキンソン病はドーパミンという神経伝達物質が出来なくなって起こる。チロシン脱水素酵素という物質を使い、大人のマウスの脳から採取した神経幹細胞をドーパミンを分泌する細胞に“変身”させることに成功した。すでに米国でこの技術の特許を出願している。
クローン羊「ドリー」を英ロスリン研究所と共同で生み出した英国のベンチャー企業、ピーピーエル・セラピューティクス社は、人間に最も近い臓器を持つと言われるブタのクローン(複製)作りに成功した。同社のA・コルマン博士は「移植医療にはブタが最有力だ。人間のすべての臓器や組織が万能細胞から出来るとは限らない。人間の遺伝子を導入したブタのクローンを作る研究を続ける価値は十分にある」と言う
増殖の仕組み
「東京大学医科学研究所は慶応大学と共同で、神経の基になる『神経幹細胞』が増殖する仕組みを解明した。東大医科研の後藤典子助教授と岡野栄之・慶大教授の成果で米科学アカデミー紀要に掲載。
神経幹細胞が神経になっていく初期段階でできる『神経前駆細胞』で実験。この細胞の増殖に「FRS2α」というタンパク質が欠かせないことを確認」
マウスの脳から組織
神経・筋肉・心臓・肺・・・・。昨年夏、スウェーデンのカロリンスカ医科大学のA・レンダール博士は大人のマウスの脳の神経細胞が体のあらゆる組織の細胞に変身できる可能性があることを確認した。
神経細胞は分裂して様々な神経細胞になることが知られている。レンダール博士らの研究チームが大人のマウスの脳から採取した神経幹細胞をマウスの受精卵と一緒に培養したところ、最初に神経幹細胞から筋肉の細胞が出来た。
次に分裂が進んだ受精卵に神経幹細胞を移植したところ、、増殖しながら心臓や肺、肝臓、腎臓、消化管などの細胞に分化すること分かった。
大人になった動物の体の中の幹細胞は、ある程度限定された組織や臓器にしか分化できないというのが常識だった。レンダール博士らの研究チームはこの常識を覆した。あらゆる組織の細胞に変身できる『胚性幹細胞』(ES細胞=万能細胞)にそっくりな能力を大人の神経幹細胞も備えていることを示している。
神経幹細胞は大人の体に多数存在するため、受精卵から作るES細胞よりも採集が簡単で、倫理上の問題も少ない利点がある
機能維持にタンパク質が関与
岡野栄之・慶応大学教授のグループは、神経細胞の元になる神経幹細胞が、幹細胞としての機能を維持する仕組みを、タンパク質の働きから解明した。
神経幹細胞に多く存在するタンパク質『Musashi1』が、分化に必要なタンパク質の形成を阻害していた。
神経幹細胞は神経細胞やグリア細胞に分化する一方、幹細胞としての機能も維持するため自己複製を繰り返す。Musashi1は、分化や分裂に必要な遺伝子が働くよう「スイッチ役」となる分子にくっつき、遺伝子を働かなくしてしまう。この結果、いくつかの神経幹細胞は自己複製を続けられる。
Musashi1は神経幹細胞のほか、他の神経の幹細胞や神経の悪性腫瘍にも多く存在する。
恋愛は脳にプラス
恋愛と脳神経の働きとの関係が少しづつ分かってきた。異性への好意は子孫を残すことにつながり生物にとって極めて重要。それだけに、生命活動を制御する脳の働きに密接に関わる。
脳の神経細胞であるニューロンは年齢とともに減少し、頭の働きが鈍ってゆく。
恋愛はニューロンを増やすうえで、一定の効果があるようだ。
東京大学大学院新領域創成科学研究科の久垣辰博准教授によると、米国などで性行動と脳の働きに関する研究成果がいくつも出始めている。
ニューロンの減少を食い止めるには、もとになる神経幹細胞を適度に刺激すると良いとされる。
記憶を司る海馬に特定の脳波が伝わると、神経幹細胞は刺激される。
恋人を見たときに・・・海馬が大きく反応するというデータもある。
これらをつなぎ合わせると、恋愛はニューロン新生に貢献しそうだ。
好きな相手をこんな風に喜ばせようとひらめき、「チル反応」が起きることもある。この反応は、背中がしびれるようなゾクゾクした感覚を伴い、快楽のホルモンと呼ばれるドーパミンが多く分泌され脳の神経系の成長を促すという。
一方、独レーゲンスブルク大学のグループはラット実験で、オスはメスと交尾後、不安が減りリスクを冒す行動をいとわなくなることを見つけた。脳内では性行動やストレス反応に関連するホルモン「オキシトシン」の分泌が増えていた。
神経幹細胞が刺激され老け込まないためには、活動的で出会いが多いが良いとも言える。
順番決定の仕組み
2009年、奈良先端科学技術大学院大学のチームは、神経幹細胞から神経系の細胞が作られる順番を決めている仕組みをマウス実験で解明した。
最初にできた神経細胞が幹細胞の特定のタンパク質を活性化し、別の細胞ができるように働きかけていた。波平昌一助教と中島欽一教授らの成果で2/18のデベロップメンタル・セルに掲載。
神経幹細胞はまず記憶や学習に関係する神経細胞を作り出し、その後、神経細胞を保護する役割などを持つ「アストロサイト」と呼ばれる細胞を作ることは知られていたが、その仕組みが不明だった。
研究チームは神経幹細胞と神経細胞を同じ皿で一緒に培養するとアストロサイトが速く作られるのを突き止めた。ただ、これに幹細胞にある「ノッチ」というタンパkプ室の働きを抑える薬剤を加えるとアストロサイトができなくなった。神経細胞がノッチを活性化して[NF-1]という別のタンパク質を働かせて、アストロサイトを作る遺伝子に鍵をかけていた「メチル化」を解除する仕組みをあるのが分かった
脳を修復
2009年、国立循環器病センター研究所の柳本広二・脳血管障害研究室長らは脳卒中などで脳が傷つくと、脳を覆っている膜で神経細胞に成長する『神経幹細胞』が働き出すことを突き止めた。
ラットを使った実験成果。
機能が損なわれた脳を修復するシステムと考えられる。
人間の脳にも同様の仕組みがあるとみらている。
研究チームは脳が損傷を受けると神経細胞の中でカルシウム濃度が上昇する現象(カルシウムウエーブ)が起きることに注目。
脳卒中患者で数日〜1週間後に起きることから、ラットでこの現象を再現した。その結果、脳を覆う軟膜のすぐ下にある細胞が神経幹細胞の特徴を示した。その後、幹細胞から成長する神経細胞なども観察できた。
成果は米医学誌ストローク電子版に掲載
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