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 新生児薬物離脱症候群
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新生児薬物離脱症候群   
 (厚生労働省
英語名:Neonatal withdrawal syndrome or Neonatal abstinence syndrome
妊娠中お産が近づいてから、けいれんを抑える薬、不安感などの精神的な症状を和らげる薬を使用していたお母さんから生まれた赤ちゃんに薬の作用として、
  • 「ぐったりしている状態」や
  • 「手足をブルブルふるったりする状態」
があらわれることがあります。
薬の影響がより強い場合には
  • 「けいれん」や、
  • 「息をとめる」
などの一時的な症状が現れることがあります。
こうした赤ちゃんの一時的な変化を新生児薬物離脱症候群と言います。
新生児薬物離脱症候群をそのまま放置すると、お母さんが生まれてきた赤ちゃんを一般的な家庭環境で育てることが困難になります。また、お産の前に投与された薬だけでなく、日ごろ摂取している嗜好品が、赤ちゃんの生まれてからの症状に影響を及ぼすことがありますので、お産をする施設の担当医に使用中の薬や嗜好品を正直に話してください。そうすることにより、新生児薬物離脱症候群を起こしやすい薬や嗜好品であるかどうかを確認して、必要であれば赤ちゃんが生まれた時から新生児薬物離脱症候群をチェックして、必要に応じた治療をすることができます。


新生児薬物離脱症候群とは?
お産の前に投与された薬や常用している嗜好品が、胎盤を通過して生まれてきた赤ちゃんに一時的な効果を及ぼし、その物質が赤ちゃんの体から排泄される過程で、赤ちゃんの脳、消化管や自律神経の症状が一時的に現われることです。
  • 脳の症状として、
    • 筋肉の緊張がなくなってグッタリしたり、
    • 不安興奮状態で手足をブルブルふるったりすることがあります。
  • もっと重い症状として
    • 息を止めたり、けいれんしたりすることがあります。
  • 消化管の症状として、
    • 下痢や嘔吐がみられる場合もあります。
  • 自律神経の症状として、
    • たくさん汗をかいたり、熱をだしたりします。
これらの症状は、他の病気でも見られますので、検査によって他の病気との区別を必要とする場合もあります。


早期発見と早期対応のポイント
  1. 欧米では、ヘロインやメサドン(経口でヘロインと似た作用を持ち、半減期が長い。日本では販売されていません)の麻薬常用妊婦から出生した児の新生児薬物離脱症候群の症状について詳細に報告されている。
  2. 日本においては、麻薬常用者の頻度が低くあまり問題にならず、抗てんかん薬や精神神経用薬服用妊婦から出生した児の新生児薬物離脱症候群が問題となる。
  3. 新生児薬物離脱症候群を発症する非麻薬性の薬物を表1 に示す。この症候群を発症する頻度の高い新生児の早期発見には、妊婦の常用している薬物や嗜好品を問診により聴取することが不可欠である。そして、この症候群発症の可能性のある児においては、チェックリストスコアを経時的に記載する。チェックリストスコアは、
    • Finnegan ら(表2)や
    • Lipsitz(表3)のスコア
    が国際的には知られているが、
    • Finnegan らのスコアを簡略化した磯部らのスコア(表4)
    も有用である。これにより早期の治療を行い、母親の児に対する不安感の除去および児の症状の重篤化を予防する。


表1 新生児薬物離脱症候群を発症する可能性のある麻薬以外の主な母体投与薬物および嗜好品等
  1. 催眠・鎮静剤
    • 1)バルビツール系薬物
      • バルビタール、フェノバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、アモバルビタール、アモバルビタールナトリウム、ペントバルビタールカルシウム、ペントバルビタールナトリウム、チアミラールナトリウム、チオペンタールナトリウム
    • 2)非バルビタール系薬物
      • フルニトラゼパム、ニトラゼパム、ブロモバレリル尿素
  2. 抗てんかん薬
        フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム
  3. 抗不安薬
      クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、メダゼパム
  4. 向精神病薬
      クロルプロマジン、ブロムペリドール
  5. 抗うつ薬
      ノルトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミン、フルボキサミン
       塩酸パロキセチン水和物、塩酸セルトラリン
  6. 非麻薬性鎮痛薬
        ペンタゾシン
  7. 気管支拡張薬
        テオフィリン
  8. 嗜好品
        アルコール、カフェイン


表2.新生児薬物離脱症候群の管理における評価点数 
(Finnegan スコア)
(兆候と症状) (評価点数)
甲高い啼泣 2
連続的な甲高い啼泣 3
哺乳後1 時間未満の睡眠 3
哺乳後2 時間未満の睡眠 2
哺乳後3 時間未満の睡眠 1
Moro 反射の過多出現 2
著しいMoro 反射の過多出現 3
興奮時の軽度な振戦 1
興奮時の顕著な振戦 2
安静時の軽度な振戦 3
安静時の顕著な振戦 4
筋緊張亢進 2
全身けいれん 5
激しい指しゃぶり 1
哺乳不良 2
吐きもどし 2
噴水様嘔吐 3
軟便 2
水様便 3
脱水 2
頻回のあくび 1
くしゃみ 1
鼻づまり 1
発汗 1
斑点形成 1
38.3℃未満の発熱 1
38.3℃以上の発熱 2
60 回/分以上の呼吸数 1
陥没呼吸を伴った60 回/分以上の呼吸数 2
鼻の擦りむき 1
膝の擦りむき 1
足指の擦りむき 1
生後初日は1 時間毎に、2 日目は2 時間毎に、それ以後は4 時間毎に点数をつける。
7点以下は経過観察し、8 点以上になれば薬物療法をする。


表3.新生児薬物離脱症候群評価点数 
(Lipsitz スコア)
兆候 評価点数
0 1 2 3
振戦
(手足の筋活動)
正常 空腹時または刺激時に最低1 回 安静時に、中等度または顕著に増加哺乳時または気分の良い時に治まる 安静時に、顕著に増加または継続発作様の動きを継続する
興奮性
(過度な啼泣)
なし わずかに上昇 空腹時または刺激時に中等度から重度 安静時にさえ顕著
反射 正常 亢進 著しい亢進
便 正常 爆発的であるが、正常回数 爆発的で、1 日8 回以上
筋緊張 正常 亢進 硬直
皮膚擦過傷 なし 膝や肘の赤み 皮膚の裂け目
呼吸数 回/分 <55 55-75 76-95
反復性くしゃみ なし あり
反復性あくび なし あり
嘔吐 なし あり
発熱 なし あり
1 日2 回、授乳の前90 分で評価した。点数は、退院あるいは生後1 週間までつけた。
臨床的には、4 点以上と未満で症状を分けることができた。


表4.新生児薬物離脱症候群のチェックリスト(磯部ら、1996)
症状と所見 点数 症状と所見 点数
A.中枢神経系 B.消化器系
  傾眠 1   下痢 2
  筋緊張低下 1   嘔吐 2
  筋緊張の増加 1   哺乳不良 2
  不安興奮状態* 3 C.自律神経系
  安静時の振せん 3   多呼吸 1
  興奮時の振せん 2   多汗 1
  易刺激性** 2   発熱 1
  けいれん 5 D.その他*** 1
  無呼吸発作 5
  • 注:バイタルサインを記録する時間以外でも症状があれば項目にチェックする。
  • *:睡眠障害、哺乳後の啼泣、なき続けること
    **:モロー反射の増強を含む
    ***:その他の症状として、頻回の欠伸、表皮剥離(鼻、膝、踵)および徐脈などに注意
【治療】8 点以上で治療することが多いが、それ以下でもけいれん、無呼吸の頻発や母親の育児困難症状等により治療を適応することがある。



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