hypertonic-hypokinetic syndrome
錐体外路症候群
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関連情報
薬剤性パーキンソニズムパーキンソン」「運動障害」「起立障害」「歩行障害」「手足がふるえる」「ふるえる」「錐体外路症候群」「足なえ病」「トリプレットリピート病」「

脊髄を通る伝導路
  • 末梢からの刺激を中枢に、中枢からの興奮(インパルス)を末梢に伝達するために、数個のニューロン(神経元)が連絡している。この神経元の連絡を、伝導路という。
(伝導路の分類)
  1. 連合神経路・・・脳の一定部における同側諸部を結ぶ神経路
  2. 交連神経路・・・左右大脳半球諸部を結ぶ神経路
  3. 投射神経路・・・大脳皮質と脊髄、身体末梢を結ぶ神経路
    • 下行性伝導路(脳から興奮を末梢へ伝える神経路)
      1. 錐体路・・・・骨格筋の随意運動を支配する神経路
      2. 錐体外路・・
        • 骨格筋の運動や緊張、筋群の協調運動などを反射的、不随意的に支配する神経路
    • 上行性伝導路(末梢の感覚器官で受けた刺激を中枢まで伝える神経路)
(上行性伝導路)=求心性伝導路
  • 末梢の受容器からの刺激を中枢に伝えるもので、皮膚知覚、深部知覚、嗅覚、視覚、味覚などの伝導路がある。
    1. 脊髄視床路
      • 皮膚の温度感覚、痛覚と触覚の一部を視床に伝える。
      • 脊髄内で交叉して側索と前索を上行する
    2. 後索路
      • 触覚の一部、深部感覚を延髄に伝える。
      • 軸索を上り、延髄でニューロンを変える
    3. 脊髄小脳路
      • 運動や姿勢維持などの調節に関与する。
      • 軸索を通り小脳へ行く。
(下行性伝導路)=遠心性伝導路
  • 中枢の興奮を、末梢の筋および腺に伝える伝導路
    1. 錐体路・・・骨格の随意運動を支配する神経路
      • 皮質核路(皮質延髄路)
        • 眼球運動
        • 咀嚼運動
        • 表情運動
        • 嚥下運動に関与
      • 皮質脊髄路
        • 皮質核路以外の全身の骨格運動(脊髄神経支配)に関与する
    2. 錐体外路
      • 骨格筋の運動や緊張
      • 筋群の協調運動
      などの反射的、不随意的に支配する神経路
脊髄 (灰白質)
  • 神経細胞体が蜜に集合している部分
(白質)
  • 神経細胞の軸索が、無数の束となって走行する部分

上行性伝導路 (求心性伝導路)
  • 上行性伝導路
    • 末梢の感覚器官で受けた刺激を、中枢まで伝える経路。
    • 求心性伝導路、皮膚知覚、深部知覚、嗅覚、視覚、聴覚、味覚などの伝導路がある。
    1. 薄束(はくそく)
      • 身体下半身の判別C感覚の伝達(接触覚・運動覚・振動覚)
    2. 楔状束(けつじょうそく)
      • 身体上半身の判別C感覚の伝達(接触覚・運動覚・振動覚)
    3. 楔状束小脳路
      • 上肢の無意識の体性感覚を伝達
    4. 外側脊髄視床路(がいそくせきずいししょうろ)
      • 疼痛と温度覚を伝達
    5. 前脊髄視床路(ぜんせきずいししょうろ)
      • 非判別性接触覚、
      • びまん性接触覚を伝達
    6. 脊髄視蓋路(せきずいしがいろ)
      • 疼痛感覚の伝達
    7. 脊髄網様体路(せきずいもうようたいろ)
      • 臓器の代謝の安定性
      • 臓器機能の調整
    8. 前(腹側ふくそく)脊髄小脳路
      • 下肢からの無意識の体性感覚を伝達
    9. 後(背側はいそく)脊髄小脳路
      • 身体中央から下肢までの無意識の体性感覚を伝達


pathway
伝導路
○上行性伝導路(求心性伝導路)・・・
体の様々な感覚器官からの情報を脳へ伝える神経経路。
○下行性伝導路(遠心性伝導路)・・・・
体を動かす指令を脳から筋へ伝える神経経路。
○「錐体路」と「錐体外路」がある.
ヒトの運動路には錐体路と錐体外路がある。錐体路は哺乳類になって新生した運動路であるが、錐体外路はすべての脊椎動物に
ある古い運動路。
錐体路 皮質脊髄路(corticospinal trct)
骨格筋の随意運動を支配する神経路。
錐体路のうち、脊髄まで下行するものを皮膚脊髄路といい、脳幹の運動核に終わるものを皮膚核路(皮膚延髄路)という。
錐体路はヒトの随意運動に重要な役割を担っているが、錐体路は大脳皮質への経路なので、ほ乳類よりも下等な生物では発達していない。
  • 「外側皮質脊髄路」
    「前皮質脊髄路」
    「皮質延髄路」
がある。
(錐体路の機能)
  1. 「動眼神経核」「滑車神経核」「外転神経核」を支配→眼球運動
  2. 三叉神経核を支配→咀嚼運動
  3. 顔面神経核を支配→表情運動
  4. 舌下神経核を支配→嚥下運送
  5. 皮膚脊髄路の機能
    • 皮膚核路以外の全身の骨格筋の運動に関与
錐体外路 extrapyramidal tract
錐体路(pyramidal tract)以外の下行性伝導路の総称。大脳皮質から脊髄へ下行する運動経路のうち、延髄錐体を通過するものを錐体路のうち、延髄錐体を通過するものを錐体路、それ以外を錐体外路という。
反射や運動の円滑化に寄与している。
  1. 「赤核脊髄路」と「視蓋脊髄路」
    1. 「赤核脊髄路」
      • 下行側の屈筋活動を促進、伸筋活動を抑制する
    2. 「視蓋脊髄路」
      • 視覚情報により頭部を反射的に調節する
  2. 「外側前庭脊髄路」と「内側前庭脊髄路」
    1. 「外側前庭脊髄路」
      • 伸筋ニューロン直接促通
      • 屈筋介在ニューロンで抑制
    2. 「内側前庭脊髄路」
      • 促通と抑制の両方を調節
  3. 「網様体脊髄路」
    1. 屈筋ニューロンに促通刺激
    2. 伸筋ニューロンに介在性抑制
錐体外路を構成するのは
  1. 脳幹脊髄錐体外路系
    1. 発生学的にもっと古い錐体外路系で、脳幹の運動核(網様体・赤核など)が脊髄前角細胞からの情報を効果器に伝える
    2. この系は[視覚脳][平衡脳]やその他の系とも連絡を持ち情報を効果器に伝える
  2. 皮質錐体外路系
    • 錐体路とは別の大脳皮質からの新生系
  3. 線条体淡蒼球錐体外路系
    • 黒質のドーパミンを受けて骨格筋の緊張を調節する
  4. 小脳錐体外路系
    • 小脳由来の系で、平衡感、筋のバランス感を効果器に伝える
の4つがある。
錐体外路系は全体として、全身の骨格筋の働きがスムーズに、律動的な調和がとれた運動をするように、無意識的に反射的に調節している。
錐体外路症候群 ⇒錐体外路系の異常によって現れる症候は筋のトーヌスの異常と不随運動で、筋緊張亢進と運動減少を主とする症候群とに大別される
不随運動には
・アテトーゼ(脳性麻痺
ジストニー
振戦(パーキンソン病)
・バリスムス
・舞踏症状
・ミオクローヌス

(副作用で錐体外路症候群になる医薬品)

筋緊張亢進、
運動減少を主とする症候群
筋緊張低下、
運動過剰を示す症候群
(hypertonic hypokinetic syndrome) (hypotonic hyperkinetic syndrome)
1.パーキンソン症候群=黒質が侵される。
2.マンガン中毒
3.ウイルソン病の末期(羽ばたき運動)
4.ハラーホルデン・スパッツ病
1.舞踏病
2.アテトーゼ
3.バリスムス=視床下核が侵される


錐体外路症状(厚生労働省)
大脳から出る運動経路の1つである錐体外路の障害によって起きた、不随意運動を特徴とする一群の状態をいう。
症状 各種の不随意運動
原因となる主な薬剤 精神神経用剤(ブチロフェノン系、フェノチアジン系など)、
抗うつ剤、
消化性潰瘍用剤(クレボプリド)、
消化器官用剤(シサプリド、メトクロプラミド、ドンペリドン)、
抗潰瘍・精神安定剤(スルピリド)など

薬剤性パーキンソニズム (厚生労働省
英語名:Drug induced Parkinsonism
同義語:錐体外路障害、錐体外路症状
体内のドーパミンが不足して起きるパーキンソン病と同じ症状を示す「パーキンソニズム」は、医薬品によって引き起こされる場合もあります。
主にドーパミンの作用を弱める抗精神病薬など精神科領域の医薬品でみられることがあるので、何らかのお薬を服用していて、次のような症状がみられた場合には、放置せずに医師・薬剤師に連絡してください。
  • 「動作が遅くなった」、
  • 「声が小さくなった」、
  • 「表情が少なくなった」、
  • 「歩き方がふらふらする」、
  • 「歩幅がせまくなった(小刻み歩行)」、
  • 「一歩目が出ない」、
  • 「手が震える」、
  • 「止まれず走り出すことがある」、
  • 「手足が固い」
1. 薬剤性パーキンソニズムとは?
パーキンソン病※と同じような症状を示す病態をパーキンソニズム(パーキンソン症候群)と呼び、そのうち、医薬品の副作用としてパーキンソン症状が現れるものを薬剤性パーキンソニズムといいます。
パーキンソン病とは、体内のドーパミンという物質が不足して起きる病気で、抗精神病薬など精神科領域の医薬品の中には、このドーパミンの作用を弱めるものがあり、パーキンソン病と同じ症状を引き起こすことがあります。

2. 早期発見と早期対応のポイント
「動作が遅くなった」、「声が小さくなった」、「表情が少なくなった」、「歩き方がふらふらする」、「歩幅がせまくなった(小刻み歩行)」、「一歩目が出ない」、「手が震える」、「止まれず走り出すことがある」、「手足が固い」などの症状がみられた場合で、医薬品を服用している場合には、いったん中止して、医師・薬剤師に連絡してください。
この症状を比較的簡単に判定するために、患者さんの経過を観察する方法が、介護施設などで使用されています。この方法は、患者さん自身が自分で評価するためにも使われているもの
です。
以下の表は、パーキンソニズムに関係する評価項目を抜き出したもので、症状の程度で0 点(全くない)、1 点(ほとんどない)、2 点(時々ある)、3 点(良くある)、4 点(頻繁にある)で評価し、合計点が6 点を超えたら、薬剤性パーキンソニズムが疑われます。ただし、この表による評価は絶対的なものではないので、患者さん、または患者さんの家族の方が異常を感じた時には、医師・薬剤師に連絡してください。
(0点)
全くない
(1点)
ほとんどない
(2点)
時々ある
(3点)
よくある
(4点)
頻繁にある
筋肉がつる
筋肉が固い
運動がゆっくりになった
体の一部が勝手に動く
揺れる感じがある
落ち着きがない
よだれが出る
この表の項目の合計点が6 点を超えたら、薬剤性パーキンソニズムを考慮したほうが良いと考える。この表を使用した報告によると、ケアマネージャーの方など一般の方でも病態を評価することができ、良い方法であるということである。ただし、この表は絶対的なものではなく、いつも一緒に暮らしている家族の持つ印象が重要である。家族がおかしいなと思った時に、この表を当てはめてみると、おそらく6 点を超えていることが多いと考えられる。
家族が気づく症状は、すべてパーキンソン病と同じである。
  • 動作が遅くなった
  • 声が小さくなった
  • 表情が少なくなった
  • 歩き方がふらふらする
  • 歩幅が狭くなった(小刻み歩行)
  • 一歩目が出ない
  • 手が振える
  • 止まれず走り出すことがある等である。また、
  • 便秘がひどくなった
  • 手足が固い
等と訴えることもある。多くの神経疾患と同様に、この病態も血液などの検査で診断が決定するという特異的な所見はなく、症状からこの病態を判断することが多い。疑った場合には、原因になると報告のある医薬品の投薬を受けているかが、重要である。原因になる可能性がある主な医薬品のリストを本マニュアルの最後に掲載した。疑った時に、その表を参考に原因となる医薬品を服用していないかを確認すべきである。
参考資料:「Liverpool University Neuroleptic Side-Effect Rating Scale(LUMSERS)」

副作用の発現時期は、投与開始数日から数週間のことが多く、全患者の90%以上が20 日以内に発症しているとされる。ただし、多くの医薬品があり、個々に関する詳細な点は後述する。薬剤性パーキンソニズムでは、ジスキネジア・アカシジアを伴うことが多い。また、副作用が発生しやすい条件として、高齢者・女性・使用薬剤の量が多いなどが挙げられる。


副作用の概要
パーキンソニズムとは、パーキンソン症候群とも言われ、パーキンソン病の時に見られる症状あるいはそれらを呈する疾患の総称であり、その詳細は以下で説明する。関連するものとして薬剤性の不随意運動には様々なものがあるが、ここではパーキンソニズムに関してのみ述べる。
不随意運動一般に関しては、6)その他の項で簡潔に説明してあるが、詳細は別マニュアルとして記載される予定である。
症状
パーキンソン病と区別がつかない症状を呈する。従って、無動・固縮・振戦・突進現象・姿勢反射障害・仮面様顔貌などの症状を呈する。
症状の軽い時点で、家族・本人が気づく場合は、動作が遅くなった・手が振える・方向転換がしにくい・走り出して止まれない(突進現象)・声が小さくなった・表情が少なくなった・歩き方がふらふらする・歩幅が狭くなった(小刻み歩行)・一歩目が出ない等と訴える事が多い。
特発性パーキンソン病と薬物性パーキンソニズム(錐体外路障害)の差というと、以下の事が上げられるが、後述のように薬物により特発性パーキンソン病の発症時期が早くなることもあると考えられており、この区別は絶対的なものではない。
  • 薬剤性パーキンソン病(錐体外路障害)の方が
    ・進行がはやい
    ・突進現象が少ない
    ・左右差は少なく、対称性の事が多い
    ・姿勢時・動作時振戦が出現しやすい
    ・ジスキネジア・アカシジアを伴う事が多い
    ・抗パーキンソン剤の効果が少ない
このほか、もともと精神疾患患者に使用する薬剤によりパーキンソニズムが生じる事が多いため、統合失調症のカタトニアと副作用での無動の極端な状態を区別しにくい場合もある。
発症までの経過
投与数日から数週間のうちに発症する事が多い。90%の症例が20日以内で発症している。ブチロフェノン系、フェノチアジン系、ベンザミド誘導体では、数日から数週間が多い。ベンザミド誘導体, カルシウム拮抗薬の場合、数週から数ヶ月と長い事が多い。まれに一年以上のこともあり得る。
発症頻度・リスクファクター
抗精神病薬での発生頻度は、15〜60%と幅のある報告がある。それぞれの薬で発症頻度のデータが論文という形で報告されているものもある。これに関してはそれぞれの医薬品の特徴という項目で述べる。ドーパミン拮抗薬では、軽い症状まで入れると発症頻度は50%を超えるかもしれないが、臨床的に問題になる頻度は15%くらいである(Hubblle JPet al, 1997)。
高齢者・女性・薬物の量が多い事が、薬剤性パーキンソニズムと有意に相関した。以上の情報をふまえ、高齢の女性に大量の抗精神病薬を投与するときは、パーキンソン症状をよく観察し、副作用を早めに把握する事が必要である
発生機序と薬剤ごとの特徴
薬剤性パーキンソニズムの機序は、単純に説明出来るものでなく、それぞれの医薬品によっても少しずつ違った要素があると考えられる。また、多くの場合パーキンソニズムの原因になるとともに、遅発性ジスキネジアをはじめとする不随意運動の原因ともなりうる。そして、その発生機序もお互いに関連している。
・ドーパミン拮抗作用がある薬剤
  • 本マニュアルの最後の表で、抗精神病薬・抗うつ薬・制吐薬・胃腸調整薬などとして分類されているものの中に、ドーパミン拮抗薬が含まれている。精神症状を起こす機序が、中脳-皮質あるいは中脳-辺縁系の機能過剰状態であるという仮説に基づき、治療薬としてはこれをブロックするドーパミン拮抗薬が使用されている。そこで必然的に、脳でのドーパミン機能を障害し、パーキンソン症状を出すと考えられる。約80%のドーパミン受容体(D2 受容体)がブロックされるとパーキンソン症状が出現すると言われる(Farde L et al, 1988)。またこれらの抗精神病薬で黒質細胞の脱分極性ブロックが起こり、パーキンソン症状を作り出すという報告もある(Bunney BS, 1984)。同じ医薬品がパーキンソニズム以外に、アカシジア、遅発性ジスキネジア、などの原因ともなる。パーキンソニズム以外の副作用の発生機序としては、長期にブロックされていると、受容体の感受性などが変化し、単にブロックされたと言う以外の変化が生じ、D1, D2 等での抑制・促通のバランスに狂いを生じ、そのために上記のような症状を呈するとされている。抗精神病薬のなかで、clozapine, quetiapine は症状を出しにくい。その理由は、多くの抗精神病薬は本来の精神疾患に対する効果を発揮するのに、受容体の90%位をブロックする必要があり、パーキンソニズムを生じてしまうが、これらの医薬品は、60%くらいのブロックで本来の効果を発揮でき、パーキンソニズムがでる程まで薬物濃度を上げなくて良いからである。
・カルシウム拮抗薬
  • 脳代謝改善薬としてカルシウム拮抗剤が広く使われた時には、それらによるパーキンソニズムの頻度は非常に高かった(葛原ら、1997, 2000,2004)。その一つの例として、薬剤性パーキンソニズムの患者172 例中、74 例がcinnarizine による薬剤性パーキンソニズムであった(MartiMaso et al, 1991)という報告がある。ただし、日本ではかなり前に発売中止になり、その頻度は減少した。この医薬品のパーキンソニズム発生機序としては、線条体でのシナプス後で受容体を医薬品がブロックする(Takada et al, 1999)、シナプス前でドーパミンの再取り込みを障害する(Terand et al, 1999)等の機序が提唱されている。これら両者の機序が合わさっているのかもしれない。
・発症前パーキンソニズムの関与
  • 薬剤性パーキンソニズムの時にかならず問題になるのは、発症前の軽症のパーキンソン病患者に医薬品を投与した事が、症状の発現に関与していないかという事である。言い換えると、元々パーキンソン病になる傾向があった人に症状が出たと言う仮説である。これを支持する報告として、医薬品を中止し、薬剤性パーキンソニズムになった患者の経過を長期に追った所、48 例中5 例(Stephen PJ, Williamson J、1984), 72 例中6 例(Marti Maso et al, 1991)で、パーキンソン病になり治療を受けているという結果がある。この頻度は一般人口がパーキンソン病になる確率より有意に高く、パーキンソン病になる傾向があった方が、薬剤性パーキンソニズムになりやすいと結論している。さらに、PET 検査を薬剤性パーキンソニズムの患者で施行すると、13 例中4 例でF-DOPA 検査で異常が認められた(Burn DJ, Brooks DJ、1993)。この結果も、上述の仮説を支持するものである。更に、パーキンソン病のリスクファクターとして高齢が挙げられている。高齢者ほどパーキンソンニズムの発症し易さを有していると考えると、発症前パーキンソニズムが、何らかの関与をしているという仮説と矛盾しない。
・抗がん剤
  • テガフールをはじめとする抗がん剤が、薬剤性パーキンソニズムの原因医薬品として列挙されている。この機序は、これらの医薬品による白質脳症の結果として、パーキンソニズムが発症するわけで、白質脳症としての他の多くの症状とともにパーキンソニズムを呈するという事になる。この副作用に関しては、「白質脳症」のマニュアルを参照頂きたい。
・血圧降下剤
  • レセルピンもパーキンソニズムを起こす医薬品である。この機序は、シナプスでのドーパミンを枯渇させるという、レセルピンの持つ本来の作用による。
・頻尿治療薬
  • 尿失禁などに頻回に使われる塩酸プロピベリン等が、パーキンソン症状の原因になると報告されている(杉山、1997)。構造式が、向精神薬などと類似しているため、同様な作用が出現する可能性が考えられている。本剤は、脳血管障害のある患者などに使用されることが多く、副作用が出現しやすい状況がしばしばある。副作用発現時には、服用を中止する事を念頭において使用すべきである。
・免疫抑制剤
  • 神経ベーチェット病患者に免疫抑制剤を投与すると、ベーチェット病の症状の一部として、パーキンソニズムを呈することがある。この場合、その他のベーチェット病の症状を呈する事から、判別は難しくない。
・認知症薬
  • 認知症の治療薬として使用されている塩酸ドネペジルは、元来がアセチルコリン作動薬のため、パーキンソニズムを悪化させる可能性が理論的にはある。予測どおり、副作用として発現したという報告もあるが、1例のみの報告であり、結論は得られていない。
・抗てんかん薬
  • 抗てんかん薬は、てんかん発作を抑制すると言う本来の目的以外に、様々な不随意運動の治療薬としても使われている一方、副作用としても不随意運動を誘発すると言う性質を持っている。中毒性脳症の症状としての不随意運動から、てんかん自体の症状の一部としての不随意運動、更に医薬品へのアナフィラキシー的な反応としての生じる不随意運動まで様々である。その中で、抗てんかん薬でパーキンソニズムが出現するのは、非常に珍しい。大量のジアゼパムでパーキンソニズムが発症したという報告がある( Suranyi-Cadotte BE. et al, 1985; Sandyk R, 2003 )。フェニトイン(Presnsky AL et al, 1971; Goni M et al, 1985; Harrison et al, 1993)、カルバマゼピン(Critchley et al, 1988)等でも一例報告がいくつかある程度で、基本的に珍しい状況と考えて良い。バルプロ酸でも、問題となる報告がある。一報告だけであるが(Armon et al, 1996)、12 ヶ月以上、バルプロ酸を投与されていた患者36 例中33 例でパーキンニズムが出現したと言っている。ただ、中止とともに3 ヵ月から12 ヶ月で消失し、経過は良性であるとしている。これ以外に(文献参照)、これほどの頻度の報告はなく、まれな病態と考えられている。抗てんかん薬による副作用の機序としては、元々小さい病変を持っている患者で、しかもある医薬品に特異的な反応を示すという機序で出現する場合と、いわゆる薬物中毒という機序で出現する場合、さらに両者の機序が合わさって起こっている場合があると言われる。バルプロ酸での頻度の高い報告をした著者らは、バルプロ酸がミトコンドリアの機能障害を誘発したためと推測している(Armon et al, 1996)。
臨床検査、画像所見、病理所見
白質脳症、ベーチェット病などの一部の症状として出現した場合は、それぞれの疾患に特異的所見があるが、一般的薬剤性パーキンソニズムに特異的検査所見はない。従って、臨床症状から判断する事が重要となる。

3.副作用の判別基準・判別方法
  • パーキンソニズムを呈するあらゆる疾患が判別(鑑別)として挙げられる。多くの疾患はパーキンソン症状以外の所見も伴っているため、容易に鑑別出来る。それぞれの疾患に特異的な画像検査、生化学検査、遺伝子検査などがあり、それらにより診断を確定出来る疾患も多く含まれている。これらの個々の疾患に関する鑑別点はここでは述べない。薬剤性パーキンソニズムとの鑑別で一番問題となるのは、やはりパーキンソン病である。従って、パーキンソニズムを見た事があるか、パーキンソニズムを容易に判断出来るかが問題となる。神経内科医でない方がこれを判断するには、前述したLiverpool University NeurolepitcSide-effect Rating Scale (LUMSERS)が有用である。この基準で疑わしい時に、神経内科医に相談するのも一つの方法である。薬剤性パーキンソニズムは頻度の非常に高い疾患であるため、日常診療において常に頭に置いて診療を進めることが診断に至る第一歩である。パーキンソン病と薬剤性パーキンソニズムとの判別では、常に以下の3 つのうちのどれかを考えながら、診療に当たる必要がある。
    • すなわち、
      (1)純粋に薬剤性パーキンソニズムだけの患者
      (2)偶然純粋にパーキンソン病が発症した患者
      (3)今回薬剤により元々あった軽いパーキンソン病が明白となった患者
    のどれかである。
    (1)の場合、投与中止だけで症状は消失するはずである。(2)の場合は、投与を中止しても全く症状は影響を受けない。(3)の場合は、投与の中止により症状のある程度の改善は見られるが、臨床的にコントロールするのに、抗パーキンソン病薬が必要となる。理論的には、この3種類の可能性が考えられるが、実際にはこれほど明確でない事が多い。特に長期間投与した場合、本来(1)の状況であった患者でも、長期投与による二次的変化のため、投与中止をしても一部のパーキンソニズムの症状を残す事もよくある。先にも述べたように、(3)の可能性が頻度としては多いと考えられる(発症前パーキンソニズム)。
    これらを判別する客観的手法はほとんどないが、近年注目を浴びているMIBG 心筋シンチ検査が判別に役立つと思われる。すなわち、<1>の可能性の時だけ、検査が正常となる。ただし、これは決定的な鑑別法ではなく、パーキンソン症状がある患者で、後述の表に出てくる医薬品を投与されているか調べる事が大切である。そして、医薬品の投与が確認されたら、その投与をまず中止してみて、その後の経過から上述のどのパターンの患者かを判断するのが、オーソドックスなやり方であり、唯一の方法であろう。もちろんこの過程で、パーキンソニズムを呈する多くの疾患の鑑別のために、電気生理学的検査・画像検査・生化学検査などを行っておく必要がある。以上より、とにかく疑わしい医薬品を中止してみる事が大切である。



4.治療法
治療の基本は、原因となった治療薬の中止である。多くの場合、投与中止により症状は可逆的に改善する。ほとんどが中止から2、3 ヵ月で症状が消失するが、時に半年くらいかかることもある。症状の改善を待つ間には、抗コリン剤やアマンタジンを使用して、対症療法を行なうのが一般的である。抗精神病薬などをどうしても中止出来ないときは、薬剤性パーキンソニズムを起こしにくい非定型精神病薬を使用することを勧める(Casey et al, 1989; Saltz etial, 2000)。特に高齢者では、この投与薬の選択とともに、使用する医薬品の量を最小限にとどめることも考慮すべきである。
以下の3 段階の治療方針が考えられるが、この方針が主として対象としているのは、抗精神病薬の投与に関してである。
@ 投与開始から併用する予防的治療
抗精神病薬・整腸薬であるドーパミン拮抗作用のある医薬品以外では、この治療を考える必要はほとんどないであろう。予防的治療とは、医薬品を開始するときに予防薬を一緒に投与することである。この治療法の効果・有用性に関しては、まだ結論が出ていない。予防的治療によりかえって精神症状を悪化させることもあり、誰にでもこの治療が推奨される訳ではない。パーキンソン病の家族歴が有り・高齢者で・女性の患者では、抗コリン剤またはアマンタジンを使用して予防をはかるのが一般的である。
A 急性期治療
急性期治療とは、医薬品投与により急激にパーキンソン症状が出現した時に行う治療である。抗コリン剤や抗ヒスタミン薬で急性期は対処する。この場合、ドーパミンやドーパミンアゴニストは有効でないことが多い。また、アマンタジンは有効であるという報告がある(Casey 1993)。かなり重症の場合は、それでもドーパミンを点滴で使用すると言う方法もあるが、その有効性に関しては結論が出ていない。なお、いわゆる悪性症候群では特別な救急処置が必要であり、「悪性症候群」のマニュアルの該当項目を参照されたい。
B 長期間向精神薬を使用する場合の予防治療
3 ヶ月以上抗精神病薬を使用するときは、長期的に予防をする必要がある。ここでは、投与開始から併用する予防的治療と異なり、年齢・男女の限らず、全員の患者で本治療を考慮する。この場合、抗コリン剤を使用する。
ドーパミン拮抗作用のある医薬品による薬剤性パーキンソニズムでは、ほとんどの場合、投与の中止で症状の改善を見るが、改善しないときは非定型的抗精神病薬に変更する。前述したように、非定型的薬剤は薬剤性パーキンソニズムを誘発しにくいからである

ドーパミン拮抗薬剤以外の薬剤性パーキンソニズムは、投与の中止だけで治療可能であるが、時に症状が中止後も持続することがある。この場合、特発性パーキンソニズムを医薬品が顕在化させただけなのかもしれない。このことに関しては結論を出せないが、治療としては医薬品の投与を中止して様子を見ることになる。


5.典型的症例
  • 【症例1】
    • 70 歳代、男性
      脳梗塞後遺症
      使用薬剤:塩酸フルナリジン10 mg
      ※現在は、販売されていない。
      使用期間:88 日間
      脳梗塞により左片側麻痺となったが、歩行器で歩行が可能であった。
      投与67 日目 ヨチヨチ歩きとなり、歩行器の使用が困難との訴えがあった。パーキンソン症候群と考え、メシル酸ブロモクリプチン、レポドパ・塩酸ベンセラジドを投与したが症状は改善せず上記のいずれの薬剤も投与中止とした。投与81 日目 歩行が全く不可能となった。塩酸フルナリジンの投与中止。投与中止により症状は改善。
      投与中止70 日間 投与前の状態に回復した。
  • 【症例2】
    • 10 歳代、男性
      十二指腸潰瘍
      使用薬剤:リンゴ酸クレボプリド1.5 mg/日
      使用期間:3 日間
      併用薬:塩酸ラニチジン、塩酸ピレンゼピン
      投与開始3 日目 片側の顎筋・三角筋の攣縮、強直が出現した。錐体外路症状と診断。
      塩酸ジフェニルピラリン注射液及びリン酸ベタメサゾンナトリウム注射液を投与。
      投与後、約1 時間で回復。
      ※ この患者は以前にメトプロクロプラミドで類似の副作用を経験。
  • 【症例3】
    • 60 歳代、男性
      虚血性心疾患
      使用薬剤:塩酸チアプリド 25 mg
      使用期間:7 日間
      虚血性心疾患があり、バイパス手術を施行した。術後創部の痛みが強く、不眠が続いていた。不眠に対して、塩酸チアプリド25 mg を1 日1回投与した。
      投与開始2 日目 小刻み歩行の傾向が出現した。
      投与開始5 日目 さらに不眠が増強したため、塩酸チアプリド75 mgを1 日3 回に分けて投与を開始した。
      投与開始6 日 振戦、固縮、無動、突進現象、転倒傾向、仮面様顔貌、姿勢反射障害などのパーキンソン症状を認めた。
      投与開始8 日 症状が薬剤性パーキンソン病によると考え、塩酸チアプリドを中止し、フマル酸クエチアピン4 mg を一21日3 錠、3 回に分けて投与を開始した。
      投与開始15 日(投薬中止して、約一週間)
      パーキンソン病の症状は、消失した。