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氷の眼 私は高校生の時、父が喫茶店を兼業することになり、時々手伝いに行った。その頃は今のように製氷器がなく、氷屋から買い入れた氷柱を、アイスピックで割って小さな塊にしたのをアイスコーヒーなどに入れていた。氷柱をアイスピックで突いて氷を割るのだが、力余って手の平まで突いて、血だらけになっていると、「眼を突くんだよ」と先輩に言われた。が、透明な氷のどこに眼があるのか分からない。先輩が「ここだ!」といっても、どこか分からない。仕方なく手当たり次第に、突いたり叩いたりしていると、パカッと氷がきれいに割れる。氷の眼に当たったのだ。それを繰り返しているうちに何となく眼が分かって来る。
眼を突くと氷はきれいにパラパラと割れて、突いた後がつかない。
漢方でいう「証」とは、この眼のことである。証にぴったりあたると、病気は一気に氷解する。

証に随って治療することを「随証療法」という。
日本では江戸時代から、随証療法が発達してきた。
  • 証とは、症状のパターン認識です。
    そのための正しい手法は、データを集め、パターンを突き止め、パターンを説明するメカニズムを見いだすこと。
2つの意味 証には2つの違った意味がある。
1つは、症候の意味である。頭痛腰痛下痢のような病証をさす場合。
他の1つは随証治療とか、証に随って治すとかいう場合の証である。
近代医学の診断は、病の本態を探究し、その原因を究め、病名を決定するにあるが、漢方では、これとは別に、証の決定という問題がある。この場合の証は、症候の意味ではなく、この病人(個々の具体的な病人)には、どんな治療を施すべき確証があるかという意味の証である。証にはあかしの意がある。この場合の証は頭痛、悪寒などの個々の症状を指すのでなく、この病人の現すいろいろの症状を、漢方独自の診断方法によって、総合観察して、その病人に葛根湯で治る確証があれば、その病人には葛根湯の証があると診断し、小柴胡湯で治る証があれば、小柴胡湯の証があると診断する。病名の変わりに、処方名の下に証の字をつけて診断名とする。
だから、同じ病気でも、個人差によって、証がちがってくるから、用いる処方もちがってくるのである。またまったくちがう病気でも、証が同じであれば、1つの処方を双方に用いることになる。《漢方診療医典》
大塚敬節
(古方派)
証は証拠とか確証の意味であります。葛根湯証とは、葛根湯の適応症という意味で、感冒と診断するところをアスピリン証というのと同じ意味です。
病名の代わりに処方名を診断して、その処方の下に証の字を書いて病名の代わりにして、この病人が葛根湯で治ると診断します
松田邦夫
(古方派)
証は、ある病的状態に際して出現する複数の統一概念である。
証はその分類統合に際して、治療的意味を中心に整理されており、最小の表現単位は処方名である。
すなわち、大分類は陰証、陽証、虚証、実証のごとき表現であり、最終的には葛根湯証、柴胡桂枝湯証のごときものである。
すなわち、
陰陽虚実・・・・・大分類
生薬の証・・・・・中分類
処方の証・・・・・最終分類
となる
矢数有道 証とは、証拠、確証のことである。病が内にあって、その証拠が体表に見られ、これによって、処方を決定するものである。
証には主証と客証がある。
また、方と証の的確なものを正証といい、やや、変異したものを異証という。
森田幸門 証とは、病人の現す生物反応としての症候複合を、医師がその治療の必然性に相関してとらえる病の本質である。
龍野一雄 証とは、薬が効くための条件。
証とは、この患者の今の状態を表す病像である。
西山英雄 証とは、病人の自覚症状と他覚症状とを集め、これらのうちから、生命に最も重大な関係のあるもののみを選出し、統一された一連の有機的連関を持った病状群とし、これをさらに、医師の知識と経験によって価値判断した結果である。
証は薬方を決定する証拠であり、薬方によって証明されるものである。
寺沢捷年 証とは、患者が現時点で現している症状を気血水、陰陽、虚実、寒熱、表裏、五臓、六病位などの基本概念を通して認識し、さらに病態の特異性を示す症候を捉えた結果を総合して得られる診断であり、治療の指示である。
結局、どのような病態に、どのような根拠で、何ゆえに効果があるかを、漢方的にしめしたものである(弁証論示)
荒木正胤 漢方治療は原則として病名を問わず、病人が具体的にあらわしている“証”によって、用いる薬方と薬量を決定します、したがってガンといえども、この原則によって判断します。判断の基準となるのは病の陰陽虚実と病者の陰陽虚実ですが、それを望聞問切の四診によってあらかじめ知り、それと腹診と脈診によって針灸の治療点、用いるべき薬方を決めます。

主証と客証
  • 処方を用いる証に、主証と客証がある
    • 主証というのは、いつでも必発の症状で、客証はこの主証があるために、現れたり、かくれたりする症状である。
    半夏瀉心湯を例にとると)
    • 心下痞硬は主証で、嘔吐下痢は客証である。
    • だから、心下痞硬という主証がなければ、嘔吐や下痢があっても、半夏瀉心湯のではない。
    • また、心下痞硬があれば、嘔吐や下痢がなくとも半夏瀉心湯を用いるのである《漢方診療医典》


アーユルヴェーダ チベット医学 漢方
ヴァータ ルン(風) 気
ピッタ チーパ(胆汁) 血
カパ ベーケン(粘液) 水


中医学
(中国漢方)
中医学・・・毛沢東が主宰した、文化大革命以後確立された中国伝統医学。
  • (文化大革命)
    • 中華人民共和国で1966〜1976まで続いた革命。封建的文化、資本主義文化を批判し、新しく社会主義文化を創生しようという運動。
  • 1956年、中央政府が共通テキストの作成を指示。
    • 鍼灸と湯液を結ぶ統一理論の必要性。
      陰陽五行説を中心とする。
  • 日本の漢方と区別して、中国のものを中医学ともいう。
    • 一般に、処方量も日本よりかなり多い。


証を「病位」「病性」「病勢」「病因」「病質」に分けて考える
  • 病位
    1. 表裏・・・表証と裏証
    2. 六経・・・太陽病・少陽病・陽明病・太陰病・少陰病・厥陰病
    3. 三焦・・・上焦・中焦・下焦
    4. 四要・・・衛分・気分・営分・血分
    5. 経絡
  • 病性・・・・・・・・熱証・寒証
  • 病勢・・・・・・・・実証実証・虚証虚証
  • 病因
    1. 六淫・・・風邪・寒邪・暑邪・火邪・燥邪・湿邪
    2. 四傷・・・気傷・血傷・痰傷・鬱傷
  • 病質・・・・・・肝木・心火・脾土・肺金・腎水


病因@
六淫 熱証・寒証を引き起こすに至った病因を6つに分類したのが六淫。
劉完素(金元四大家のひとり)が持ち込んだ。
風邪 神経が犯されたとき。
アレルギー
脳に起因する病気
熱証・寒証
寒邪 低温の侵襲 寒証
暑邪 体温が発散できなかったとき。 熱証
火邪 何らかの刺激で興奮状態になった。
刺激的症状
熱証
燥邪 体内における水分不足 熱証・寒証
湿邪 体内の水分排泄異常 熱証・寒証

病因A
四傷 実証実証・虚証虚証を引き起こすに至った病因を4つに分けたものが四傷
朱丹渓(金元4大家のひとり)が取り入れた
気傷 生気異常 気
血傷 血液異常 血
痰傷 水分異常 水
鬱傷 消化異常 気血水


(正常)
津液
  が含まれる
陽は機能的な面を表す。「気」と関係が深く「陽気」と表現される
陰は物質的な面を表す。「血・津液・精」と関係が深く「陰液」と表現される
陽気と陰液のバランスがとれていれば無病と考える。
くずれ方を弁証してゆく


気虚
(気傷+虚証)
陽虚
(虚寒)
陽虚陰盛
(寒盛)
疲れやすい
体力がない
自汗
消化不良
息切れ
(気虚+寒証)
顔面蒼白
四肢の冷え
悪寒
・温かい飲み物
さらに寒証
が顕著



血虚
(血傷+虚証)
陰虚
(虚熱)
陰虚陽盛
(火旺)
手足のしびれ
筋肉の痙攣
・ツメがもろい
・異常脱毛
月経困難
動悸
・静脈怒張
(血虚+熱証)
顔面紅潮
煩熱
・熱感アリ
・冷気を好む
口渇
・冷たい飲み物
さらに熱証が
顕著になる

補陰=滋陰



陰陽両虚
(気血両虚)
陽盛
(火旺)(実熱)
陰盛
(寒盛)(実寒)