悪性貧血
- ☆患者は友人の妻君で、子供も2人あった。従来健康であったが、夏に急性胃腸カタルをやってからどうも腸の具合がわるく下痢しがちで、ひどく痩せてしまった。秋頃になってあまり体重が減少するので、海軍病院で診てもらうと腸結核であるといわれた。その後、中野の組合病院に入院したが、ここでは腸結核の上に腹膜炎も伴っていて、その上ひどい貧血であるから重症であるといわれた。そこで、友人は知人のS博士に診てもらった。同博士は血液学の大家で、病理学の著書を出しているひとであるが、血液検査をして見て、首を横に振った。どうもいかんというのである。血液検査の結果は赤血球が114万(正常なものは450万)で、正常なる婦人の1/4しかないのである。こうした例は学界に類が稀で、2例の報告はあるがいずれも不治に終わったから、この患者も難しいであろうとのことであった。
だが友人はかって肺結核で半年間も血痰が止まらずに困っていたのが、私(代田文誌)の灸治により血痰が泊まり、肺結核も全治した経験を持っているので、最後の希望を私にかけて治療を頼んできた。そこで、私は往診したが、顔面蒼白、全身は水腫をきたし、顔面と足首とはことにひどく、熱も38.5℃ほどあり、咳嗽が頻発している上に、食欲が無くて、しかも毎日数回下痢しているのである。
これを診た時は、どうしても助かりそうに思えなかった。だが、私は勇気を起こした。そこで、
(腹部)中、上、水分、気海、大巨
(背部)身柱、風門、大杼、至陽、膈兪
(手足)曲池、左陽池、尺沢、足三里、太谿
に半米粒大の灸3壮ずつすえた。灸し終わったが、不安でならぬので、湯液を飲んではどうか?と相談すると、飲んでみたいという。そこで、大塚敬節先生を紹介し、往診を求めた。大塚先生は快く承諾し、往診し、投薬してくれた。
その後、患者は日ごとに体の調子がよくなり、数日にして平熱となり、水腫もとれ、食欲が出てきた。そうして下痢も止まったのである。かくて灸治と湯液を併用すること約1ヵ月にして退院し、自宅で養生することになり、次に往診したのは、前の往診後1ヵ月半の時であった。そのときはすでに食事も起きて自分でとり、便所へも自分で行っていた。その後1ヵ月の灸治と湯液の服用で、完全に治癒し、血液検査の結果は正常となったのである。
この悪性貧血の治に当たっては、灸治も相当に効いていることは確かであるが、大塚先生の与えられた帰脾湯が非常に効いているようで、患者はあの薬をのむと食欲が増すといって、1日でも薬がきれると早く薬をとりに行ってくれるようにと主人に督促するというふうであった《灸療雑話》
頭がふらつく
頭がボーッとする
胃下垂
胃潰瘍
胃がもたれる
胃無力症
息切れ
<9>遺精:
- ☆遺精白濁《漢方後世要方解説》
☆白濁。淋渋、虚証の者《矢数道明》
過労:
- ☆元来胃腸虚弱者が、思慮過度により脾がやぶれ心身過労となる。
感情不安定:
- ☆今俗に云う癇証で、しきりに物事を苦にして種々の容体を言うて、自ら大病となし、或いは自刃せんとし、或いは悲傷する者がある。しかし時によっては、起居、飲食とも変わりなく、診察してみると、多くは脈が沈細で、人参や附子を用いたい様である。しかしこのような証はひどい虚証のように見えても、うっかり人参や附子の入った方剤はやれないものである。先ず疏肝散(柴胡剤など)がよい。
1婦人が癇症だといって治を乞うた。そうして言うに、私の病気は癇症だけれども、帰脾湯を用いないで下さいという。そこで余がその訳を詰問すると、婦人がいうのに、先年、私の夫が癇症にかかってある医者に治を乞うたところ、その医者が虚証と判断して帰脾湯を与えた。するとたちまち上逆、発狂して自殺してしまったと。余はこれを信ずることが出来ず、疑問に思っていた。ところが、その後、また1人の婦人が癇性で治を乞うたが、虚証のように見えるので帰脾湯を用いたところ、たちまち発狂して、井戸に飛び込み死んだ。そこで始めて、前の婦人の云ったことが、こじつけでないことを知り感服した。その後、また1人の男子の癇症を診察し、よほどの虚証であたから、帰脾湯を用いたところ、1年ばかりで全治した。
帰脾湯は、証に適中すれば、その効は神の如くすばらしいが、一度誤るときは、人を殺すこともすみやかである。よくよくつつしみ、虚実を弁別して用いなければならない。《椿庭夜話》
顔面蒼白
驚悸
経閉:
- ☆(気の鬱滞による慢性)
☆《陳念祖》曰く、女子に不得隠曲(欲求不満)あり。之を心に鬱し、心、血を生ずる能わず。血、脾を養う能わず、是れに由って水穀衰少、以て精微の気を化する無く、而して血脈遂に枯れ、月事時に下ら能わず。余、凝して「帰脾湯鹿茸麦門冬」として二十餘在を服して癒える。
血尿:
- ☆諸出血、貧血がひどく、心動悸、食欲不振を訴える者《矢数道明》
血便:
- ☆大便下血、凉血の薬を用い、効かざる者、:「槐花・黄芩」《雑病翼方》
月経不順:
- ☆全身衰弱による者《矢数道明》
☆思慮過度による月経不順《矢数道明》
☆遅れる者:「附子乾姜」
☆早き者:「牡丹皮・梔子」《方読便覧》
血小板無力症
元気がない
健忘症:
- ☆健忘を治すの総司なり《古今方彙》
☆思慮過度、大病後の気虚脱《漢方後世要方解説》
☆老衰健忘《漢方後世要方解説》
☆この方のゆく健忘は、血にもよらず、また柴胡剤、瀉心剤、石膏剤などの症でもない。老人が中風の下地をなす時、多く健忘となる。このところに、この方の効がある。老境の健忘にはよく効のある方である。たとえば、自分のそばにある火盆をここへ持ってこいと命ぜんとして、その火盆の名を忘れ、或いは親戚・朋友の姓名などを忘れなどすることは、老境に多くあるものである。壮年の人の健忘には桃核承気湯などのゆくこともあるが、老人には駆血剤のゆくことは少ない。しかしまた壮年にも帰脾湯のゆく処がある。
帰脾湯のゆく処は、多くは面などツヤツヤし、或いは半身不遂なども有る者である。しかしこのような症を帰脾湯の主症というのではない。この場は世人、多くは中風とみるものである。帰脾湯は老壮を論ぜず、健忘の症があっても、攻撃剤を用いることの出来ない処に用いる。世医、帰脾湯の処へ、瀉心剤などを与え効が無い、難治などと云って、捨てておく者がある。
、 健忘は癇に属する者もあり、血に因る者もある。血による者には、茯苓杏仁甘草湯が効がある。《方輿》
更年期障害
衂血
- ☆諸出血、貧血がひどく、心動悸、食欲不振を訴える者《矢数道明》
☆しばしば衂血を繰り返し、甚だしく貧血をきたし、顔面、亢進まで蒼白となり、食欲不振、栄養不足となった者。白血病、悪性貧血などに起こる衂血に本方がよい(漢方診療医典)
嗜臥少食
子宮ガン
子宮出血:
- ☆《矢数道明》
“48歳の婦人。常に顔色が悪く、痩せ型ですこぶる神経質である。この婦人も、上衝・耳鳴り・頭痛・肩こり・動悸・腰痛・悲観に陥りやすく、年に3、4回、猛烈な子宮出血を起こし、1ヶ月以上も続くことが、この3、4年の週間であった。腹が虚軟で、心下から臍傍にかけて著明な大動気を触れ、脈は弦である。
昨年の春、例年のように出血に見舞われ、私が芎帰膠湯を与えると出血はさらに加わり、虚羸衰弱を増し、唇や舌が蒼白になるほどますます貧血してしまった。そこで<血崩血脱甚だしきに四物湯を用うる勿れ、万物を故殺す。血を補うは気を補うにしかず>で、帰脾湯を与えると、出血は速やかに止まり、全身症状は異常に好転した。その後、本患者は長年の服薬を廃するまでによくなった”
子宮内膜炎
自汗
自閉症
-
- ☆腹力低下者の精神不安、不眠、抑うつ、言語障害などを目標に(漢方診療医典)
自律神経失調症
小児の言葉を発するのが遅い。《済世薬室》
食欲不振:
- ☆神仙労(神経性食欲不振症):「呉茱萸」《内科摘要》
☆食思不振《漢方後世要方解説》
☆全身衰弱で他の補剤を服して反って胃に泥む者《矢数道明》
心悸亢進
心臓神経症
心痛:
- ☆押さえると痛みが止まる=虚痛、顔面蒼白、神経症状、食欲不振、腹部軟弱、貧血疲労、心悸亢進、舌無苔
神経性胃炎
神経性心悸亢進症:
神経衰弱
衰弱
舌質<淡白>
舌苔<無苔>
躁鬱病
帯下:
血の道症:
- ☆女子には必ず調経し、「帰脾湯」を以てその源を治め、「逍遥散」を以てその流れを治す。ただ、婦人体肥厚する者は恐らく子宮脂満なり。別に「二陳湯川芎香附子」を用い、丸と為す。《雑病翼方》
腸出血
疲れやすい
低タンパク血症
手足冷たい
多夢
盗汗
動悸:《方読便覧》
吐血:
軟便~水様便
のぼせ:
バルトリン腺炎
白血病
腹がはる
疲労倦怠感
ヒステリー:
貧血:
- ☆ひどいときは「四物湯」。
☆6月20日初診の6歳の男児。生まれて間もなくから貧血があり、その貧血の原因が不明であった。約2年前までは時々ケイレンしてひきつけたが、最近は発作がなくなった。よく風邪を引く、下痢はしない。
貧血はかなりひどく、枯れかかった竹の葉のような色をしている。 脈は微細である。腹診すると、脾臓は臍の下方まで肥大し、肝臓は季肋弓より2横指径ほど下にまで肥大している。このような症状から考えると白血病のように見える。しかしそれにしては、経過が長すぎるように思われる。患家は生計が苦しいので、ここ2、3年は医療を受けていないという。従って、精密な検査を受けたこともないという。
私はこれに帰脾湯を10日分与えた。ところが、それきり来院しな いので、どうなったかと心配していたところ、2ヶ月ほどたって又来院した。みると、貧血が減じ、血色もよくなり、脾臓は縮小して、初診時の半分ぐらいとなり、肝臓も触れなくなっていた。私はおどろいた。この調子なら治るかも知れないから、もっと続けて飲むようにいって、また10日分を与えたが、それきり来院しない。《大塚敬節》
☆原因不明の貧血、悪性貧血、再生不良性貧血などに用いられる。
☆貧血、出血、不眠、健忘、心悸亢進などのある虚証の患者に用いる。体質虚弱の者、病後で衰弱している者、精神の過労から発病したものなどによい(漢方診療医典)
☆熱状があれば、加味帰脾湯に。
フケ:
- ☆頭上白屑に、虚熱上衝と足の冷えがある者《矢数道明》
不安神経症:
- ☆62歳男性。主訴、抑鬱気分、不安、不眠等。
約3ヶ月前、10歳になる末の息子を急病で亡くし、その直後は気づかなかったが、日が経つにつれて“かわいそうなことをしてしまった”と始終考えているようになった。1ヶ月後には食欲は全くなく、ヤセが目立ち、気分は常に悲しく憂鬱で、何事も手につかなくなり、ぼんやりして、考えがまとまらず、仕事も出来ないので勤めをやすむようになった。夜はまったく眠れなかった。最近は大分気持が落ち着いたので、勤めに出るようになったが、身体がだるく、疲れやすく、時々、心臓が止まりそうな感じが起こり、不安になる。喜忘や物事に対する興味も湧かず、酒を飲んだ時だけ元気になる。その後では反って具合がわるくなるという訴えであった。
現症。発病当初は、抑鬱状態が中心であったのに対し、初診時は、心気的訴えと、不安が著明であり、集中困難、無関心、不眠などを伴っていた。身体的には、顔色やや蒼白で潤いがなく、冴えない。身長は大で、肉つきは中等、筋肉も適度に緊張している。脈は沈細でやや遅、腹部は弾力有り、腹証には特徴がない。腰部の志室穴に圧痛が著明である。盗汗がある。
治療及び経過。帰脾湯香附子・黄連を投与した。黄連は不安、不眠等に対して鎮静させる目的であった。
1週間後、
- 気分爽快となり、食欲が出て、次第に眠れるようになった。
2週間後、
- 気分はすっかり安定し、食欲も進み、体重も回復したと云って、すっかり元気になった。
1ヶ月後、上腕痛と、時に気分が沈む日があると言う。しかし3週 以後は休薬していた。《山田光胤》
不正性器出血:
不眠症:
- ☆(眠りが浅い)
☆心身過労の結果、不眠症を発し、その人貧血し、元気が大変衰えた者《矢数道明》
腹部軟弱
慢性胃腸炎
慢性淋疾患
脈沈細微
無力感
めまい
目眩
瘰癧:
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