多剤耐性
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抗生物質が効かない」「院内感染」「敗血症」「セラチア菌

効果
無し
複数の薬剤でも効果無し
「抗生物質の効かない耐性菌が、医療現場を脅かしている。特に、複数の薬に対する耐性を備えた多剤耐性が大きな問題になっている。抗生物質の投与量の多い日本で際立つ現象だという。この状況を放置すれば、有効な治療法を自ら放棄してしまうと、専門家は警鐘を鳴らしている。
<10種類使っても無効>
昨年10月、横須賀市立市民病院(神奈川県横須賀市)に入院していた20代半ばの男性が死亡した。死因は緑膿菌が血液中で増殖したことによる敗血症。この男性は白血病で1年前から抗ガン剤による治療を受けていた。抗ガン剤でガン化した白血球を殺していくと、免疫機能も衰え体内の細菌が増殖する。抗生物質で抑えるのが常識だ。だがこの患者の緑膿菌は、10種類近いどの抗生物質でも殺すことが出来なかった。担当医だった小川浩司血液免疫科主任医長は「このような多剤耐性の緑膿菌は初めて。なすすべがなかった」と振り返る。
新潟大学医学部附属病院でも先月、多剤耐性の緑膿菌による敗血症の患者が死亡していたことが明らかになった。院内感染の可能性も指摘されている。
緑膿菌やセラチア菌はグラム陰性桿菌と呼ばれる棒状の菌。健康な人の腸内やノドなどににもいて、通常は無害だ。おとなしい菌でも体力の弱った患者の血液中で一気に増えると、死に至る危険がある。これらの中で「多剤耐性能力を獲得した菌が国内に広がりつつある」という懸念が急速に高まっている。
<米の2倍使う>
日本の医療機関ではグラム陰性桿菌の感染症の治療に、1980年代後半から切り札として開発された抗生物質カルバペネムを多用してきた。その使用量は世界のほぼ半分、専門医にしか利用を認めていない米国の約2倍に達する。「日本が一番商売のしやすい市場」(外資系メーカーの営業担当者)と言われるほどだ。
カルバペネムに耐性能力を持つセラチア菌は使用からまもない91年、愛知県内の病院で最初に見つかった。この菌はカルバペネムを分解する能力を身につけていた。発見者の国立感染症研究所の荒川宜親部長は「20分ごとに分裂する細菌が、外部の遺伝子を取り込んだり自分の遺伝子を替えて新しい能力を獲得することは容易。新薬の耐性菌はすぐに生まれる」と解説。薬を使い続ければ結果的に耐性能力を持った菌だけが生き残っていくと指摘する。
移植手術など高度化する医療技術には、感染症の予防対策が欠かせない。感染症に効く薬が無ければ、せっかくの医療技術も台無しだ
エイズ 多剤耐性のエイズウイルスに「ダルナビル」
仕組み 大阪大学のグループは抗生物質などの複数のクスリが病原菌に効果が無くなる『多剤耐性』が起きる仕組みを解明した。
村上聡・大阪大学助教授と科学技術振興機構のグループの成果で、ネイチャー(電子版)に2006年8/17に掲載。
細菌の表面には、細菌に入り込んだ複数のクスリを排出できるタンパク質があるが、詳しい仕組みが分かっていなかった。研究グループは大腸菌の表面にある最も強力な排出役のタンパク質『AcrB』をSPring-8(兵庫県佐用町にある大型放射光施設)で調べ、クスリを排出する様子を観察した。
このタンパク質はまず、細菌内からクスリを吸い上げる入り口を開け、いったん中心部で抱え込む。最後は逆流しないように出口だけを開けてクスリを外に向けて放出することが分かった。
研究グループによると、大腸菌の仲間のサルモネラ菌などでも同様の仕組みがあると考えられるという。ガンに抗がん剤が効かなくなっていくのも、同じようなメカニズムがあると見ている。
多剤耐性菌は様々な抗生物質を使っている間に生まれ、院内感染を引き起こす原因となっている
耐性を菌同士が伝達
東大医学部教授だった故秋葉朝一郎氏は多剤耐性菌出現の仕組みについて独創的な仮説を提示した。それは多剤耐性菌というのは突然変異と選択の繰り返しによって1つずつ耐性を獲得していくのではなく、何かの作用で多数の抗菌剤が効かない菌が一度に誕生するというものだった。当時の学会の常識からすれば突飛としか言い様のない仮説だったが、その根拠になったのは、疫学や微生物遺伝学の常識では説明出来ない不思議な現象が起きていたからだ。
抗菌剤が効く菌で始まった流行で、感染源が同じなのにやがて4剤に対して耐性のある菌の患者が発生した。また患者に1つの抗菌剤を与えただけなのに一挙に4剤耐性菌を排出するようになった。分離された耐性赤痢菌は4剤耐性菌が圧倒的に多く、1〜3剤に対する耐性菌は少なかった。抗菌剤1つ1つに対して順次耐性を得ていくならば、1〜3剤耐性菌の方が4剤耐性菌より圧倒的に多くなければ説明がつかない。
秋葉教授らは、腸管内にいる多剤耐性菌の影響で赤痢菌が一挙に多剤耐性を得るのではないかと考え、多剤耐性大腸菌と赤痢菌を混合培養した結果、多剤耐性赤痢菌を得ることに成功した。同じ頃名古屋東市民病院の故落合国太郎病院長も独立に同じ結論に達していた。
この発見に続いて日本でも多剤耐性の研究が急速に進展し、日本の研究者が世界の最先端を独走。
不思議な現象を起こす「犯人」は後に『Rプラスミド』と呼ばれる、菌と菌との接合によって伝達される遺伝因子であることが明らかになった。
やがて半信半疑で傍観していた欧米の研究者も参加して、国際的にも最もホットな研究領域の1つになった。その結果、、多くの菌でプラスミドの伝達によって耐性が広がることが分かり、耐性菌問題はますますその重要性を増してきている
86%の病院で 複数の抗生物質が効かない多剤耐性緑膿菌について、厚生労働省の研究班がアンケート調査を行ったところ、約86%の病院で菌が検出されたことが2007年3/15分かった。
研究班が2003年から2006年6月までの、全国540施設にアンケート調査を行い、約340病院から回答を得た。その結果、約290施設の病院で菌が検出された。
菌が検出された患者数は、1000床あたり数人が大半で、100人以上の病院もあった。
定着 多剤耐性アシネトバクター
によるお院内感染を受け、帝京大学病院は2010/10/2、外部専門家による調査委員会の初会合を開いた。帝京大学病院では昨年8月以降59人が感染し、34人が死亡した。