低血糖とは? (厚生労働省)
- 低血糖とは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が低くなった状態です。血糖値は、健常人では空腹時でも70 mg/dLより低下することはほとんどありません。血糖値が60‐70
mg/dL未満になると、「冷や汗がでる、気持ちが悪くなる、急に強い空腹感をおぼえる、寒気がする、動悸がする、手足がふるえる、目がちらつく、ふらつく、力のぬけた感じがする、頭が痛い」などの症状が出現します。これは低血糖に対して血糖を上昇する働きのあるアドレナリンやグルカゴンが分泌されるために生じる症状で、交感神経症状と呼ばれます。さらに血糖値が30
mg/dL未満になると、「ぼんやりする、ボーッとしている、うとうとしている、いつもと人柄の違ったような異常な行動をとる、わけのわからないことを言う、ろれつが回らない、目の前が真っ暗になって倒れそうになる、意識がなくなる、けいれんを起こす」などの症状が出現します。これは、脳の機能が低下するために生じる症状で、中枢神経症状と呼ばれます。低血糖になっても直ちに治療を行えば危険はありませんが、中枢神経症状が数時間以上続くと、稀に脳の重大な後遺症や生命の危険が生じることがあります。
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早期発見と早期対応のポイント
- 低血糖は、糖尿病のお薬だけでなく、抗不整脈薬などを服用した場合でも起こることがあります。本マニュアルを参考に早期の発見と早期の対応をこころがけてください。
- 次のような症状がみられた場合には、放置せずに医師・薬剤師に連絡してください。
- 冷や汗がでる、
- 気持ちが悪くなる
- 急に強い空腹感をおぼえる
- 寒気がする
- 動悸がする
- 手足がふるえる
- 目がちらつく
- ふらつく、
- 力のぬけた感じがする
- 頭が痛い
- ぼんやりする
- 目の前が真っ暗になって倒れそうになる
などの症状が急に出現したり持続したりするが、食事をとると改善する場合
また、ご家族の方も、患者さんに前に書いたような症状がみられたり、
- ボーッとしている
- うとうとしている
- いつもと人柄の違ったような異常な行動をとる
- わけのわからないことを言う
- ろれつが回らない
- 意識がなくなる
- けいれんを起こす
などに気づいた場合には、薬の副作用の可能性があるので、すぐに医師または薬剤師に相談してください。
ただし、低血糖になっていても症状がみられない場合も多く、医療機関を受診した時に、血糖を測定してはじめて指摘されることもあります。
低血糖は、早朝空腹時、昼食前、タ食前、就寝時、とくに食事の時刻が遅れたときにみられることが多いです。また、食事とは関係なく、運動量が多すぎたときにも起こりやすくなります。通常は、「冷や汗がでる、気持ちが悪くなる、急に強い空腹感をおぼえる、寒気がする、動悸がする、手足がふるえる、目がちらつく、ふらつく、力のぬけた感じがする、頭が痛い」などの症状を自覚することが多いです。このような場合、すぐに吸収の速い糖分(砂糖や砂糖を多く含むジュースなど)を摂取すれば通常5分以内に症状は改善します。ただし、α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合には必ずブドウ糖を摂取してください。一旦低血糖症状が改善しても30分ほどで再度低血糖が起こる場合もありますので注意してください。一方、低血糖を繰り返している場合や乳幼児・高齢者では、上記のような症状を自覚しないで、いきなり「ぼんやりする、ボーッとしている、うとうとしている、いつもと人柄の違ったような異常な行動をとる、わけのわからないことを言う、ろれつが回らない、目の前が真っ暗になって倒れそうになる、意識がなくなる、けいれんを起こす」などの症状が出現することもあります。高齢者では認知症と間違われる場合もあります。このような場合は周りにいる人が吸収の早い糖分やブドウ糖を食べさせてください。あらかじめ家族の方に対してグルカゴンの注射を打つように指示されている場合は、そのようにしてください。症状が良くならない場合や、意識障害があって糖分を口から摂ることができない場合には、すぐに主治医と連絡をとり受診して下さい。
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- (1)インスリンによる低血糖
インスリン治療を行っているほとんどの症例は低血糖を経験している。特に、インスリンの血中濃度がピークとなる時間帯、各食前の空腹時、深夜から早朝、運動をしている最中あるいはその後、入浴後などに起こりやすい。低血糖の発症頻度は軽症低血糖が30‐50 %/年、意識障害がおきて第三者の助けが必要な重症低血糖が1‐6 %/年である。内因性のインスリン分泌能が枯渇しているか著しく欠乏している症例、血糖自己測定などによる自己管理が十分にできていない症例、厳格な血糖コントロールを達成している症例などに低血糖の頻度は高い。しかし、軽症低血糖の範囲内、つまり低血糖を自覚し正しく対処できるならばほとんど危険はない。また、重症低血糖は可能な限り起こらないようにすべきである。
医療関係者やインスリン治療を行っている患者の家族などで、稀に隠れてインスリンを注射して低血糖を起こす例があり、詐病性低血糖factitious hypoglycemiaと呼ばれる。
- (2)経口糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬を含む)による低血糖
経口糖尿病治療薬による低血糖はインスリン治療に比べれば頻度が少
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ないものの、常に危険性があることを念頭に置きながら診療を行う必要がある。経口糖尿病治療薬の中では、スルホニル尿素薬が低血糖を起こしやすい。また、速効型インスリン分泌促進薬による低血糖も稀ではない。ビグアナイド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬は単独投与では低血糖は起こりにくいが、スルホニル尿素薬や速効型インスリン分泌促進薬と併用投与すると低血糖を起こしやすくなる。2種類以上の経口糖尿病治療薬の併用やインスリンと経口糖尿病治療薬の併用を行っている場合は低血糖の頻度は増加する。
(3)その他の薬物による低血糖
糖尿病治療薬でなくても、一部の抗不整脈薬やキノロン系の抗菌薬でも起こることが知られている。
シベンゾリンコハク酸塩などの一部の抗不整脈薬はスルホニル尿素薬と同様に、膵β細胞ATP 感受性K+チャネルを閉鎖し、インスリン分泌を促進して低血糖を引き起こす。シベンゾリンコハク酸塩の治療域は70‐250 ng/mL であり、治療域血中濃度でも低血糖を生じることがあるが,高齢者や腎機能低下症例などでは中毒域濃度になって、低血糖が生じやすい。
ガチフロキサシン(2008年9月販売中止)やレボフロキサシンなどのニューキノロン系の抗菌薬は、膵β細胞ATP 感受性K+チャネルを閉鎖し、インスリン分泌を促進して低血糖を引き起こす。また、末梢組織でのインスリン感受性亢進作用も低血糖の要因と考えられている。高齢者や腎機能低下症例に低血糖を生じやすい。
(4)患者側のリスク因子
@ インスリン注射や低血糖についての知識不足
A インスリン注射量の誤り
B 血管内へのインスリン注射
C インスリン抗体
D インスリン分泌が枯渇(1型糖尿病など)
E 食欲低下・嘔吐・下痢などのシックデイ
F 食事の遅れや非摂食
G 食事・運動療法を開始して間もない
H 中等度以上の強度の運動後
I アルコール多量摂取
J 中等度以上の肝機能障害
K 中等度以上の腎機能障害
L 慢性膵炎など膵外分泌疾患
M 自律神経障害
N 胃切除術後
O 高齢者
などがあげられる(ただし、@‐Cはインスリン治療を行っている場合のみ)
- (5)投薬上のリスク因子
インスリンや経口糖尿病治療薬は投薬量が過剰であると低血糖となり、逆に投薬量が不足すると高血糖になる。過剰量と不足量の幅が狭く、患者の状態によっても適切な投薬量が変動する。このように、インスリンや経口糖尿病治療薬はいわゆる匙加減が非常に難しい。したがって、インスリンや経口糖尿病治療薬を投薬している場合は常に低血糖のリスクがあると考えるべきである。
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