- Kさん(60)は、会社の飲み会で午後10時に帰宅。上着を脱ぎ、郵便物を採ろうとしたところ、突然、手の指が動かなくなり、そのことを奥さんに話そうとしたが、言葉も出なかった。しかし1〜分後に指が自由に動き、なんとか話できるようになった。意識ははっきりしていた。直ぐに救命救急センターで脳のコンピューター断層撮影検査(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)による診断、心臓と血管の超音波検査などを受け、一過性脳虚血発作(TIA)と診断された。
- 脳の働きは、血液によって運び込まれる酸素と糖分を消費することで営まれている。
- ところが、脳にはこうしたエネルギー源の蓄えはほとんど無く、血流が減少したり停止したりすると、すぐに脳の代謝機能が影響を受け、正常な機能を維持できなくなる。
- 脳血流が4分間以上止まると、その部分の脳組織が壊死する。これが脳梗塞である。
梗塞の部位によって運動マヒ・知覚マヒ・失語・失明など様々な神経症状が生じる。
- 血流の減少・停止が極めて短ければ、血流が回復するとともに脳機能も正常に戻る。この状態が失神(一過性の血圧低下による意識喪失)やTIAと言われる。
TIAは以前、脳動脈ケイレンによると言われていたが、脳動脈内に微小な血液の塊(血栓)まどが詰まる事によって起こる。
- その血栓は、動脈硬化を起こした頸や脳の動脈壁にできるほか、弁膜症などの心臓内でつくられ、動脈血で運ばれる。
発作は突発的に起こり、様々な神経症状が現れても、数分以内に跡形もなく消失する。
KさんはMRIの結果、頸や脳の血管に異常はなかったが、発作の前日に心房細動による不整脈がみられた。
- 心房細動を起こした心臓に出来た血栓が脳の血管に詰まったが、幸い、血栓がすぐに溶けたので、血流が再開し、脳梗塞にならずに元に戻った。
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