概要
- (1) 症状
急性の股関節痛で始まることが多く、なかには坐骨神経痛様疼痛や、大腿より膝にかけての痛みなどがあります。股関節以外に痛みを訴える場合、しばしば捻挫などと診断されたり、腰部疾患と誤診されるので注意を要します。跛行(足を引きずる)、くつ下がはきにくい、爪切りがしにくい、などの股関節周囲の痛みによる症状を来たします。
(2)臨床検査値
血液生化学検査において、特異的に異常を示すものはなく、画像所見が最も重要です。
(3)画像検査所見
単純X線
・正確な側面像(仰臥位で90度屈曲、45度外転、内外旋中間位)が重要
・発生後早期ではしばしば正常
・骨頭圧潰(crescent sign)「圧潰に陥った壊死骨梁の下に線状の三日月形をした透過陰影」や骨頭内の帯状硬化像の形成「壊死骨梁に対して添加性新生骨が付加され、骨梁は帯状に肥厚したもの」の2つが特徴的所見です。
MRI
・T1 での骨頭内バンド像が特徴的
・早いものでは骨壊死発生後4-6週で出現
・バンド像は、骨壊死巣を取り囲むように形成された血管に富む肉芽組織を反影
・骨頭圧潰を来すとT1強調像ではびまん性の低信号域を呈し、バンド像ははっきりしなくなる。これは、骨頭圧潰による骨髄内浮腫を反映しており、壊死の拡大ではないことに注意が必要です。
・早期骨壊死の診断に最も有効です。
骨シンチグラフィーの cold in hot
・修復反応層では骨芽細胞による添加骨形成がおこり、取り込みは増加(hot)、一方、骨壊死巣は取り込みのないcold areaとなります。
・全身の壊死巣検索に有効
・cold in hotが特徴的だが、全ての症例に見られるわけではありません。
・感度が低く、小さい病巣は異常所見を呈さないこともあります。
(4) 病理検査所見
・骨壊死層、修復反応層、健常層の3層構造が最も特徴的です。
・骨壊死層では骨細胞は消失し骨小腔が空胞化(empty lacunae)し、周
囲の骨髄細胞も壊死に陥っています。
・修復反応巣は、血管に富んだ肉芽組織や線維組織、添加骨形成が見られる(creeping substitution)
(5) 発生機序
循環障害による阻血性病変と考えられています。動脈性虚血および静脈性還流障害の二つが主な病変として挙げられます。しかしながら、出血性梗塞の病理像を認めないことより、最終的には動脈性閉塞とする説が有力です。血栓、脂肪塞栓、酸化ストレス、血管内皮障害、血管炎、血管攣縮などが提唱されていますが、具体的な閉塞機序は不明です。
特発性大腿骨頭壊死症は、骨髄炎などの化膿性病変に伴って発生する骨壊死とは異なり、無腐性病変(aseptic necrosis)です。ステロイド薬投与により惹起される凝固異常、脂質代謝異常、酸化ストレスを抑制することにより、骨壊死発生を予防できる可能性は、実験レベルでは示されています15-18)。
(6) 発生頻度および薬剤ごとの特徴
2005年に行われた全国疫学調査では、本症全体では(ステロイド性に限らない)、男女比は1:0.8、2004年1年間の受療患者数は11,400人(95 %信頼区間:10,100−12,800)、新患数は2,220人と推定されています3)。一方、1994年における推定値は各々7,400人(6,700−8,200)、および1,480人でした19,20)。但しこの間、MRIによる診断が普及したこと、ステロイド性骨壊死発生に対して注意深い観察が行われるようになったことなどから、診断される患者数も増加したと考えられるため、直ちに発生数の増加と解釈することはできません。なお、両年とも新患数は受療患者数(旧患+新患)の約1/5です3,21)。
誘因別(ステロイド薬全身投与歴あり/アルコール愛飲歴あり/両方あり/両方なし)の分布をみると、受療患者全体では51/31/3/15%(男:34/47/4/15、女:76/7/1/16)であり、「両方あり」を含めるとステロイド関連は54%です。新患に限ってみると42/35/6/16%であり、「両方あり」を含めたステロイド関連は48%となります。膠原病などの患者は経過観察のため継続受診する傾向があるため、受療患者全体でみた場合、ステロイド薬関連の割合が高くなると考えられます3)。1994年の推定値は、受療患者全体で50/27/2/21%、新患で44/30/2/24%であり、この10年間にステロイド薬関連の割合に明らかな増加傾向は認めませんでした3,21)。
また、家兎骨壊死モデルを用いた研究によれば、ステロイド薬の種類により骨壊死発生率に相違があることが報告されており、メチルプレドニゾロンはプレドニゾロンやトリアムシノロンなど他のステロイド薬よりも骨壊死発生率が高く22)、また、骨壊死発生率はステロイド薬の投与量依存性に増加することも報告されています
- (7)報告数
参考1に記載(厚生労働省より提供)。
(なお、資料中には、大腿骨頭無腐性壊死と記載されていますが、これは特発性大腿骨頭壊死症と同じ意味であり、近年は特発性大腿骨頭壊死症が一般的に用いられるようになっています)
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