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薬剤惹起性うつ病






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薬剤惹起性うつ病
英名:Drug-induced Depression
疾病の治療を目的として投与された医薬品により、「薬剤惹起性うつ病」を発症する場合があります。インターフェロン製剤、副腎皮質ステロイド薬などの服用により起こることが知られています。
もしも、何かのお薬を服用していて、次のような症状がみられた場合には、医師・薬剤師に連絡して、すみやかに受診してください。
   「眠れなくなった」、
   「物事に興味がなくなった」、
   「不安やイライラが出た」、
   「いろんなことが面倒になった」、
   「食欲がなくなった」、
   「気分が落ち込んだ





1.薬剤惹起性うつ病とは
薬剤惹起性うつ病とは、治療を目的として投与された医薬品によって生じたうつ病のことです。うつ病を起こしやすい薬物としては、インターフェロン製剤や副腎皮質ステロイド薬がよく知られています。
また、
    レセルピン
    ベータ遮断薬
    カルシウム拮抗薬といった降圧薬や、
    抗ヒスタミン薬
    経口避妊薬などでも報告があります。
2.早期発見と早期治療のポイント
  • これらの医薬品を服用後に、「眠れなくなった」、「物事に興味がなくなった」、「不安やイライラが出た」、「いろんなことが面倒になった」、「食欲がなくなった」、「気分が落ち込んだ」など、うつ病の症状が出てきた場合には、まずはその医薬品によるうつ病の可能性を疑うことが必要です。
    勝手に服用を中止することはせずに、まずは担当の医師と相談してください。出来ればその薬物を減量・中止して、経過を慎重に観察することが重要です。減量または中止してうつ病が改善すれば、その薬物がうつ病の原因であったことがわかります。しかし、減量や中止が困難な場合には、抗うつ薬などの薬物をさらに服用することがうつ病を治療するために必要となります。 (厚生労働省





インターフェロン製剤によるうつ病
  • 2001年12月に、C 型慢性肝炎に対して、IFN/リバビリン併用療法とコンセンサスIFN 療法が承認され、
    2002年2月には、IFN の投与期間や再投与の制限が撤廃された。
    さらに、2003年8月にPeg-IFN 療法が、2004年10 月にPeg-IFN/リバビリン併用療法が承認された。
    このように、従来の方法では限界の見えたIFN 療法が新しい時代に入り、IFN(Peg-IFN)が使用される機会は再び増加傾向にある。
    IFN(Peg-IFN)使用中には多彩な副作用がみられることは周知の事実となっている。
    中でも、精神神経症状はIFN 継続を困難にする重大な原因の1つである。
    以下に、IFN の副作用としての抑うつ状態・うつ病に関して概説する。

(1)IFN の副作用
  • IFN 投与初期には、発熱、頭痛、全身倦怠感、食欲低下、関節痛、筋肉痛、悪寒などのインフルエンザ様症状がほぼ必発であり、IFN 単独治療では発熱は38℃以上になることが多いが、Peg-IFN での発熱は多くは38℃以下である。発熱に対してはしばしば非ステロイド性抗炎症剤で対処する。インフルエンザ様症状の強さはIFN の用量に依存するが,約1週間で、いわゆる「慣れ」の現象がおこる。しかし、中期以降にもインフルエンザ様症状が持続し、IFN の中止や精神症状発現の契機になりうるので、十分な注意と対処が必要である。その他のIFN の身体的副作用に関しては、ここでは割愛する。

(2)IFN による精神神経症状
  • ①IFN による精神神経症状の種類
    • IFN による精神神経症状の中で、最もよくみられるのは抑うつ状態であり、次いで多いのがせん妄である。他にも、極めて多彩な精神神経症状[不眠、不安焦燥状態、攻撃的な性格変化、躁状態、幻覚妄想状態、けいれん、軽度認知障害(健忘、短期記憶障害)、傾眠、昏睡などの意識障害(いわゆるIFN 脳症)]が報告されている。
      ただし、精神神経科医のもとで薬物治療を必要とするような副作用の頻度はIFN 単独治療でも数%である。
      また、これらの症状は、必ずしも独立して起こるわけではなく、縦断面で、不安焦燥状態~抑うつ状態~せん妄と移行したり、横断面でも、抑うつ状態に軽度の意識混濁健忘を伴う場合がある。
  • ②IFN による抑うつ状態の特徴
    • IFN による抑うつ状態は、大きく精神運動制止型と活動型の2 群に分けられる。
      前者は、全身倦怠感を伴い、意欲、活動性、言葉数、自発性の低下、興味の喪失を示す(全体にぼーっとした印象)で、
      後者は、強い不安感、焦燥(いらいら)感を前景とし、時に攻撃性を伴う(医療スタッフや家族に対して易怒的となる)。後者の方が日常診療で問題となることが多い。
      近年、IFN による抑うつ状態は、純粋な抑うつ状態というより、抑うつに、焦燥や敵意、易怒性が加わった抑うつと躁の混合状態が多いとも報告されている。
  • ③早期発見と早期対応のポイント
    • 多くの場合、抑うつ状態に不眠や軽い焦燥感が先行する。
      寝つきの悪さや、日中のいらいら(こらえ性がなくなる)が出現した場合、早期にベンゾジアゼピン系睡眠薬や抗不安薬を使用することが推奨される(後述)。稀に、明らかな前兆もなく激昂したり、投げやりな態度、衝動的行為(入院中の無断外泊や飲酒など)、自殺企図がみられたりする場合があるが、その場合も注意深く観察すると、不眠と焦燥の先行がある。
  • ④IFN による精神症状の診断
    • IFN による精神症状は、IFN との時間的関係、IFN の減量や中止により精神症状の改善をみること、縦断的にみると精神症状が多彩に変化することなどから診断される。その発現形式は、Wieck の通過症候群としてとらえられる。
      通過症候群は、正常の精神機能状態から意識混濁へ移行したり、逆に意識障害から回復し正常状態に移行するまでの中間段階を指し、その程度に応じて、発動性の低下、情動の変化(抑うつと躁)、気分易変性、健忘、幻覚・妄想などを生じるという概念である。
      IFN による精神症状は全体として通過症候群の特徴を備えている。
      その証拠として、IFN 使用中には、一見意識清明に見えるにもかかわらず1/3~半分の患者において徐波化(基礎律動の徐波化、α波減衰の消失、徐波群発の出現、光駆動反応の増強、過呼吸後の回復不良など)を中心とした脳波異常がみられる。このような症例では、活動性・言葉数・自発性の低下、あるいは短期記名力低下や問題処理能力低下などの軽度の認知障害を示すことがある。
  • ⑤IFN による精神症状の頻度
    • IFN による精神症状の頻度は、研究により精神症状の取り上げ方の基準が異なるので単純な比較はできない。我が国において、IFN 療法中のC 型慢性肝炎患者85人を前方視的に追跡した報告では、IFN 療法中にうつ病エピソードを満たした者が37.3%、IFN を中止したのは9例(10.6%)であり、その主な理由が精神症状によるものが4 例(4.7%)であった。また、積極的な精神科治療かIFN の中止が必要であったのは14.1%と報告されている
      我が国では2004年12月にPeg-IFNα2b/リバビリン併用療法が可能になり、C 型肝炎治療の第1選択はこの治療になったが、多数例の解析でPeg-IFN、リバビリン併用48週投与ではうつ病が4.1%、 うつ気分2.2%、うつ症状が7.1%の患者にみられている(2008 年3 月時点の副作用報告の集計)。またPeg-IFNα2a/リバビリン併用療法国内第III相試験(N=199)ではうつ病0.5%、抑うつ気分・抑うつ症状6.0%、Peg-IFNα2a 単独治療(N=178)ではうつ病5.6%と報告されている。
      これらは全て主治医判断であり、うつ病、抑うつ気分、抑うつ症状の正確な鑑別は困難ではあるが、精神神経用薬投与やIFN の中止などの何らかの対処が必要な中等症以上の精神症状は、5~10 数%で、対処は必要としない程度の軽症の精神症状は、約30%にはみられると考えられる。
      ただ、C 型肝炎にIFN 治療が開始された1990 年代と比べて、副作用やその素因に関する治療する側の医師の知識が増え、不眠を訴える頃から眠剤などの投与が行われ、精神科医のもとでの治療を必要とするような重篤な副作用の頻度は明らかに減少している。Peg-IFN は週1回投与であり患者の負担が少ないが、患者の高齢化により精神症状の頻度はIFN 単独でもPeg-IFN/リバビリン併用療法でもほぼ同様である。Raison らは、169 人のC 型肝炎患者を対象としたPeg-IFN/リバビリン併用療法試験で、治療中39%において抑うつの悪化を認め、抑うつはリバビリン量(対体重比)と有意な相関を示したと報告している。
  • ⑥IFN による精神症状の発現時期と経過
    • 高木は、IFN による精神症状は、IFN 投与後1 ヶ月以内の発症が60%以上で一番多かったと報告した。Malaguarnera らの報告ではIFN開始4週後が、他の報告17)では12 週後が、最も抑うつの重症度が高かった。IFN 投与後、1~3 ヶ月は注意が必要であるが、Peg-IFN/リバビリン併用療法は通常48~72 週投与されることから、より後期に副作用が出現する傾向になる。なお、IFN の中止後数日~10 日程で消退するといわれていたが、IFN 中止後も精神症状が1 ヶ月以上持続する場合23)も比較的多く観察され、注意が必要である。特に精神病症状や意識障害を示した例では、症状が遷延することがある

(3)IFN による精神症状発現の危険因子
  • IFN による精神症状発現の危険因子として、高用量、高齢、脳器質性疾患(脳萎縮、外傷、脳腫瘍)、精神疾患既往歴や薬物乱用歴、および現在の精神疾患への罹患、IFN 開始前の抑うつ、不眠傾向、疾患に対する不安の強さが挙げられる。また、併用するリバビリンが高用量であった場合(補足:対体重比投与で800-1400mg/日と投与量は変わる、抑うつ症状(depressive symptoms)の出現頻度が有意に増加したとの報告がある。
    精神疾患既往歴、薬物乱用歴、現在精神疾患に罹患していることは必ずしもIFN の禁忌とはならないが、重要な危険因子として考えるべきであることは確かである。場合によっては、入院の上、内科医と精神科医との連携が必要となる。

(4)IFN による精神症状の発現機序
  • 多彩な作用を持つIFN が外部から人体内に大量に入ることにより、神経-免疫-内分泌系のバランスを崩し、直接・間接的に精神症状を惹起する。IFN は、分子量が2 万前後であり、正常脳では血液脳関門(Bloodbrainbarrier: BBB)を通過しないが、第三脳室前壁近傍などからわずかに中枢神経内へ移行しうることが確認されている。
    また、IFN の視床下部-下垂体-副腎皮質系や視床下部-下垂体-甲状腺系を介する作用、IFN のオピオイド作用、ドパミンアンタゴニストやアゴニスト作用、ノルアドレナリン、トリプトファン、セロトニンを介した作用、IL-1、IL-2、IL-6、TNF の分泌を誘導したり、TNF-receptor、IL-1α、IL-5、IL-6-receptor、IL-8 を抑制する作用などが関連すると考えられている。他に、IFN 自体が、海馬の神経新生を抑制するとの報告もある。

(5)IFN による精神症状の予防と治療
  • ①IFN の減量・中止および種類の変更精神症状の出現とともにIFN を中止、または減量することが推奨されている。
    • 希死念慮、幻覚妄想、せん妄などの意識障害、躁状態では中止すべきである。
      軽症の抑うつの場合、IFN の減量や薬剤投与で治療継続可の例が多い。
      IFN 300 万単位/日の場合、軽い抑うつはあったが、IFN を中止するほどの者はいなかったとの報告がある。
      Malaguarnera らは、天然型IFN がrecombinant IFNαより抑うつの惹起が少なく、患者にあったIFN への切り替えを強調しているが、わが国ではPeg-IFN/リバビリン併用療法、Peg-IFNα2a,天然型IFNα、天然型IFNβの単独治療が主で、Peg—IFN/リバビリン併用療法ではリバビリン量にも注意する必要がある
  • ②精神神経用薬およびその他の薬物療法
    • 軽症の抑うつ状態に対しては、パロキセチン塩酸塩水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、塩酸セルトラリンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やミルナシプラン塩酸塩のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)など新しい抗うつ薬を使用しながらIFNを継続することが推奨されている。ミルナシプラン塩酸塩は肝臓のミクロゾーム代謝経路を経由しないので、特に肝炎の患者に有用である可能性がある。
      不安や焦燥に対してはロラゼパム、不眠にはロルメタゼパムが推奨される。いずれも代謝において肝臓への負担が少ない。
  • ③精神療法的アプローチ
    • IFN による精神症状には患者の心理・社会的要因も大きく関与していることが多い。なぜなら、純粋にIFN による作用のみで精神症状が起きているなら、IFN の使用期間の延長にともない、精神症状の頻度が増すはずだが必ずしもそうではなく、治療期間の終了が近づくに伴い改善することも多い。また、C 型肝炎患者は、肝硬変、肝癌への進行の不安を常に抱えている。実際、IFN を受けていないC 型慢性肝炎患者自体に抑うつや不安が多く認められたとの報告もある。IFN 投与に際しては、十分なインフォームドコンセントのもと、受容的・支持的な態度で接し、精神症状を注意深く観察する。特に不眠や焦燥感が、抑うつに先行して出現するので、それを患者が気軽に相談できる環境を作ることが重要である。
      IFN により抑うつが出現した方が抑うつがない場合より、肝炎ウイルスへの治療反応性は良好であったとの報告があり、注目される




3.副腎皮質ステロイド薬によるうつ病

(1)ステロイド薬による精神症状の種類
  • 1940 年代後半にステロイド薬が導入されて以来、喘息、アレルギー、膠原病、種々の皮膚疾患などさまざまな病態に用いられている。その効果は広く認められているが、副作用もさまざまで、躁状態、抑うつ状態(ステロイド薬によるうつ病)、幻覚・妄想状態、せん妄などのさまざまな精神症状が生じうる。その中で、うつ病は頻度が比較的高い精神症状である。
(2)ステロイド薬の投与量
  • プレドニゾンの投与量が40mg/日を超えるとうつ病の発症率が増加するという意見がある12)が、後述するように、10~20mg/日程度であってもうつ病を生じる可能性がある。
(3)ステロイド薬の投与期間
  • 早い患者ではステロイド薬の投与初日に生じ、遅い患者では3 ヶ月以降になる。多くの症例では数日から1、2 週間後が多い。
(4)患者側の危険因子
  • 女性が罹患しやすいが、年齢や精神疾患の既往の関連は否定的である。
(5)早期に認識しうる症状
  • ステロイド薬投与後に、抑うつ気分や不安感、焦燥感、不眠や食欲低下など、うつ病の一般的な症状として生じることが多い。しかしながら、いわゆる制止型うつ病の病像というよりは、焦燥型うつ病の病像をとるものが多い印象がある。したがって、不安感や焦燥感などは重要な指標と考えられる。
(6)病態生理
  • うつ病患者では血中コルチゾール値が高く、海馬も萎縮していることが指摘されている。クッシング症候群の患者においても海馬が萎縮しており、その程度が血中コルチゾールと相関していることが報告されている。さらに、副腎腫瘍を切除してクッシング症候群が治癒すると血中コルチゾールの正常化に伴い海馬の体積も正常化したことが報告されている。このようなことから、ステロイド投与の際にも同様の現象が生じ、抑うつ状態が発症する可能性が推測される。Brown らは、プレドニン(国内未承認:調査時の平均15.6mg/日)を平均92ヶ月投与されていた17名の患者(プレドニゾン投与群)と、身体疾患や性・年齢を一致させた15名(対照群)の患者の海馬の体積、代謝率、記憶と気分を比較した。その結果、プレドニゾン投与群の方が対照群よりも左の海馬は7%有意に小さく、右の海馬は9%有意に小さく、海馬の代謝率(N-acetylaspartate を指標にしたもの)、記憶、気分も有意に悪かった。これらの所見は、ステロイドが海馬に影響を与えて形態やその機能を障害し、記憶や気分を損なう可能性を示唆している。この研究でさらに興味深いことは、平均15.6mg/日という比較的少量のステロイドで有意な変化が認められていることである。
(7)早期発見と早期対応のポイント
  • まずは、ステロイド薬を投与する際に、抑うつ状態が生じる危険性を念頭に置くことが重要である。どの程度の投与量で生じるのかは個人差があるが、先にも述べたように、40mg/日を超えると起こしやすいので要注意であるが、先述したBolanos ら2)やBrown ら3)など最近の報告では10 mg/日台で抑うつ状態を惹起する可能性もある。また、女性に投与するときも要注意である。
    鑑別を要するのは、全身性エリテマトーデス( Systemic lupuserythematosus: SLE)などしばしば精神症状を生じうる原疾患に対してステロイド薬を投与した時である。その抑うつ状態がSLE によるものか、ステロイド薬によるものか、結局はSLE の活動性の推移とステロイド薬の投与の経過を縦断的に検討して判断することが重要となる。ステロイド薬を減量して精神症状が改善すれば、ステロイド薬による可能性があり、その逆(ステロイド薬を減量して精神症状が増悪)は原疾患による精神症状が疑われる。
(8)治療方法
  • もし、ステロイド薬が減量できるようであれば、主治医と相談の上、減量することが原因治療となる。しかし、原疾患の活動性が亢進しており減量できないとき、もしくは減量しても抑うつ状態が改善しないときに薬物治療が必要となる。以前から、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬を投与すると焦燥感や幻覚・妄想が悪化することが多いことが知られている。そこで、リチウムや選択的セロトニン再取り込み阻害薬27)を投与する試みがなされており、それなりの効果をあげている。しかし、依然としてエビデンスとしては不十分であり今後の検討が必要である。
(9)参考事項
  • 1983 年にLewis らは自験例と合わせた総説をまとめた。投与量に関しては、プレドニゾン(国内未承認)を40mg/日以上投与されていた患者に多く精神症状が生じていた。有病率に関しては、比較的軽度の気分変化を把握したの研究(比較対照をもたないもので、患者数は計935 名)では、ステロイド薬による精神症状の有病率は13から62%(重み付け平均27.6%)であった。比較的重度の精神症状を扱った研究(やはり比較対照をもたないもので、患者数は計2,555 名)では、1.6%から50%(重み付け平均5.7%)であった。精神症状の種類は、55名の症例報告を検討したところ、22名(28%)は躁状態、32名(40%)は抑うつ状態、6名(8%)は混合状態、11名(14%)、8名(10%)はせん妄であった。危険因子として年齢、精神疾患の既往はやはり否定的であるが、女性であることは原疾患の性差を考慮しても、なおステロイド薬による精神症状と関連しているものと考えられる。
    抑うつ状態に限定した調査では、Patten20)が2000 年にカナダの一般人73,402 名を対象とした横断的な調査を行っている。回答のあった70,538 名中815名が調査の前月にステロイド薬を服用していた。
  • ステロイド薬を服用していた者の大うつ病の有病率は11.1%(95%信頼区間は6.6~15.5)、
  • 服用していない者のそれは4.1%(3.8~4.5)で有意差があった。
  • さらにPatten らはステロイド薬のみならず降圧薬や抗ヒスタミン薬、ホルモンなど抑うつ状態を起こしうると報告されている薬物に関し広く調査を行った。ここでもステロイド薬と抑うつ状態の関連は有意であり、ステロイド薬を服用していた者の大うつ病有病率は服用していない者の2.28倍(95%信頼区間は1.11~4.68)で男性では0.92倍(0.13~6.43)と有意でなく、女性では3.02倍(1.74~5.24)と有意であった。年齢では、45歳以下ではステロイドの服用者に3.61倍(1.92~7.76)有意に大うつ病が多く、45 歳より年長だと1.57倍(0.37~6.58)と有意差が消失した。
  • これらは、横断的な研究であり、因果関係を示唆するものではない。
    ステロイド薬が精神症状の原因となりうることを示すには、ステロイド薬を投与せず他の患者背景が同様の対照群と比較することが必要となる。2004年にBolanos らは、少なくとも7.5 mg/日のプレドニゾン(国内未承認)を6 ヶ月以上投与されている患者20名と、ステロイド薬を投与されておらず他の患者背景が同様の対照群14名を精神症状の点から比較した。患者群は調査時点で平均19.1mg/日のプレドニゾン(国内未承認)を平均10年間投与されていた。その結果、患者群では調査時点で抑うつ状態が認められた患者が3名、対照群では0名、患者群で過去プレドニゾン(国内未承認)投与中に抑うつ状態が認められた患者は7名、対照群では0名であり、有意に患者群の方が抑うつ状態に罹患した、もしくは罹患している患者が多かった。ハミルトンの抑うつ状態評価尺度得点も患者群の平均が16.2点、対照群の平均が4.5点と有意差が認められた。これらの所見は、ステロイドが抑うつ状態を惹起する可能性を強く示唆していると考えられる。また、以前の研究ではプレドニゾン(国内未承認)40mg/日がひとつの閾値となっていたが、それよりも少ない量で抑うつ状態が引き起こされる可能性も示唆される




【症例1】 50 歳代、女性
既婚、主婦、出産時輸血歴あり、まじめな性格
約5年前より肝機能障害を指摘される。2年前の健康診断で、トランスアミナーゼの上昇を認めたため、近医受診し、C 型慢性肝炎と診断され、大学病院を紹介された。
大学病院内科入院後、ジェノタイプ、高ウイルス量のため、Peg-IFNα2b 100μg 1回皮下注/週とリバビリン 200mg錠4錠 2×朝夕を48 週間の予定で開始した。
2週間後、退院した。
4週後より、食欲不振の持続と、不眠(入眠困難、熟睡困難)を認めたため、ゾルピデム10mg/日を眠前に服用開始した。
その後、ゾルピデム服用により、不眠は多少改善したが、次第に、食欲不振、全身倦怠感、意欲低下、興味の減退、日中のいらいら、人に当たる(焦燥感)が強くなり、家事が手につかなくなる。
6週後、内科より、精神科に診察依頼。中等度のうつ状態との診断であったが、本人はIFN の継続を希望し、かつ、希死念慮を認めなかったため、Peg-IFNα2b を60μg に減量、リバビリンは同量で継続しながら、ミルナシプラン50mg/日 2×朝夕を投与開始した。
8週後、ミルナシプラン100mg/日に増量した。
10 週後、次第に、全身倦怠感、焦燥感、意欲低下改善、家事が可能となる。
20 週後、ミルナシプランを使用しながら、Peg-IFNα2b を100μg に戻す。
その後は、大きな変化なく、48 週間のIFN/リバビリン併用療法を終了した。
ミルナシプランは、IFN 療法終了後、4週目より、50mg/日に減量、6週目より、25mg/日に減量し、8週目には中止した。
その後、うつ状態の再発はない。
(ミルナシプランは肝臓代謝酵素阻害が少ないため、肝機能障害患者のうつ状態治療に向いている)
【症例2】 40 歳代、女性
既婚、明るくまじめでがまん強い性格
突然、右手の脱力と運動失語が生じた。脳血管障害を疑われ神経内
科へ入院した。精査の結果、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された。
SLE の治療目的で40mg/日のプレドニゾロンが開始された。
その1ヶ月後に抑うつ状態を呈し、自殺念慮、不安感、焦燥感、食欲低下、不眠が出現した。この時点で既にSLE の活動性は低下していたため、抑うつ状態はSLE の精神症状というよりはむしろプレドニゾロンの副作用と考えられた。そのため30mg/日へ減量されたが改善を認めず、内科治療にも拒否的となり、離院を試みたために精神科へ入院した。
入院後、マプロチリンやミアンセリンなどの四環系抗うつ薬を順次開始したが、いずれも効果なくむしろ焦燥感や自殺念慮が増悪し、自殺企図を繰り返した。そこで、気分の安定化を目的にリチウムを600mg/日から開始したところ、数日以内に改善した。しかし、SLE に伴う腎機能障害のために、増量せずとも血中リチウム濃度が0.4mEq/L から0.8mEq/L へ上昇した。さらに、手指振戦が粗大になったので、いったんリチウムを中止した。その結果、まもなく抑うつ状態は再燃し焦燥感や自殺念慮も顕著となった。今度はリチウムを400mg/日から再開したところ、血中濃度は0.4 mEq/L で抑うつ状態も改善した。
その後、精神状態はさらに安定し、患者は自ら進んで歩行訓練を始めるようになった。
リチウム400mg/日とプレドニゾロン20 mg/日を継続しつつ、入院から2 ヶ月後に退院した。退院6 ヶ月後、プレドニゾロンが10 mg/日へ減量された時点でリチウムを中止したところ再燃は認めなかった。さらに退院3 年後、経過を尋ねたところ、プレドニゾロンは5mg/日へ減量されており、患者はリチウムを服用する必要もなく精神的に安定していた。




その他の精神障害との関連 (厚生労働省
発動性障害
  • 発動性障害(脳器質性障害が原因の無気力状態)とうつ病は重複する点も多いですが、臨床的に区別することは可能です(Anderssonら,1999)。無気力の患者は、意欲は低下していますが、アンヘドニア(楽しみを感じられない状態)がなく、うつ的思考も稀です。無気力は抗うつ薬よりも行動療法的介入によく反応します。


認知症(痴呆症)
  • うつ病が痴呆に併存する場合、若干症状が変化します。
    例えば、罪悪感や無価値感などのうつ思考を認めることが少なく、奇声や焦燥などの問題行動が増えます。
    うつ病によって認知障害が引き起こされることがあります(いわゆる仮性痴呆)。
    慢性うつ病の患者は、記憶の座である海馬が障害を受けている可能性があります。


器質性気分障害
  • うつ病は全身疾患や薬物によっても誘発されます。
    全身疾患によるものは“器質性気分障害(DSM-IV-TRでは“一般身体疾患による気分障害”)“と呼ばれ、若年者と比較してその率が高いために、注意が必要です。


双極性障害(いわゆる躁うつ病)
  • 双極性障害の一部としてうつ病が起こることがあります。通常はより若い年代で発症します。
    晩発性の発症の場合には、器質性の脳疾患の存在を疑いましょう。


血管性うつ病vascular depression
  • 近年提唱されている新しい分類です。皮質下線条体―淡蒼球―視床―皮質経路を栄養する終末動脈の障害によって、気分の調節に関与する神経伝達系が障害され、うつ病が引き起こされるという仮説が立てられています。
    実際に脳血管性障害が直接の原因になっているかどうかはまだ証明されていません。実行機能障害を併存する可能性が高く、抗うつ薬単独療法には反応しにくいとする研究もあります。
  • 血管性うつ病の特徴
    ・・・( A l e x o p o u l o s ら, 1 9 9 7 が提唱)
    ○ 老年期に発症する
    ○ うつ思考が少ない
    ○ 病識が少ない
    ○ 無気力と精神運動遅延
    ○ 認知機能障害( 特に、遂行機能障害)
    ○ 虚血性脳障害を示す神経学的証拠、白質と皮質下領域の障害が特徴




チェック
うつ病」「仮面うつ病」「うつ状態








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